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パフォーマンス・ゼミ(川島ゼミ) 観劇レポート(2026年5月期)
宝塚歌劇花組公演 グランド・ラメント『蒼月抄(そうげつしょう)』―平家終焉の契り―/スパイシー・ショー『EL DESEO(エル・デセーオ)』
2026年5月24日(日)15:30/東京宝塚劇場
宝塚歌劇の魅力は数多あるが、1度の観劇で、全く毛色の違う2作品(芝居とショー)が楽しめる点、またどんな悲劇の後にも絢爛豪華で問答無用に楽しめるショーが付いていることで、「楽しかったね」と幸福感に満たされて帰路に着くことができる点もそんな魅力の中のひとつに挙げられると考えている。今回観劇した2作品はまさにその類で、かつ、お互いを引き立て合っていた良い2本立てだったため、どちらも紹介したいと思う。
まず、1幕のお芝居『蒼月抄』は副題からも分かる通り、平安時代に栄華を誇った平家一門が終焉を迎え、海に沈む様子を描いた物語である。三味線のベンベンベンという音で幕が開くと、今作品においての語り手であり、かつて平家最後の総大将と呼ばれた男の妻であった四条局が登場し、彼らの日々を歌にして1000年後を生きる私たち観客に「平家物語」というかたちで紡ぎ始める。いわばこの作品の大枠は四条局の過去の記憶、回想シーンであるとも捉えられる。そんな構成だからか、生き生きと日々を暮らし、刀を振り戦っていたかと思えば、ふと彼らの姿が亡霊のように思える瞬間もあったり、わたつみっぽさというか、不思議な感覚を味わった作品であった。この物語の主人公は平清盛という偉大な父を持ち、「平家の未来を担う存在」として育てられた平知盛(とももり)。戦を忌み、民を救おうとする弟・重衡(しげひら)、刀こそが忠義と信じる教経(のりつね)と共に、それぞれがそれぞれなりに「平家を守りたい」と奔走していく。一ノ谷の戦い、壇ノ浦の戦いのシーンもガッツリ描写があって、源平の戦いの物語ではもちろんあるのだが、平家一門同士の人間関係や思いの交錯、妻・明子(あきこ)への信頼など、かなり等身大の思いの丈に触れる機会が多いのが今作の特徴であり、魅力であると感じた。また、舞台上でかなりの存在感を放つ月のモニュメントが終焉に向かい欠けていくのも見どころである。
続いて、今回のショーの題名は「スパイシー・ショー『EL DESEO(エル・デセーオ)』」。ときどき「これ、スターさん知ってたりしないとあんま面白くないかもな」みたいな場面はあったものの、かなり大満足のショーだった。どのような作品か少し説明すると、“欲望(EL DESEO)”をテーマに、愛や名誉、時には生きることそのものをめぐって「男と女が繰り広げる、妖しくもエネルギーに満ち溢れたラテンショー」である。滅びゆく平家の物語とギラッギラなラテンショー。華やかなプロローグが終わった後、トップスター・永久輝せあが1人残り、歌い始める「愛がメラメラ」。初見時には「愛が、、メラメラ、、、?」と思ったものだが、ショーとは「考えるな、感じろ」精神で見るもの。ジャケット捌きとスマートな足捌きが素晴らしいタンゴの場面や、ポップで可愛い死者の祭りの場面を経て、終盤に訪れる男役群舞には頭を抱えた。かっこよすぎる。
こんなにも毛色の違う作品をたった3時間の間に楽しめるなんてお得感すぎではなかろうか。切ない日本的な美しさとたぎるようなラテンのリズムの対比が絶品な両作であった。
