ぼーあい
パフォーマンス・ゼミ(川島ゼミ) 観劇レポート(2026年5月期)
正安寺悠造自主公演『バイ・バイ・メメント』
2026年5月7日(木)19:00、5月11日(月)18:00(千秋楽)/吉祥寺スターパインズカフェ
『バイ・バイ・メメント』は、あの世へ続く旅路の途中に存在するパブリックハウス「メメント」を舞台にしたダンスアクト作品である。私は5月7日と千秋楽である5月11日の公演を観劇した。本作は『The Michelangelo』『A・Babe』と繋がるシリーズ作品であり、私は前作を観劇し、『A・Babe』には出演者として関わっていたため、物語や登場人物への思い入れを持った状態で観ることができた。
本作で特に印象に残ったのは、音楽とダンスによる感情表現である。後半で使用されたKing Gnuの「逆夢」は特に強く印象に残った。歌詞の流れに合わせて登場人物たちの心情が身体表現によって描かれており、まるで歌詞そのものがジェスチャーになったように感じられた。手を上へ伸ばしたり、何かを優しく包み込むような振付が多く、登場人物たちが大切な存在や記憶に手を伸ばしているように見えた。ダンスアクトという形式だからこそ、言葉だけでは表現しきれない感情が観客に伝わってきたように思う。
また、本作では「家族とは何か」というテーマが深く描かれていた。キース、タンク、ホグという血の繋がった家族だけでなく、ミッツたち血の繋がらない子どもたちとの関係も重要な要素となっている。キースは家族への強い憧れを抱き続けていたが、その思いは同時に自分自身の願望でもあったのではないかと感じた。しかし最終的には、自分の願いだけでなく相手の幸せを考えた選択をする。その姿から、家族とは血縁だけではなく、一緒に過ごした時間や互いを思う気持ちによって生まれるものなのだと感じた。
演出面では、あの世を表現するために多用されたスモークや照明が印象的だった。特に「アンハザール」と唱え魂を送り出す場面で、白いピンスポットが差し込む演出は非常に美しく、魂が旅立つ瞬間を視覚的に表現していた。また、前作・前々作を知っている観客としては、登場人物の仕草や衣装の色、話し方などが過去作品を踏襲していたことも嬉しかった。キャストが変わっていても人物像がしっかり受け継がれており、シリーズ作品としての繋がりを強く感じることができた。
そして何より心を動かされたのはラストシーンである。演出家であり主演でもある正安寺悠造さんがキースとして「バイ・バイ・メメント」と告げ、自ら照明を落として舞台を閉じる場面では思わず涙がこぼれた。キースがメメントという夢の場所を去る瞬間であると同時に、正安寺悠造さん自身の最後の自主公演の終幕でもあったからである。作品のテーマである「死を受け入れ、記念を残す」というメメントの意味と重なり、非常に美しい幕引きだった。シリーズ作品を見続けてきたからこそ、ホグの救済や登場人物たちの旅立ちにも深く共感することができた。物語、音楽、ダンス、演出のすべてが結びついた、強く心に残る作品であった。
