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パフォーマンス・ゼミ(川島ゼミ) 観劇レポート(2026年5月期)
舞台『リプリー』
2026年5月24日(日)13:00/東京グローブ座
『リプリー』は映画やNetflixシリーズなど、これまで何度も映像化されてきており、今回、日本で初めて舞台化された。物語は1950年代初頭、息をするように噓をつきながら生きてきた青年トム・リプリーが富豪からの依頼で息子のリチャードと親交を結ぶ。イタリア各地で日々を過ごす中、リチャードに対して羨望と愛情が混ざった感情を抱き始める。しかし、自分こそが「彼」にふさわしいと思い始める。
開演直後、暗闇の中に水の音が響き渡る。今作の舞台のセットは基本的に何もなく、場面ごとに必要最低限の家具が配置されていく形式だった。1幕の始まりと終わりなど重要なシーンは水場である。そのため舞台全体が「水」の映像と音に包まれる。基本的には照明や小道具などシンプルに場面が作られているにも関わらず、「水」が関係している場面では映像と音響が効果的に使われていた。「水」は今作において重要であると考える。水の映像と音を取り入れることで場面の印象が強まり、作品の世界観や登場人物の心情がより効果的に表現されていたように思う。
特に印象に残ったことは演技力である。今作の出演者は7名である。しかし、演じるキャラクターは13人である。私は今回、事前情報を一切見ずに鑑賞したため、このことに気が付いたのはカーテンコールの時であった。それほどまでに、一人ひとりが複数の役を自然に演じ分けていたのである。今作は登場人物同士が一対一で会話している場面が多く、それぞれの俳優の演技に注目が集まる。特に、一対一の場面では登場人物の関係性や感情の変化が重要となるが、役が変わるたびに声の調子や話し方、姿勢、表情などが大きく変化しており、同じ俳優が演じているとは思えない場面が多かった。この作品を通して、俳優の演技力は単に台詞を話すだけではなく、身体表現や声色の使い分けによって観客に別の人物として認識させる力であることを実感した。限られた人数で多くの登場人物を演じていたことは、この作品の大きな魅力の一つであり、私が最も驚いた点である。
以上のように、本作では「水」を用いた象徴的な演出と、出演者たちの高い演技力が特に印象に残った。舞台装置を最小限に抑えたシンプルな構成でありながら、水の映像や音響によって作品の世界観が効果的に表現されていた。また、限られた人数で多くの登場人物を演じながらも、それぞれのキャラクターを明確に演じ分けていた俳優たちの技術の高さにも驚かされた。舞台芸術は豪華なセットだけで成り立つものではなく、演出や音響、そして俳優の表現力によって豊かな世界を創り出せることを改めて実感した。観客の想像力を引き出しながら作品世界を構築していく本作は、舞台ならではの魅力を存分に味わうことのできる作品であった。
