川島ゼミ 観劇レポート(2025年10月期)

宝塚歌劇月組公演『GUYS AND DOLLS』
2025年10月16日(木)13:30/東京宝塚劇場
N.H
画像:公式サイトから引用
(https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2025/guysanddolls/)
本作は1984年の初演時、「そこに愛はあるんか」でお馴染みの大地真央が主人公・スカイを務めたブロードウェイ・ミュージカル。その後、月組・星組で再演され今回は実に4度目の上演となった。
40年代のニューヨークにはびこるギャンブラーたちはカラフルなスーツにハット姿が最高に決まっていてとってもおしゃれ。そのうちの1人であり、このあたりで行われるギャンブルの主犯格、主催者のような役回りを担っているネイサン・デトロイトと、とんでもない大金を賭ける天才ギャンブラー、スカイ・マスターソンの賭けを軸にこの物語は回っている。今すぐにでも1000ドルが必要なネイサンは「その気になれば俺と一緒になりたい女は五万といる」と話すスカイに、神の教えを説き、悪人を救おうと奮闘している伝道所勤めのお堅い女性、サラをハバナへ連れ出せるか否か、1000ドルの賭けを持ち出したのだ。
華やかな街、華やかな時代。軽快な音楽とともに繰り広げられていく大人で甘く苦い恋模様、それをぶっ壊すようなギャンブラーたちの騒ぎよう、かわいいかわいいショーガールたち、14年もネイサンと婚約しっぱなしで止まらないミス・アデレイドのくしゃみ...。目まぐるしく展開していくストーリーの中でも個々の人物が繊細に描かれていて、これが「芝居の月組」たる所以か、と月担として思わず立ち上がり「お前たち、最高だぜ~」と某テーマパークの亀のセリフをお借りし、叫びたくなってしまうようなそんな気持ちになったのも致し方ない。ガヤ芝居1つとってもあの日のあの場所に息づく人物がそこにいる、というのはやはり素晴らしいと思うのだ。
そんな月組を引っ張っているトップスター、鳳月杏は入団20年目の大ベテラン。大人な色気と包容力、賭けのためなら女性をなんの悪気もなしに引っ掛けるクズ感。これらを絶妙な塩梅で共存させ、男女構わず観客を骨抜きにしていく罪な男、スカイ・マスターソンをこれほどまでに素敵に演じられたのは確かなキャリアがあってこそだろう。さらに、もしスカイとネイサンがまともな男になったなら、とサラとアデレイドが空想するシーンではしっかり笑いもとっていく抜け目のなさ。抱っこ紐の子供をゆっさゆっさとあやし、ゆっさゆっさしながら洗濯物をかけ振り向いた胡散臭い笑顔に声を出して笑ってしまった。
「恋はワイン」。苦くも味わい深い恋とばかげているようで素晴らしい人生模様に胸が満たされ、ふわっと心地の良い酔いを感じるようなミュージカルであった。観劇を終え、私が五万といる女の1人となってしまったのは言うまでもない。それでいい。喜んでなろうではないか。次の観劇時はスカイの女“候補”として彼に会いに行こうと思う。

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