すもも
川島ゼミ 観劇レポート(2025年7月期)
TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR
[ACT: SWEET MIRAGE] - HYBE CINE FEST IN ASIA
[ACT: SWEET MIRAGE] - HYBE CINE FEST IN ASIA
2025年7月11日(金)11:30/MOVIXさいたま

映画版という特性上、VCR(幕間映像)やメンバーたちのMCは大部分がカットされており、78分間に凝縮されたステージパフォーマンスを楽しむことができる。リアルタイムで体験したライブを、あらためて映像作品として鑑賞することで、演出や構成の細部にまで意識を向けることができ、非常に感慨深い体験となった。
このツアーでは、会場内に楽曲をイメージした香りを漂わせるなど、五感に訴える没入型の演出が特徴的だった。映画館では香りの再現こそ叶わなかったが、紙吹雪や銀テープといった落下物の演出は視覚的にきわめて華やかで、映像を通じてもその場の臨場感を追体験できた。様々な楽曲の中でも、トロッコに乗って披露された「LO$ER=LO♡ER」ではMVと連動し、お金の形をした紙吹雪が使用されるなど細部にまでこだわり抜かれた演出設計が光っていた。
セットリストには、デビュー初期の楽曲から当時の最新曲に至るまでが網羅されており、長年のファンから新規ファンまで幅広く楽しめる構成となっていた。なかでも本ツアーで初披露された「Blue Spring」は、最小限の照明とLEDによる星空の映像によって、静謐な空間演出が際立ち、特別な一曲として記憶に残るものだった。全メンバーが作詞に参加したこの楽曲では、ペンライトの光量を意図的に下げることで、観客の注意をより音楽へと集中させる設計がなされていた。演出の引き算によって生まれる没入感は、映像としての表現とも親和性が高く、現在YouTubeにて単独で公開されている点からも、グループとしてのメッセージ性の強さがうかがえる。
また、衣装の多様性も本ツアーの大きな見どころである。軍服風ジャケットに白のボトムスを合わせたシックなスタイルから、ラフなTシャツや柔らかな素材のブラウス、さらにはライブグッズを取り入れたカジュアルな装いまで、ステージごとに異なるファッションが披露された。衣装が単なる視覚的要素にとどまらず、楽曲ごとのコンセプトやメンバーのキャラクター性を補完する役割を果たしており、視覚芸術としての完成度も高かった。
今回のように、過去のライブを映画館という空間で再体験できる機会は貴重である。映像作品として再構成されたライブには、商業的な価値だけでなく、観客の鑑賞スタイルやファンダム文化の可視化という資料としての価値も含まれていると感じた。すでに一度体験した公演であっても、映像として再度向き合うことで新たな発見や感動が得られる。TOMORROW X TOGETHERの持つ多面的な魅力はこれからも磨き続けられるだろう。彼らの今後の活動にも、ますます期待が高まる。