アプリコット
川島ゼミ 観劇レポート(2025年6月期)
宝塚歌劇雪組公演『ROBIN THE HERO』『オーヴァチュア!』
2025年6月4日(水)13:30/東京宝塚劇場
今回観劇したのは宝塚歌劇団雪組公演『ROBIN THE HERO』『オーヴァチュア!』である。本作は雪組新トップスター朝美絢のお披露目公演となっている。1幕は12世紀のイングランドが舞台の物語である。主人公であるロビン(朝美)が父の敵討ちと恋人のマリアン(夢白あや)を取り戻すために覆面のヒーロー、フッドとして仲間と共に敵に立ち向かっていく。昔から語り継がれているイギリスの伝説のヒーローであるロビン・フッドの物語だ。本作はコメディ要素もある作品となっていた。
印象に残った点はいくつもあるが、私が特に驚いたのはトップ娘役の夢白あやに関してである。夢白は強くて大人な女性、品のある貴婦人などを演じることが多いが、今回のマリアンという役は少しお転婆な少女であった。仕草や話し方、歌声が今までの夢白とは一味違って可愛らしい少女そのもので驚いた。ロビンと魂が入れ替わってしまうというシーンもあり、スカートをまくり上げて階段を降りたり大股で歩いたりと娘役では中々見ない仕草も見事に演じ切っていた。プロなのだから当たり前だと言われたらその通りなのだが、ここまで振り幅があるスターだったのかと感心してしまった。
そして冒頭でも書いた通り、本作はコメディ要素も多くあった。ロビンの心の声が聞こえるときや魔術師のミス・オフィーリア(愛すみれ)が登場するシーンで笑いが起こっていた。ベテラン娘役である愛の演技力が存分に発揮されていたように思う。舞台上で行われていることを見て客席から笑いが起きる瞬間が好きなのでとても楽しく観ることができた。終演後にSNSを見てみたところ、様々なところで小芝居が行われていたようだった。一度の観劇では気づくことができず悔しかったが、日々違う小芝居が楽しめることが舞台の醍醐味だと改めて感じた。
2幕のショーではストーリー性のある場面が多く、一度の観劇で理解したり考察したりするのは難しいと感じた。男役群舞やトップコンビのデュエットダンスが無く、少し残念だったが、今の雪組の魅力が詰まっていて新生雪組のスタートにふさわしいショーとなっていた。赤やゴールドの煌びやかな衣装のスターが次々に登場するプロローグや客席降りで盛り上がる中詰め、聴き馴染みのあるクラシックの楽曲が歌われるパレードの階段降りなど見どころはたくさんあったが、中でも感動したのはショーの最後の朝美のソロである。朝美1人だけが舞台上に立ち、劇場の光と観客の視線を集めて輝く姿がとても美しく見入ってしまった。あの広い空間を1人で埋める姿を見て、この人が新しいトップスターなのだと実感し、お披露目公演を観ることができたのだと嬉しさを嚙み締めた。
新生雪組は新トップコンビの朝美と夢白を中心とし、まとまりと安定感が増していた。今後の雪組がますます楽しみになった。