川島ゼミ 観劇レポート(2025年6月期)

『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Desperate Checkmate-
2025年5月31日(土)18:00/Kanadevia Hall
えぬちゃ

画像:『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Desperate Checkmate- 公式サイトから引用
(https://ensemble-stage.jp/2025dc/)
『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Desperate Checkmate-はゲーム「あんさんぶるスターズ!」を原作とした舞台化作品「あんステ」シリーズの最新作である。「あんさんぶるスターズ!」は夢ノ咲学院という高校に通うアイドルたちの青春の物語であり、本作はKnightsというユニットに所属するメンバーたちの過去を描いた『追憶*モノクロのチェックメイト』というストーリーを元に脚本が構成されている。今回は、演出や楽曲等の魅力について触れるとともに、原作と比較した脚本構成の工夫点についても語っていきたい。
まず、劇場に入って1番最初に感動したことは、舞台上の中心の床がチェス盤を模した白と黒の模様になっていたことだ。本作では、チェスがストーリーにおいて重要な意味を持つため、作品の世界観に深く没頭することができる舞台セットになっていたように感じた。そして、上演が開始した直後も驚きと感動は続く。特に印象に残ったのは、冒頭のセリフだ。この舞台は「どうしてモーツァルトが嫌いなのかって、あのアホに尋ねたことがある」というセリフから物語がスタートする。このセリフは、実は原作のストーリーには登場しておらず、小説版の巻末に掲載された僅か12ページの短編作品『Lionheart』の冒頭のセリフなのである。ストーリーの基盤は確かに『追憶*モノクロのチェックメイト』なのだが、Knightsに関する様々な原作のストーリーやゲーム以外の媒体で掲載された書き下ろし短編のセリフが織り交ぜられており、それが全く違和感のない形で1つの物語として構成されている点に大きな魅力を感じた。
また、演出面で印象に残ったのは、光と影の使い方である。ストーリーの中で悪役のような役割を果たすキャラクターが登場した時に真後ろから強いスポットライトが当たって舞台上に大きな影を落としたり、キャラクターが血を流す残酷な場面で真っ赤なライトが床を照らしたりするなど、シーンに合わせてライトの色や当て方が工夫されていた。そして、本作のもう1つの魅力は2部のライブパートである。ライブパートでは、「あんスタ」の世界のアイドルたちのライブを観客として実際に見ているような気持ちになることができる。現在は原作のゲームでは時間軸が進み、夢ノ咲学院が舞台の物語ではなくなってしまっているのだが、このライブパートでは、『追憶*モノクロのチェックメイト』が公開された当時の本編の時間軸に合わせた楽曲と舞台のオリジナル楽曲だけを使用しており、本編のストーリーとは切り離されているものの、ストーリーの世界観を引き続き楽しむことができるような構成になっていたことに深く感動した。
このように、本作には脚本、演出、楽曲など様々な面での魅力が沢山詰まっている。本作は公演期間が終わってしまっているが、今後も新たな作品の上演が決定しているため、「あんステ」シリーズの魅力を1人でも多くの人に知ってもらいたいと願う。

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