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川島ゼミ 観劇レポート(2025年6月期)
『HUNTER×HUNTER』THE STAGE3
2025年6月15日(日)18:00/SkyシアターMBS(配信)
1998年に『週刊少年ジャンプ』にて連載を開始した富樫義博による人気漫画『HUNTER×HUNTER』。その舞台化作品第三弾が東京、大阪で上演された。私は今回、配信版で大阪公演千秋楽を視聴した。父に会うためハンターを目指し過酷な試練に立ち向かう主人公ゴンと、その仲間となったキルアは、ゴンの父親ジンの手がかりを求めて、幻のハンター専用ゲーム“グリードアイランド(G.I)”に挑む。プレイヤーたちがしのぎを削る中、彼らは特訓を重ね、ゲームクリアを目指して戦う。誰よりも若いゴン・キルアのコンビが、純粋な友情で切磋琢磨し合い、プレイヤーたちの誰よりも過酷な試練を乗り越えていく。何より、彼らは強敵たちがひしめき合い、様々な策略が飛び交うこのゲームを楽しんでいるのである。アニメ17話に渡り繰り広げられたグリードアイランド編を約3時間の舞台で描き、軽快に進んでいく物語の中で描かれたのは、彼らの友情と貪欲に成長し続ける姿、そしてそんな2人の姿に感化される大人たちの姿であった。映像を用いた演出や歌唱パートを用いて、状況説明や、キャラクターたちの心情の変化が効果的に表現されていた。
舞台セット、照明、映像そして人の力。4つの要素がバランスよく用いられ2次元に寄りすぎない舞台的表現が生かされた演出がされていた点が印象的だった。舞台セットは2段になっており、左右2か所に360度回転し、向きによって使い方を変えられる階段付きのセットがあり、そこが回転する以外の舞台転換はなかった。しかし、この2つの回転型装置によってステージ上に動きと幅が生まれ、回転させながら階段を上るシーンではアニメの1シーンを見ているような錯覚が生まれた。
ゲーム内を冒険する主人公たちは多くの場所を訪れるが、それは、照明と映像によって説明された。映像の演出で特徴的だったのは、映像が舞台奥のホリゾント幕に投影されるのではなく、手前の舞台セットの壁に投影された点である。また、舞台セットとして四角い額縁のようなものが4か所に設置されており、場所ごとの風景はそこに投影された。物語のゲーム内で主人公たちはアイテムカードを集めていくのだが、話題に出たカードもこの額縁に投影され、言葉だけでは伝わりにくい部分もわかりやすく、カード集めのわくわく感も感じられる演出となっていた。
3次元では再現不可能な技や、オーラ、衝撃は主に映像と照明を用いて表現された。漫画的な効果などは映像が用いられたが、ホリゾントに写さず、比較的明るい舞台前方に投影しているためか、過度に鮮明になることなく、自然に舞台と馴染んでいる印象であった。他にも、一律して黄色いレーザーで移動を表現、戦いの様子を際立てる派手な照明演出がされ、リアルでは見劣りしそうな戦闘シーンや特訓のシーンが視覚的に面白く、原作を知らずとも飽きずに楽しむことができた。
映像と照明が多用される中で、実物を用いたり、モンスターなど実在しないものでも人の手によって演じられたりしてるものが多く、実在しないものの説明をすべて映像に頼っているわけでないようであった。それを支えたのが白子・黒子の存在で現実では起こりえない超能力的な動きを時に、自我を出しながら支えていた。無機質な感情のないはずのものに自我を感じるのは舞台で人が演じているからこそのものかもしれないが、マンガの作者の遊び心が現れた一コマにクスっと笑ってしまうときの感覚に近く、マンガと舞台がリンクした瞬間のようにも感じられた。
舞台上の限られた空間、限られた時間、限られた条件の中で、舞台セット、照明、映像そして人の力の4つの力を効果的に用い、主人公たちの友情と成長を描いたこの作品は、物語を知っていなくても十分に楽しむことができ、物語と現実の表現がうまく馴染んだ2.5次元舞台の中でも非常に見やすい作品だったように感じる。また、今回主人公ゴンを演じた西山蓮都は16歳の高校1年生であったのだが、俳優自身の成長とゴンという少年の成長。それを見守り、指導し、感化されていく周りの大人たちという姿が物語にリンクしていたように感じる舞台であった。