西原ゼミ「わたしのベスト3」

作者の個性を色濃く感じた作品
軍司鉄之進
第1位 江口夏実『出禁のモグラ』(『モーニング』講談社)
大学生の真木と八重子は、自称「仙人」の男モグラこと百暗桃弓木(もぐら ももゆき)と出会ったことで、幽霊が見えるようになる。モグラはあの世から出禁を受けており、あの世へ帰るためには幽霊の持つ鬼火を集めなくてはならない。真木たちはモグラに協力し、身の回りで起こる心霊現象を探っていく。
本作は私の大学入学と同時期に連載が開始された。作者の前作である「鬼灯の冷徹」がとても好きな作品であったため、本作が発表されたことで新たな楽しみを持つことができた。心霊や人間の醜さを取り扱うが、物語全体はコメディタッチで、キャラクター同士の面白おかしいやり取りが魅力である。

モーニング公式サイト
第2位 藤本タツキ『ルックバック』(『少年ジャンプ+』集英社)
田舎に住む正反対の性格の少女2人が、タッグを組んでマンガを描いていく物語で、私の卒業論文の題材にもなった作品である。大学在学中に本作が発表され、「チェンソーマン」からこの作者の作風が気に入っていた私は、作者初の長編読み切りであると知り心を躍らせて読み始めた。淡々とした展開の中にある微細な心の動きが美しく、マンガを読んで感動した体験として深く印象に残っている。一本の映画を観たかのような満足感が味わえるため、未読の方には是非、事前情報などは耳に入れずに読んでみて欲しい。

少年ジャンプ+
第3位 エルド吉水『龍子 RYUKO』(『トーチ』リイド社)
彫刻家として活動していたエルド吉水が、45歳で突如描き始めたマンガ作品。「黒龍会」組長の龍子は、幼い頃に母を亡くし、義に背いた父を自らの手で殺めた過去を持つ。しかし父は堕ちてなどおらず、実は生きていた母を守るために行動していたのだった。真実を知った龍子は、後悔の念に駆られながらも気高く在り続け、幾重もの因果を断ち切るために戦う。
龍子を初めとする艶やかな女性たちは繊細に描き、戦闘シーンなどは荒々しく墨が飛び散るかのように激しく描いている。曲線と白黒の対比が美しく、ページをめくる度に美術品を見ているような気分になるマンガである。

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