西原ゼミ「わたしのベスト3」

2024年・心の栄養になる作品3選
パサチキ
第1位 住吉九「サンキューピッチ」(『少年ジャンプ+』集英社)
日本にはスポーツマンガが数多く存在し、中でも野球を題材とした作品は幅広い世代に愛されている。この「サンキューピッチ」も野球マンガだが、その内容は極めてユニークである。
当作品は、とある地域で囁かれている都市伝説から始まる。それは、自主練習中の高校球児に三球勝負を挑んでくる不審者が出るというもの。霜葩高校野球部3年生の小堀はある理由から、その謎の男が自分たちと同じ高校の生徒ではないかと考えた。小堀は甲子園への切符を掴むために謎の男の勧誘に向かうが、男にはある秘密があって…。
テンポよく挟まれるギャグシーンと癖の強い登場人物たち、圧倒的な構成力など、この作品には人々を元気にする魅力がたっぷり詰まっている。

サンキューピッチ 公式サイト(週刊少年ジャンプ)
第2位 宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」(新潮社)
「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」。なんでもコロナの影響で閉店が決まった西武大津店に、閉店のその日まで毎日通って中継に映るのだという。中学生の島崎みゆきは、そんなことを言い出す少し変わった幼馴染の成瀬を今日も見守るのであった。
この作品は第21回本屋大賞をはじめとする様々な賞を受賞し、デビュー作にして15冠を達成した、今話題の作品だ。自称凡人の島崎みゆきとその幼馴染であるマイペースな成瀬あかりが織りなす、異色の青春譚である。この作品は2人を主軸としたさまざまな出来事から成る短編集で、サクサク読み進められるのが特徴だ。成瀬が起こす出来事は全て、やろうと思えばできなくはないが、進んではやらないような突拍子もないことばかり。成長すると忘れてしまうような小さな冒険心が呼び起こされる、珠玉の逸品である。

成瀬は天下を取りにいく 公式サイト(新潮社)
第3位 SleepingMuseum「まつろぱれっと」(SleepingMuseum,ケムコ)
絵画の中の少女は言った。『描きなさい 魂を込めて 命を賭けて』。暗いアトリエの中、彼女を“終わらせる”ために主人公は震える手で筆を執る。彼女の機嫌を損ねては、ならない。
本作品はGoogle Play、App Storeでは共に4.9、STEAMのレビューでは非常に好評と一様に高い評価を受けているホラーアドベンチャーゲームである。通称は『まつろぱ』で、絵の中の少女が気に入るように様々な絵を完成させてアトリエからの脱出を図る…という内容だ。この作品は絵を完成させるために様々なアイテムを用いて謎を解いていくのだが、初見では分からないような罠とも言える謎解きがプレイヤーに襲いかかる。ゲームオーバー時も一風変わっており、ゲーム内の「しにざまギャラリー」に何種類もの“しにざま”が記録される。残酷で美しく、時に笑えて最後は感動に涙を流す。これこそ心の栄養と呼ぶにふさわしい作品である。

まつろぱれっと 公式サイト(ケムコ)

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