サイトマップ
西原ゼミ「わたしのベスト3」
2024年心に残る作品三選
紅茶スコーン
第1位 由貴香織里「天使禁猟区」(『花とゆめ』白泉社)
90年代に一世を風靡した由貴香織里の代表作。実の兄妹同士で愛し合うという禁忌を犯してしまった無道刹那と無道紗羅の二人が、前世からの因縁により異世界の天使たちの争いに巻き込まれていくというダークファンタジーである。
今作の魅力はなんといっても繊細で美しい画力によって展開される緻密に練りこまれた世界観だ。作品の主題こそ刹那と紗羅の禁断の恋模様だが、天使たちの複雑な関係や刹那と紗羅それぞれの前世のしがらみなど数多のキャラクターたちの心情が絡み合う重厚なストーリーは目が離せない。恋愛感情だけじゃない、様々な形の愛を感じられる名作。
天使禁猟区 紹介サイト(マンガPark)
天使禁猟区 紹介サイト(マンガPark)
第2位 市川春子「宝石の国」(『月刊アフタヌーン』講談社)
2024年春に完結し話題を呼んだ、市川春子の初連載作品。
人間が滅びた遥か未来を舞台に、意思を持った宝石たちの営みが淡々と描かれている。宝石を攫うために月からやってくる月人と戦う日常を繰り返す中で、異端な存在であるフォスフォフィライトを中心に、宝石たちの世界はどんどんと変わっていく。自分とは何者なのか、自分の一部を失ったらそれはもう自分ではないのか、そんな問いを投げかけられながらも生きる希望を感じるような救いを描いた作品。
宝石の国 出版社サイト(コミックDAYS)
宝石の国 出版社サイト(コミックDAYS)
第3位 SFマガジン編集部編「恋する星屑 BLSFアンソロジー」(『ハヤカワ文庫JA』早川書房)
BLとSFという、一見縁がなさそうな二つのジャンルを掛け合わせた、全12編の新感覚アンソロジー。
ひとえにSFといっても、AIによる徹底した管理で一切の苦痛を排除された近未来、宇宙旅行中の異星人襲来、新人類による新たな生殖が行われる席など、作品の舞台は様々。本格的なSFを読んでいたつもりがいつの間にかBLになっている、BLを楽しんでいたつもりがいつの間にかSFの世界に浸っている、そんな唯一無二の読了感を味わうことができる。アンソロジー形式のため一つ一つの作品が短く、小説を読みなれていない人にもおすすめの一作。
恋する星屑 BLSFアンソロジー 公式サイト(早川書房)
恋する星屑 BLSFアンソロジー 公式サイト(早川書房)