西原ゼミ「わたしのベスト3」

自分らしさと家族のかたち:2024マイベスト3
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第1位 須田翔子「ペパロニ・ヴァンパイア」(『マンガボックス』で連載中)
大都会のショークラブで人気No,1のドラァグクイーン、ローリ。店のクイーンたちから「ママ・ローリ」と慕われる彼の元に、ある日故郷の母の訃報が届く。かつて自分を捨てた母の遺産をもとにクイーンたちと独立する計画を立てるも、その道は険しかった。
自分が自分であるために、冷たい視線をヒールで一蹴するローリの生き様は爽快で美しい。一方で彼の中に残る母への愛憎は、読んでいるこちらが胸を痛めてしまうほど切実だ。性的マイノリティだけではなく、いじめや親子関係に悩む人物たちと手を組んでいくローリの日々は、どこか苦くも温かい。自分らしく生きることに悩んだことがある人ならば、きっと共感できるだろう。

ペパロニ・ヴァンパイア 公式サイト(マンガボックス)
第2位 雲田はるこ「昭和元禄落語心中」(『ITAN』で連載(終了)、講談社)
2013年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、第38回講談社漫画賞一般部門、第21回手塚治虫文化賞新人賞をそれぞれ受賞。
刑務所の慰問で聞いた八代目有楽亭八雲の落語『死神』が忘れられず、出所後そのまま八雲のもとへ向かった与太郎。「弟子は取らない」と言われ付き人として行動を共にすることになった与太郎は、八雲の養女である小夏の亡き父・二代目有楽亭助六の芸を聞き込んで稽古に励んでいた。しかし八雲と助六にはただならぬ因縁があった。
読むと落語を聞いてみたくなる、知らない世界を教えてくれる作品。頑固な八雲と小夏の心を溶かしていくまっすぐな与太郎にも癒やされる。

昭和元禄落語心中 出版社サイト 講談社コミックプラス
第3位 伊吹有喜「雲を紡ぐ」(文藝春秋より出版)
第8回高校生直木賞受賞。
いじめが原因で学校に行けなくなった高校生・美緒の唯一の心のよりどころは、祖父母にもらった赤いホームスパンのショール。このショールをめぐって母と口論になり、美緒は岩手県盛岡市の祖父の元へと飛び出した。自分自身を探す美緒、家族のあり方について悩み続ける父と母を包むように、温かい物語が展開される。
私は岩手県盛岡市出身のため、盛岡の空気を思い出しながら読んで懐かしさと切なさがこみ上げた。小説によるちょっとした盛岡旅行としても、手に取っていただきたい一作だ。

雲を紡ぐ 作者紹介サイト(Web伊吹有喜 折々のいぶき)

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