西原ゼミ 「大学生で出会った作品ベスト3」

[大学生で出会った作品ベスト3(未だかつてないほど多ジャンル)]
第1位 手塚マキと歌舞伎町ホスト75人「ホスト万葉集」(『ホスト万葉集』講談社)
この作品は非常に衝撃的だった。一見関係ないと思われるホストと短歌の化学反応が起こっており、非常に斬新である。和歌というものに対する高すぎる敷居を、良い意味で下げてくれる作品である。学校の授業で学んだ短歌に苦手意識を持っている人はぜひ読んでみてほしい。古典の和歌を理解するには、文法的分析・文化的考察・現代語解釈等の何重にもなった工程が必要であるため、理解するまでに時間がかかるため、理解する頃には言葉の鮮度が落ちている。しかしこの作品の和歌は今を生きる我々と同じ言葉で詠まれているため、鮮度の高い言葉を受け取ることができる。現代和歌の世界で活躍する人々が編者になっている。その方々の「より多くの人に気軽に和歌に触れてほしい」という気持ちが受け取れる。
(参考情報:紀伊國屋書店ホスト万葉集―嘘の夢・嘘の関係・嘘の酒・こんな源氏名サヨナライツカ
第2位 野田サトル「ゴールデンカムイ」(『ゴールデンカムイ』集英社)
日露戦争後の北海道・樺太が舞台となっている作品である。アイヌ民族が集めた砂金をめぐって複数勢力が争いを繰り広げる。それぞれの理想や目的のために奮闘する姿が心に響く作品。アイヌ民族などの少数民族の文化や当時の生活、当時の軍などが非常に詳しく描写されていて、さまざまなところにリスペクトが感じられる。テンポがよく、最初から最後までずっと面白い。終始面白いため、読み返そうと思ったら止まらなくなる。タイトルの伏線回収があまりにも気持ちよくて、大学生活でであった作品の中でも特に気に入っている。読み終わったら気付かぬ間に北海道行きの飛行機を予約していると思う。
(参考情報:ゴールデンカムイ公式サイト
第3位 三島由紀夫「不道徳教育講座」(『不道徳教育講座』角川書店)
「不道徳」で合っている。善悪を弁えて正しいことをするように心がけるのが道徳であるとすれば「不道徳」で合っている。三島由紀夫に対して漠然と劇的な生涯を終えた文豪というイメージを抱いていた私が初めて読んだ三島由紀夫作品はこれである。世の中の事象に対する疑問に対する答えを論理的に解明している。物事の言語化が非常にうまく、我々が日々漠然と抱いている感覚や「なんとなくの考え」をわかりやすく言葉にしていて、読んでいて納得する。現代人の私たちにも通じる内容で非常に面白かった。
(参考情報:好きな書評家、読ませる書評。『不道徳教育講座』

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