西原ゼミ 「わたしのベスト3」

[心に刻まれた物語2023]
オレンジと鷹
第1位 辻村深月「嚙みあわない会話と、ある過去について」(講談社)
「後悔するか救われるか」
この本の帯に書かれた言葉だ。この帯の意味を知るのは全てを読んだ後である。読者が今までどう生きてきたかによって後悔するか救われるかが変わる。立場が変われば見方がかわることをよく示した作品で、下手なホラーより怖い。そんなつもりはなかったのに無意識に人を傷つけてはいないか自分の行動を振り返り、これからの行動に喝をいれたくなるような話。 共感ができる日常事を辻村深月の負の感情の表現力が相まって、言い表せないイヤミスを読んだような読後感になる。気味が悪く、ゾッとしたいときにおすすめの一冊。
(参考情報:『講談社ノベルス』
第2位 田中一行「ジャンケットバンク」(『週刊ヤングジャンプ』集英社)
「君たちにはたくさんのマルがついている 幸せになってください」
これは倒した敵が死ぬ前に言った言葉である。敵は教師をしていて、常に正しく人を育てようとバツを数えて生活していた。他人を否定していた人が死ぬ間際にその人を認めてマルをつけること。それは、これまでに多くの共感があったことを踏まえて、そこに人生を認められたように感じることができた。
本書はギャンブル漫画であり、ギャグ漫画でもある。しかし少し変わった設定で、人もあまり死ぬことはない。カジノを運営するのはまさかの銀行で、主人公は基本的に賭け事のプレイヤーではない。ただし繰り返すが、熱い戦いを繰り広げるギャンブル漫画である。登場キャラクターの魅力が多く詰まった作品で、『少年ジャンプ+』で無料配信されているため興味があれば読んでみてほしい。
(参考情報:『ジャンケットバンク(少年ジャンプ+)』
第3位 奈須きのこ「Fate/Grand Order Cosmos in the Lostbelt No. 7 黄金樹海紀行ナウイ・ミクトラン」(『Fate/Grand Order』TYPE-MOON)
『Fate/Grand Order』の二部七章のストーリーである。2023年に配信されたゲームシナリオで異聞帯の最後を飾る、長い旅のくぎりの章であった。
最後の戦いだと息巻いている主人公にのしかかる、多くの難題と強敵。絶望しながら前に進む人類の強さが表れていて、壮大で出てくる全員が英雄だった。皆がそれぞれ守ろうとしてあがく、そんな人類の美しいストーリーである。
本作は奈須きのこが描くストーリーと新しいバトル様式が組み合わさった、最後の異聞帯にふさわしいものであった。このストーリーを読むためには多くの章をクリアしなければならない。しかしその分心動かされるストーリーが多いので、ぜひプレイしてみてほしい。
(参考情報:『Lostbelt No. 7 黄金樹海紀行ナウイ・ミクトラン 公式特設サイト』

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