西原ゼミ 「わたしのベスト3」

[今年の3冊]
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第1位 茅原クレセ「星屑の王子様」(『裏サンデー』小学館)
歌舞伎町に生息するホスト達とそこに訪れるお客の交流を描いた作品。どちらの立場のキャラクターも偏りがなく描かれているため、双方の事情を知ることができる。題材からドロドロした雰囲気を連想するかもしれないが、SNSで流行った単語や曲などの時事ネタが作中に盛り込まれており、歌舞伎町の界隈に詳しくなくても読みやすいのが魅力。また、作者が前作で連載していた作品のキャラクターが登場する。だが、そちらとは若干設定が異なっているため、二つの作品で性格の違いを楽しむこともできる。
(参考情報:『星屑の王子様(小学館コミック)』
第2位 冬夏アキハル「転生悪女の黒歴史」(『LaLa』白泉社)
主人公が自分の中学時代に作った小説に転生してしまうという物語。登場人物に対する情報量が盛りだくさんで、主人公自身の真剣度がうかがえる。転生物×悪役の組み合わせは最近多く見かけるようになったが、この作品は転生先が「自作」なのが見どころ。社会人になった主人公が当時の自分に突っ込みを入れたり、作り込みの甘い設定から作中の生き物が和洋折衷になってちぐはぐであったりするところも魅力の一つである。
(参考情報:『転生悪女の黒歴史(月刊ララ)』
第3位 池谷理香子「シックス ハーフ」(『クッキー』集英社)
「派手で不良」なギャルが事故によって記憶を失い、性格の変化から友人や家族との距離感に葛藤し、以前の自分の行動を理解できずに苦悩する。自分が本当は何者だったのか、今までと同じように生活することで探す主人公。一見事故前の彼女は遊び人だったように思えるが、実際は…?
タイトルである「シックスハーフ」は靴のサイズを示していて、記憶がなくなっても同じ体(=靴)で歩んでいく、という意味が込められている。「人は見かけによらない」という言葉もあるように、見た目と中身が必ずしも同じとは限らない。自分のことが思い出せなくなっても、置かれた環境・立場に向き合う強さが印象的な作品である。
(参考情報:『池田理香子インタビュー(クッキー)』

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