川島ゼミ 観劇レポート(2024年1月期)

劇団四季『アラジン』
1月8日(水)13:30/電通四季劇場[海]
Ema
はるか遠く、海のかなたの、砂漠の国。華やかで艶やかな町・アグラバー。ここには魔法の絨毯も、甘い愛の物語もある。不思議な場所へと誘われる劇団四季・ディズニーミュージカル『アラジン』。そこでの体験はまさに、色とりどりの魔法と愛と陰謀にあふれた魅惑的なものであった。
貧しさゆえに盗みを繰り返し、その裏では亡き母のために誠実でありたいと願うアラジンと、ランプから出てきた大魔神ジーニー。そして自立心があるのに法律に縛られ窮屈な生活を送るプリンセス・ジャスミン。言わずと知れた人気キャラクターたちが勢ぞろいし、楽し気でドタバタな物語が展開されていく。私はこの作品に、なんともいえない「没入感」と「華やかさ」を感じた。今回はこの二つの秘密を紐解いていく。
私が舞台を通して感じた「没入感」。なぜこんなにも物語にのめりこむことができたのか。その秘密はオープニングにあると私は考える。
原作映画では、冒頭でひとりの行商人が楽曲『アラビアン・ナイト』を歌い、故郷のアグラバーについて視聴者に語りかけるところから始まる。「のぞいてみてごらん」とでも言うかのように、最初に映画の中のキャラクターとそれを視ている自分がリンクすることによって、自分がまるで物語に入り込んだかのような感覚を想起させる。この構成は舞台でも同様に演出に組み込まれていたが、明確な違いがただ一つ。それは、語りかける人物がジーニーだということであった。オープニングでは人気楽曲『フレンド・ライク・ミー』のメロディが流れ、ジーニーの登場とともに客席から拍手が巻き起こる。『アラジン』の代名詞ともいえるジーニーという大きな存在を最初に登場させることによって、より物語への没入感を高めていたのだ。
続いて「華やかさ」。
これは舞台全体を通していえることだが、この舞台では非常に多くの“布”が使われている。町人たちの衣装は、女性は特に裾が長くくるりと回れば衣装がひらひらとたなびく。他にも小道具のクッションや洗濯物、そして魔法のじゅうたん。ありとあらゆる場面で布の存在感はとても大きかった。大勢で踊る楽曲では衣装のカラフルな色合いも相まってより華やかさが増す。さらには、アラジンとジャスミンが魔法の絨毯に乗って空を飛ぶ有名なシーン。私は当初雲の上まで舞い上がるシーンでスモークを使って再現すると予想していたが、実際は少し違った。アラジンたちが飛んでいる間、舞台一面に大きな布が現れ、四方を人の手で持ち大きくなびかせていたのだ。淡い白の照明も相まって、まるで月明かりに照らされた雲がゆっくりと揺れているようだった。二階席から観劇していたため、アラジンたちが絨毯の上から眺める景色を一緒になって感じられるような演出であった。
美しい彩りに満ちた世界を、物語だけでなく演出と道具でさらに花を添えてあでやかに演出した『アラジン』。一目見れば間違いなく、その世界に夢中になれるだろう。

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