川島ゼミ 観劇レポート(2024年12月期)

劇団四季『美女と野獣』
S.T
『美女と野獣』は、ディズニーが演技ビジネスに初進出した作品であり、1994年にアメリカ・ブロードウェイで実写化されてから、世界中で大ヒットを果たした。劇団四季でも1995年に東京・大阪同時ロングランで初演以来、9都市で上演され、各地で高い人気を博す作品である。
村に住む美しくて聡明だけど少し変わり者であるベルが、外見で人を判断してしまったことにより魔法をかけられて醜い野獣になった王子、「もの」に変えられた召使たちが住む城に迷い込んでしまう。バラの花が散る前に王子が人を愛し、愛さなければ永遠に人間に戻ることが出来ないため、召使たちは魔法を説くチャンスだとベルをもてなす。一方、野獣は次第にベルに思いを寄せるが愛を伝えるすべを知らず苦しむ。危機を乗り越えて心が通い始めたベルと野獣だが、迫りくる危険の中魔法を説くことが出来るのかといったあらすじである。今回、この『美女と野獣』を観劇して印象に残った点について2つにまとめて考察する。
1つ目は、舞台セットだ。舞浜アンフィシアターはステージが半円形状になっており、それを囲うように客席が設置されているため、180度からミュージカルを楽しむことが出来る。私は今回ステージのセンターに近い位置で鑑賞をしたが、様々な角度から見てみたいと思わせる作りだと感じた。舞台セットは煌びやかなセットとシンプルなセットの使い分けがとても印象的であった。「ビー・アワ・ゲスト」は金や赤などの高級感のある色使いで、沢山のライトや音に合わせて光る皿など見ているだけで心がワクワクさせられた。クライマックスでは左右から巨大なシャンパンのパネルが登場し、火を噴き始めるため、詰め込めるものを全て詰め込んだ贅沢パックのようで、とても満足感があった。反対に、ポット夫人が歌い、ベルと野獣が二人で踊る「美女と野獣」は満天の星が広がる深い夜空の背景に、下からスモークを炊くシンプルなものだ。しかし、それが世界で二人だけのような静けさや幻想的な場を表現し、ロマンチックであった。
2つ目は、こだわりぬかれた衣装だ。ベルといえばすぐに連想される黄色のドレスは、遠くからでもわかる美しい黄色で、星空が広がる舞台でとても映えていた。野獣の広い肩幅に絞られたウエストが際立つベロアのジャケットは細かく刺繍が施されていた。ディズニー映画版ではポット夫人は、片手を注ぎ口にし、スカートは球体のような形で蓋を帽子として被っている。質感も陶器のように表現されている。呪いで食器に替えられた家来たちは金を基調とした衣装で、食器を表現するとともに、曲の雰囲気に合った高級感のあるデザインであった。また、ラインダンスをするときに華やかになるようにパニエはカラフルで、ハットの内側も水色とダンス映えも考えられていることが分かった。
細部までこだわりが詰まった『美女と野獣』は、細かな舞台セットや衣装により、観客を引き込ませていた。色の使い方や質感でファンタジーでありながらのリアル感を出しつつ、ミュージカルの楽しさを存分に詰め込んだ作品だと言えるだろう。

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