えぬちゃ
川島ゼミ 観劇レポート(2024年12月期)
『SONG WRITERS』
11月18日(月)18:00/シアタークリエ
『SONG WRITERS』はこれまで 2013 年、2015 年に上演され、約 10 年の時を経て待望の復活を果たしたミュージカル作品である。今回は、豪華な舞台セットやピアノとサックスの生演奏、カラフルな衣装や賑やかなアドリブなど、数えきれないほどの見所が詰め込まれた本作の魅力を語っていきたい。
まずは 1 つ、印象に残った場面を紹介する。本作ではピアノ、テーブル、椅子、ソファ、ドア、ベッド、窓、街灯、バーカウンターなど、大きなセットが入れ替わりながら話が進んでいくのだが、途中に含まれるショーパートのようなシーンでは、舞台上からセットや楽器が全て取り払われる瞬間がある。そんな引き算の演出に引き込まれながら舞台上の役者に注目をしていると、不意に舞台の後方を大きなセットが横切る。そのセットが通過すると、セットの後ろに待機していたキャストの姿が見える。このように舞台上に新たなキャストが登場していて、シンプルだがワクワクする演出であると感じた。
そして本作は、現実と非現実の交錯が特徴的な作品であると考えた。劇中では、登場人物が実際に生きる現実の世界と、登場人物が思い描く物語の世界のストーリーが交互に繰り広げられるのだが、初見でも違和感を覚えたり置いていかれたりすることなく受け入れることができる脚本と演出、そしてアドリブを含めた役者の演技が魅力的であった。
また、本作の魅力は作品のストーリーや演出だけにとどまらない。私が観劇した中で大きく印象に残ったのは、観客の反応である。歌唱の際の手拍子や拍手を始めとし、キャストが登場する場面で拍手が起こったりアドリブのシーンで笑いが起こったりと、客席が終始賑やかであったことが強く印象に残っている。観客も含め、劇場全体で 1 つの舞台を作り上げているような一体感があり、先述した衣装のカラフルさも相まって、まるでテーマパークのショーを見ているかのようなワクワク感を味わうことができた。
そして何より、カーテンコールではスタンディングオベーションと歓声が自然と起こっていたことも印象深い。日本の劇場で歓声が上がる作品は、そう多くないのではないだろうか。私はこれまで様々な作品を劇場で観劇してきたが、ライブ形式の作品以外で歓声が沸き起こる作品に初めて出会うことができた。
最後に、本作は"この世に 100 の悲しみがあっても 101 個目の幸せを書き足せばいい"というフレーズがキャッチコピーとなっている。この言葉はポスターに記されているほか、劇中でも曲の歌詞として登場する印象深い一言である。本作は、この言葉をまさに体現した作品ではないだろうか。日常生活で 100 の悲しいことがあったとしても『SONG WRITERS』を見ることが 101 個目の幸せになる。日常に幸せを付け加えるために定期的に触れたいと思える、そんな明るさと希望を持つ作品『SONG WRITERS』の再演を切に願う。