川島ゼミ 観劇レポート(2024年10月期)

舞台『鬼神の影法師』-玲瓏万華篇-
6月17日(月)19:00/あうるすぽっと
えぬちゃ
舞台「鬼神の影法師」-玲瓏万華篇-は演劇集団「GEKIIKE」が劇場「あうるすぽっと」で上演した舞台作品である。私は前作の舞台「鬼神の影法師」-黎明編-を観劇しておらず、ストーリーや登場人物の関係性などを理解し切れていない状態で劇場に足を運んだのだが、特徴的な演出や試みが沢山練りこまれた作品であったため、今回は主に演出面などに着目して魅力を語っていきたい。
本作を観劇して最も印象に残った演出は、客席の通路を最大限に活用した出捌けと場面転換である。舞台上のセットは、3段に分けられたステージと中央階段のみのシンプルなものであったのだが、全編を通して通路を活用しながら物語を進めることで、臨場感がある演出になっていた。また、最低限の暗転しか用いられていないにも関わらず、舞台上だけでなく通路を舞台の一部として扱うことで場面転換がスムーズに行われている点が印象的であった。上手の通路扉から捌けたキャストが次の場面では舞台の上手中段のステージから登場する、といった場面が多く存在するため、特定の1人のキャストの動きに注目しながら観劇するのも醍醐味のひとつであると言えるだろう。本作が上演された「あうるすぽっと」は、客席数301席の小規模な劇場である。しかし、こうして通路を活用しながら劇場全体を使って芝居をすることで、臨場感や迫力を生み出すことにつながっていると感じた。私は通路よりも後方の座席に座っていたのだが、この演出のおかげで後方でも充分な臨場感を味わうことができただけにとどまらず、扉にスポットライトが当たるたびに「次は誰が出てくるのだろう?」とワクワクした気持ちで観劇していたことが印象に残っている。
また、カラフルで装飾が沢山ある華やかな衣装も魅力的であった。本作は陰陽師や陰陽術をテーマにした作品であり、十二天将と呼ばれる安倍晴明の式神が登場する。この式神は「吉将」と「凶将」という2つの組に分けられるのだが、吉将は青が、凶将は赤がそれぞれメインカラーとなっており、吉将と凶将が舞台上に揃った時の色の対比や見栄えが大変魅力的であった。吉将と凶将はそれぞれが同じデザインの揃いの衣装を着用しているのだが、カーテンコールで行われたミニトークショーでは同じデザインの衣装でも帯の結び方などが全員異なっているという工夫が明かされており、細部へのこだわりが可視化されているのも注目すべきポイントであると考えた。
そして、本作の大きな特徴のひとつとして日替わりキャストが登場する点が挙げられる。ライブパフォーマンスがメインのミュージカルで日替わりや会場替わりのキャストが登場したり、アフタートークイベントで回替わりのゲストを招いたりする作品はこれまでも観劇したことがあったのだが、ストレートプレイの作品で日替わりキャストが登場するのを見るのは本作が初めてであった。脚本の流れは大きく変化しないにも関わらず、日替わりキャストの登場が短時間でも大変良いアクセントとなっており、他のキャストの登場回と比較したくなるような演出であると感じた。
 本作は、2025年1月には3作品目となる続編も決定している。多くの魅力があるこの舞台の臨場感を、ぜひ劇場で味わってみてほしい。

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