川島ゼミ 観劇レポート(2024年5月期)

『鴨川ホルモー、ワンスモア』
2024年4月21日(日)13:00/サンシャイン劇場
りんごあめ
本作は万城目学の小説「鴨川ホルモー」をヨーロッパ企画の上田誠が脚本・演出を手がけた作品である。京都を舞台にした大学生の青春群像劇である本作は、2浪したのちに京都大学へ入学をした中川大輔演じる主人公・安倍が、「京大青竜会」というサークルに勧誘される。どのようなサークルなのか分からないまま新歓に参加したが、八木莉可子演じる早良京子への一目惚れをきっかけに入部を決める。「京大青竜会」は「ホルモー」という謎の競技を行い、立命館大学など京都にある他大学とオニ語を使用して戦うサークルだった。ホルモーとはオニや式神を用いて戦う、平安時代から続く陰陽道バトルである。
まず初めに演出に注目をしたい。開演前に観劇中の注意事項がアナウンスされたが、劇中に登場する人物が役のまま行っていたため、開演前から作品の世界に入り込んだ感覚になった。そしてステージの左右には鳥居が置かれ、真ん中には大きな土手がセットされていた。この土手は真ん中で左右2つに分かれ、中には主人公安倍の部屋が隠れていた。大きな土手があったことでステージが狭く感じられたが、土手の下も使うことによって広く見せていた。本作の演出の中で私が面白く感じたのは、始まりと終わりが全く同じ場面だったことだ。10人の役者が一斉に登場し、新入生を眺めていると先輩も加わり18人になる。ここで安倍が「ホルモー」についての説明を始めるが、この時はホルモーがどういうものなのかすぐ理解できなかった。その後は安倍たちがこのサークルに入部することになった理由から、始まりの場面に繋がるまで物語が進んでいく。その間を知ったことによって、最初は理解しようと必死だったが、最後には安倍たちが先輩になったのだと感慨深い気持ちになった。このように全く同じ場面でも違う感情が生まれた。他にも本作は回想場面が多かった。ただその状況の説明をしているのではなく、その後ろで話をされている人物たちがその場面を演じていた。聴覚だけではなく視覚の情報もあったことで、状況の理解がしやすかった。また、ホルモーの競技中に登場するオニは、プロジェクションマッピングによって登場していた。祇園祭の場面では駒形提灯の画像が映し出されたりと、映像・画像を使用することで、観客が理解しやすいよう工夫がなされていると感じられた。
次に役者についてである。登場人物が18人いたが、それぞれの個性が光っていたため本当のサークルを見ている気持ちになった。恋愛模様も見どころの1つであると考えるが、主要人物の安倍、早良京子、そして佐藤寛太演じる芦屋3人の恋愛模様だけでなく、他にも3つの恋が動いていて、どれも青春と思えるものばかりだった。他にも本作は役者だけでなく、芸人も多く起用されていた。人物が多かったこともあり、テンポよく進んでいったが、芸人が登場する場面ではアドリブだと感じるセリフや絶妙な間の取り方で笑いを誘っていた。観客の反応を感じながらのかけあいはさすがだと感じ、役者だけではなかったからこそ、作品の良さがより引き立っているのではないかと感じた。
会話だけで進まず、ダンスの場面があったりと変化が多かったことで、2時間があっという間だった。私は2時間を通してホルモーという競技を理解することはできなかったが、学生ならではの青春やクスッとなる場面の多さから、観劇後には心が満たされた。どこが面白かったのか聞かれると説明は難しいが、なんとも言えない面白さがあり、舞台を観たうえで原作も読んでみたいと思った。

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