川島ゼミ 観劇レポート(2024年5月期)

『鴨川ホルモー、ワンスモア』
2024年4月24日(水)14:00/サンシャイン劇場
朝陽
今回観劇した作品は『鴨川ホルモー、ワンスモア』である。万城目学原作の「鴨川ホルモー」「ホルモー六景」を元にニッポン放送開局70周年記念公演として企画・制作された。2浪したのちに京都大学に入学した安部が、怪しい先輩からサークル勧誘を受け、新歓に誘われる。入会するつもりはなく、新歓コンパだけ参加するつもりで向かったが、早良京子へ一目惚れをし「京大青竜会」サークルに入った。はじめはリクリエーションサークルと思われていた青竜会であったが、千年の昔から続く鬼や式神を使って争う謎の競技「ホルモー」をするサークルであった。「ホルモー」の存在を疑いつつも練習に励む10人の学生たち。安部は失恋したことによって、ホルモーの練習を拒みだし、サークル内での恋愛の拗れや仲間との分裂の戦いが始まった。
私は予備知識なしで観劇をしてしまったことから、冒頭から「ホルモー」とは何か分からず、置いて行かれたようにも思ったが、今思えば新歓に参加したサークルメンバーと同じように徐々に情報を知り、疑問点やツッコミたくなるところが同じであったため面白く観劇できた。しかし、2006年に書かれた原作はその時代のさだまさしの話や京都が舞台聖地であることから、京都人なら分かる土地の自虐ネタがあるように思い、ジェネレーションギャップやもう少し土地感があれば笑えたのにと残念に思うことがあった。
本作はコメディ的に笑えるポイントが幾つかあり、観客は笑い声に出すほどウケていた。それぞれのキャラクターの面白さや魅力が役に織り込まれていたことが良かったと思った。阿倍の1番の友人の高村が初戦に負け、自分の鬼を全滅させてしまうと“何か大切なものがなくなる”ということで、高村は髪の毛の一部がなくなり、次にあった日にはちょんまげになったことが印象的に残った。ちょんまげスタイルが自分のステータスになったと嬉しそうにし、その後もちょんまげ姿で、自由に語り始めるナレーションや関西弁が笑いを誘った。関西弁のイントネーションは、俳優の鳥越裕貴自身の出身地からなるものだろう。そのこともあり、違和感なくキャラクターを見ていられた。さらに、サークルを荒らした根源とも言える早良が、安部と芦屋などにそれぞれ見せるキャラクターの表現力にはリアルさが感じられた。何とも思っていないけれど安部の優しさに甘える姿、好きな芦屋だけに見せる可愛らしい姿、時には芦屋の元カノに見せる怒りながら突っかかる強気な姿といった、色々な側面を覗いているような感覚だった。
本作の作品内容や観劇者の客層を知ることができた。平日のマチネ公演ということもあり、客層は高く、私のような大学生や若い世代の人は見られなかったが、ほぼ満席状態であった。好きな俳優目当ての観客よりも作品が好きだから観に来たという観客が多く見受けられ、万城目学の『鴨川ホルモー』がいかに愛されているかが感じられた作品であった。

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