川島ゼミ 観劇レポート(2023年11月期)

舞台『ロミオとジュリエット』
9月16日(土)17:00/有楽町よみうりホール
りんごあめ
井上尊晶演出『ロミオとジュリエット』を観劇した。シェイクスピア劇を観ることも『ロミオとジュリエット』を観ることも今回が初めてだった。セリフ量が多かったが、それに負けない役者の熱量も圧巻であった。
ヴェローナではモンタギュー家とキャピュレット家の争いが長い間続いていた。モンタギュー家のロミオは、親友とキャピュレット家の舞踏会に潜入するが、そこでジュリエットに出会い、お互いに惹かれあう。その後2人はロレンス神父のもとで密かに結婚式を挙げた。街頭では両家の若者が争っていたが、決闘の末ロミオは殺害をしてしまい、大公から追放の宣言を受ける。それによりジュリエットはパリス伯爵との結婚を早められるが、逃れるために仮死状態になれる薬を飲む。ジュリエットが死んでしまったと思ったロミオはジュリエットの墓に駆けつけ、ジュリエットを前に毒を飲んで死んでしまう。直後に目覚めたジュリエットも後を追って自殺をするという悲劇である。
大きな鐘の音と共に幕が上がる。そして壮大な音楽と共に役者が登場し、モンタギュー家とキャピュレット家の戦いが始まる。ゆっくりした動きから始まり、いつの間にか早い動きへ。緩急の変化と剣同士のぶつかる音の迫力によって一気に作品世界へと引き込まれていった。この冒頭から魅力的であったが、その中でも劇場の使い方と演出が最も印象に残っている。舞台上には3階分のコロッセオのようなアーチ型のセットがあり、端には2階から棒がつけられていて、中心にはロープがつるされていた。役者が2階から1階に下りてくる際に使用していたが、階段だけではなくこれらも使用することで役者の動きが活発に見え、17歳らしさが表れていたと感じた。他にも上手や下手にはけるだけではなく、客席の通路も使用しロビーに向かって去り、ロビーから現れ舞台に上がるなど劇場全体をステージとしていた。そして、セリフの中で観客に問いかける場面が何回かあった。その為、自分も登場人物の一人であるような錯覚を覚えた。このように舞台上だけでなく、劇場全体を広く使用していることから、臨場感をもって主体的に作品に参加することができた。
次に役者にも注目したい。まず乳母を演じていたのは女性ではなく星田英利という男性だった。声の高さや仕草は女性であり、男性であることを忘れるくらい乳母として存在していた。そして本作で最も印象に残ったのは、藤野涼子演じるジュリエットだった。ジュリエットはベッドの下に隠れていて、乳母を驚かすようにそこから登場する。その姿は茶目っ気に溢れかわいらしかった。また、高杉真宙演じるロミオに恋をしている姿もまっすぐで輝かしく見えた。しかし、ロミオが追放されると知ったときには、美しい声から太い声へと変化した。幼くてかわいいだけの人物ではなく、若いけれどもしっかりとした芯があるところから女性の強さを感じた。子供から大人へと成長する過程を見れた気がした。後半になると白い衣装が主となったが、悲劇パートでありながらも白色が美しく見えた。特にジュリエットが自殺をするシーンでは、ジュリエットにスポットライトが当たり、血である赤いスプレーが高く飛び散った。まだ幼い2人の真っすぐで純粋な姿が白色と重なり、美しく見えたのだった。
セリフ量が多いため、テンポよく進んでいくが一言一言が流れることなく生きていたのでセリフだけでも感情を読み取ることができた。そして登場人物みんなが生き生きとしていたため、全員が主役に見えた。3時間という長い公演だったが、初めから終わりまで目まぐるしく進む本作は見応えがあり、あっという間に感じた。

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