川島ゼミ 観劇レポート(2023年11月期)

『BATTLE OF TOKYO〜CODE OF Jr.EXILE〜』
7月30日(日)16:00/京セラドーム大阪
うそうさぎ
「BATTLE OF TOKYO〜CODE OF Jr.EXILE〜」はEXILEや三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBEなどの数々の有名アーティストを輩出する芸能事務所LDHが主導する同名プロジェクト「BATTLE OF TOKYO」の一環のライブとなっている。
まず「BATTLE OF TOKYO」のプロジェクトと世界観について簡単に説明する。このプロジェクトは小説、音楽、ライブ、漫画、アニメーションなどの総合エンタテインメントプロジェクトである。参加アーティストはGENERATIONS、THE RAMPAGE、FANTASTICS、BALLISTIK BOYZ、PSYCHIC FEVERの5組であり彼らはEXILEに憧れた世代としてJr.EXILEと呼ばれている。しかしこのプロジェクトの中では彼らはその名前では呼ばれない。小説の設定ではそれぞれ怪盗団、用心棒集団、イリュージョンチーム、ハッカー集団、武器商人として登場しそれぞれのチームと個人に特殊能力が備わっており、現代の東京のパラレルワールドである「超東京」に存在する重要なアイテムを巡って戦い、物語が進行する。
このライブは上記のプロジェクトについて詳しくなくても楽しめるライブであったと感じたのと同時に、私自身はこのプロジェクト開始時から注目し刊行された小説を全て読みライブに足を運んだため、プロジェクト及び小説のファンとしての楽しみ方をすることができたと考えている。本レポートではライブの演出について双方の観点から注目した1点について述べる。
ライブ中盤、それまでの雰囲気とは明らかに変わった空気が流れる場面があった。登場したのは異国情緒あふれる風貌の人々。紹介された名前はF.HIRO、 TRINITY、DVI、BOOM BOOM CASH、BEAR KNUCKLEという。彼らはLDHが展開するグローバル化の一環として進出している国であるタイで活動するアーティストである。彼らは自分たちの楽曲に加え、タイでの活動を意欲的に行なっているBALLISTIK BOYZとPSYCHIC FEVERとのそれぞれのコラボ楽曲、そしてこのライブが初公開となったTHE RAMPAGEとのコラボ楽曲を披露した。先日THE RAMPAGEもタイでの音楽イベントにも出演したため、このコラボが海外進出への足がかりになっていると考えられる。日常生活の中でタイの音楽はおろか、文化や言語にも触れる機会は多くない、むしろほとんどないと言っても過言ではないと思われるのでとても良い経験になったように感じた。
とはいえ、いきなりのタイのポップアーティストとのコラボステージには多くの人がとても驚いたことだろうと思う。私自身もSNSでこの情報だけを見たときに困惑したことを覚えている。しかし、これには大きな伏線が張ってあったのだ。ライブ開催前に刊行された小説の第5巻では、PSYCHIC FEVER扮する武器商人たちが大きな海外勢力と手を組んでいるという話があり、その勢力は「超曼谷」と記されていた。読み方は「超バンコク」。先述した「超東京」に習えば、パラレルワールドのタイの首都と解釈できる。BATTLE OF TOKYOの世界では「歌うリリックは拳銃となり剣となる武器となる。踊る身体はその武器を放つための魔法の陣。それらを操るものは魔術師となり戦士である。」という設定があるため、登場したタイのアーティストたちもJr.EXILEと同じようにパラレルワールドでは戦うことができるということになる。ここで現実世界のアーティストたちの活動と、プロジェクトの物語がつながった。普段縁のない音楽に触れられたことと、小説の世界観が忠実に守られていること。1つの事柄で2つの観点から楽しむことができた。
このBATTLE OF TOKYOのプロジェクトは2019年から始まり、今年で4年目となる。今後展開予定のアニメーションも、キャラクターの声は本人ではなくプロの声優が当てることも発表され、先に公開されたキャラクターの声優陣は数々の有名作品のキャラクターを演じた名だたる面々ばかりだった。そのことからもわかるようにとても大きなプロジェクトである上に、中核である物語は主要登場人物だけで45人を超えるという超大作で、先日刊行された5巻でやっと第一幕が完結したばかりである。制作に時間を要することは想像にたやすいが、複数のメディアと表現方法が交錯し興味深いプロジェクトである上に、主導するLDHが手がけた他の総合エンタテインメントプロジェクトが成功を収めた実績もあるため、今後の展開も期待して注目していきたい。

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