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科目名国際関係学
担当者笹島 雅彦
開講期2026年度秋学期
科目区分週間授業
履修開始年次1年
単位数2単位
授業の方法講義
授業形態対面(全回対面)
オンライン60単位制限対象科目
全回対面
授業の到達目標世界政治は激変しつつある。複雑で混乱に満ちたこの世界をどのように考察したらいいのか、考えるきっかけとする。分析の道具である国際政治の理論を学ぶ入門編である。各理論の特徴を説明できるようにするとともに、17世紀以降の主権国家体制の流れをつかむ。同時に、国際報道について批判的に読み解く「メディア・リテラシー」を身につける。
今年度の授業内容ルールに基づく自由主義的な世界秩序が崩壊過程に向かっている現状を概観し、「自由主義」対「権威主義」が対立する世界の分断について考える。現代国家の成り立ちについて、17世紀以降の国際政治史の流れを追いながら、伝統的な現実主義のアプローチとリベラリズム理論を比較し、有用性を検討する。現在、国際的な論争となっている国際システムの「極」について討論していく。冷戦後、盛んになっているコンストラクティビズム(構成主義)、相互依存論、民主的平和論、グローバリズムの高揚と反作用などについて、足を踏み入れる。
準備学修(予習・復習等)の具体的な内容及びそれに必要な時間について毎回、指定する範囲内でテキストを熟読、予習すること。新聞の国際ニュースを毎日欠かさず読み、流れをつかむこと。
また、国際ニュースの担当者は、1週間の出来事の中から重要と思われる報道内容をレジュメにまとめて授業中に紹介する準備を行う。

平均190分
1回平均約190分
自習に関する一般的な指示事項

新聞を毎日熟読し、国際ニュースの流れをつかむ。

授業の特徴(アクティブラーニング)リアクションペーパー/レポート/プレゼンテーション/討議(ディスカッション・ディベート)
第1回授業の概要説明と発表担当者振り分け:国際政治とは何か
授業の進め方についてガイダンスを行う。同時に、国際ニュースの発表担当者を割り振っていく。
第2回私たちの現在:コロナ禍の世界と世界秩序の崩壊
私たちが住んでいる世界はどのような世界なのか。様々な人物に焦点を当てながら観察を進めていく。冷戦終結後の世界は、もう一段階進み、「ポスト・ポスト冷戦時代」と位置付けられている。
第3回戦争はなぜ起こるのか、平和とはどのような状態か。ウクライナ情勢分析と中東地域
私たちは歴史の蓄積の上に立ちつつ、歴史に呪縛されず、変化とともに継続性を理解する必要がある。伝統的な諸理論を学び、それらを現代の状況に適用しなければならない。戦争ばかりを起こす国家なんて、なくなればいいと考える人もいるかもしれない。しかし、世界政府が実現しそうなわけではないのである。今日のほとんどの戦争は、内戦か、エスニック紛争であり、世界が解決策を見出すのはなかなか困難だ。 ウクライナ情勢分析と中東地域情勢からひも解いていく。
第4回現実主義とリベラリズムの原点を探る:ペロポネソス戦争をめぐる原因と理論
コンストラクティビズム(構成主義)とは何か
主権国家の上により高位の国家、例えば世界政府はないという意味で、国際政治は無政府的である。世界の自然状態がいかなるものかについて、イギリスの哲学者、ホッブスとジョン・ロックは全く異なる見方に立っていた。この回では、両者の考え方の違いを理解していく。また、コンストラクティビズムが現実主義とリベラリズムへの有益な批判を行っており、補完していることを説明する。
第5回国家とは何か:主要な概念=国民国家・国際的主体・パワー・国際システム
第6回現実主義におけるパワーと影響力、国益の関係性、勢力均衡論と同盟

リアリズムにおいて、国際システムの中で国家が最も重要な主体であり、無政府状態が国家の行動に大きな影響を与え、すべての政治は権力政治である、と理解されている。国家には国益があるだけである、ということも共通の理解である。しかし、古典的リアリストとネオリアリストは考え方が大きく異なっている。また、国家はパワーをバランスさせようとするのか、それとも脅威をバランスさせようとするのか、といった議論が進行している。


第7回ウエストファリア体制と国家中枢体系

30年戦争とウエストファリア体制が確立して以降の時代を国際政治学は主な研究対象としている。キリスト教世界でカソリック対プロテスタントの争いが発端となった30年戦争は、最後の宗教戦争であると同時に、近代国家同士の最初の戦争であるともいわれる。その結果、ウエストファリア講和条約が結ばれ、領土的主権国家体制が確立したのである。


第8回ウィーン体制と19世紀の勢力均衡システム
17世紀末から19世紀初頭にかけて、スペイン王位継承戦争、七年戦争など断続的な戦争の時代が続いた。この時代を「長い18世紀」とも呼ぶ。この時代の特徴は、勢力均衡の登場である。
フランス革命・ナポレオン戦争とウィーン体制の確立を概観する。フランス革命を巡る戦争とその後のナポレオン戦争が終結したのち、関わったすべての国がオーストリア帝国の首都、ウィーンに集まった。このウィーン会議を先導したのは、敗戦国フランスを含めた五大国であった。この会議は、国際協調体制の礎となり、半世紀以上にわたって平和を維持するきっかけとなった。

第9回第一次世界大戦の起源

ウィーン体制が崩壊した後のヨーロッパ国際政治は、新生ドイツ帝国の宰相・ビスマルクの巧みな外交術によって一定の平和が保たれていく時代に入った。ところが、若きウイルヘルム2世はビスマルクを辞任させ、ビスマルクの築いた欧州列強との同盟関係を解消していく。これによって、フランスは孤立から脱し、ロシアとの同盟を結び、均衡が崩れていく。

第一次世界大戦は、2000万人近くの死者を出した総力戦、消耗戦である。この戦争はヨーロッパの3つの帝国を滅ぼした。ドイツ、オーストリア=ハンガリー、ロシアである。これまで勢力均衡の中心はヨーロッパだったが、この先、アメリカと日本が主要なプレーヤーとして登場する。

第10回「危機の20年」と第二次世界大戦の起源:戦争の違法化をめぐる国際法の確立
戦間期は、イギリスの外交官、E・H・カーによって「危機の20年」と呼ばれる。リベラル派のウッドロー・ウイルソン大統領は、勢力均衡論を排除し、国際連盟の創設を提唱した。しかし、米国自身は参加せず、国際問題にうまく対応できず、集団安全保障に関する世界で最初の試みは、みじめな失敗に終わったのである。

第二次世界大戦とは何だったのか
国際連盟が機能不全のまま、世界に全体主義の影響が広まり、1939年9月、ヒトラーのナチス・ドイツがポーランドに侵攻した。戦車と航空機を駆使して短期間で相手の本拠地を叩く「電撃戦」を生み出した。独ソ不可侵条約の取り決めに基づき、ソ連がポーランドの東半分に乗り込んできた。英仏はドイツに宣戦布告し、第二次世界大戦が勃発した。この戦争の原因は何だったのか。国際システムの面から解剖していく。


第11回冷戦:抑止と封じ込め戦略:米ソ対立と「長い平和」
冷戦は単純に言えば熱戦の反対語だが、平和は不可能であるのに、戦争も起こりえない状態、と言えるだろう。冷戦期にも朝鮮戦争やベトナム戦争など地域戦争や代理戦争が戦われてきた。にもかかわらず、第3次世界大戦につながるような米ソの直接的衝突や核戦争は回避されてきた。このため、冷戦を「長い平和」として評価する向きもある。
第12回冷戦後の紛争:介入と主権の関係、増大する内戦、国際テロ、移民・難民問題
リアリストにとって、国際政治の中核的な価値は、秩序と安定であり、中核的な制度はバランス・オブ・パワーである。それらを維持する必要があると判断するとき介入は正当化できると、彼らは信じている。不介入原則に対する例外はどのような場合だろうか。

第13回グローバリゼーションと相互依存の概念、コンストラクティビズム(構成主義)の視点
グローバル化は今の世界を特徴づける現実の一つである。もちろん、それは今に始まったことではない。グローバル化の根幹にあるのは、相互連結性である。同様の概念として相互依存性がある。
第14回リベラルな国際秩序とグローバルな課題:核拡散、気候変動、サイバー防衛、感染症
自由主義的な国際秩序は現在、揺らいでいると言われる。これはどのような状況を指すのだろうか。どんな秩序であっても、そこには必ず秩序の要素と無秩序の要素があり、二つのバランスの度合いを含めて秩序となっている。世界全体Gアすべて平和になることはないし、完全無欠な正義と平等も存在しえない。世界を無秩政府状態にしようとする勢力と、世界に社会を形成しようとする勢力は両方とも存在する。
授業の運営方法

授業の冒頭、担当者が1週間の国際ニュースの中から最重要事項を報告する。参加者はそれぞれの質問や意見を述べて、討論に参加する。講読では、国際政治学の基本的理論がどこまで現実に当てはまるのか、検証を試みながらアプローチの視座を考える。そのうえで、各学生が関心のあるテーマについて、調査を行い、独自の視点から発表する。調査方法は事前の授業時間内に助言する。その後、全員で討論・質疑応答を行う。
国際政治学の基本的理論がどこまで現実に当てはまるのか、検証を試みながらアプローチの視座を考える。

課題試験やレポート等に対するフィードバックの方法ウエブ会議システムMicrosoft-teams上、各学生それぞれの「クラスノートブック」欄を用い、毎回の授業終了時に「リアクション・ペーパー」を投稿する。One Note機能をフル活用する。「リアクション・ペーパー」に質問は書かないこと。質問は授業時間内に直接、質問することが原則。「リアクション・ペーパー」には、授業内容のメモや気づいた点、指示に基づくそれぞれの意見を書きこむこと。教員はそれに対し、赤ペンで講評、添削を行う。レポート提出の場合も同様である。
場合によっては、チームズのチャット機能や、ポータル上の「掲示板」「Q&A」「メール」機能を利用する場合もある。
評価の種類 割合(%) 評価方法・評価基準
小論文・レポート 60% 中間・期末レポート
授業参加 40% 国際ニュース報告と質問、意見表明、毎回の授業後のリアクション・ペーパー記載など
定期試験 0% 実施しない
テキスト

ジョセフ・ナイ著「国際紛争ー理論と歴史(原書第10版)」(有斐閣)2500円。ISBN978-4-641-14917-5

リチャード・ハース著「The World 世界のしくみ」(日本経済新聞出版、2021年)2420円、ISBN978-4-532-1771-6
参考文献

ジャレド・ダイアモンド「銃・病原菌・鉄 1万3000年にわたる人類史の謎」上・下(草思社文庫)

バーバラ・W・タックマン「八月の砲声」(筑摩書房、2002年)

川上高司・石澤靖治編「トランプ後の世界秩序」(東洋経済新報社、2017年)のうち、笹島雅彦著「第2章日中関係【政治】」

田中明彦著「ポストモダンの『近代』」(中央公論新社)

多湖淳著「戦争とは何か」(中公新書、2020年)

田中明彦・中西寛編著「新・国際政治経済の基礎知識」(有斐閣ブックス)

佐橋亮著「米中対立」(中公新書、2021年)

細谷雄一著「国際秩序」(中公新書、2012年)

小泉悠著「ウクライナ戦争」(ちくま新書、2022年)

赤木完爾編「国際安全保障がわかるガイドブック」(慶應義塾大学出版会、2024)

学生の問題意識に合わせ、適宜、助言する。
その他、履修生への注意事項

(授業形態)
対面授業を主体とする。
(成績評価)
 全14回の授業のうち、三分の二以上、つまり10回以上の出席者を成績評価対象とする。

卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連 カリキュラムマップ【文学部 人文学科】
実務経験の概要

35年間に及ぶ新聞記者生活。政治部、国際部などに所属し、北京特派員として中国の暗部を探るなど、ジャーナリズムの最前線で働いてきた。

実務経験と授業科目との関連性

政治、外交、安全保障にかかわる豊富な現場体験をもとに、理論と現実の相違点を実証的にわかりやすく分析する。単なる教科書的な理論の紹介ではなく、深く現実政治の動向を見据えながら、ダイナミックに国際事象に切り込んでいく。