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科目名言語哲学
担当者阿部 一哉
開講期2026年度秋学期
科目区分週間授業
履修開始年次3年
単位数2単位
授業の方法講義
授業形態対面(全回対面)
オンライン60単位制限対象科目
全回対面
授業の到達目標この授業では、私たちが普段使用している言語とは、いったいどのようなものなのか、という問題について、理解を深めることを目標としまします。

言語について理解を深めるために、「言語哲学」という学問分野で大きくまとめられる、一連の「考え方」が提案されてきました。

学期の終わりには、言語をめぐる諸問題について、言語哲学的な考えに基づき、自分の言葉を使って説明ができるようになることを目指します。
今年度の授業内容各授業とも、言語に関する素朴な疑問から出発して、その疑問に答えるにはどのように考えるのか議論を展開させる形で、進めていきます。
準備学修(予習・復習等)の具体的な内容及びそれに必要な時間について事前に配布される資料(ポータル等で配布予定)やノートを使って講義内容を毎回復習してください。具体的には、講義で登場した概念や理論を正確に理解し、説明できるようにしてください。 1回平均約190分
自習に関する一般的な指示事項講義時に参考文献を紹介するので、興味を持ったものを手にとって読んでみてください。
授業の特徴(アクティブラーニング)リアクションペーパー/レポート/グループワーク
第1回言語哲学とは何か
言語哲学は言語学と同様言語についての考察を加える学問分野です。
言語哲学と言語学の違いにも言及します。
言語に関する問題をいくつか紹介し、この問題が言語学で取り扱う問題なのか、それとも言語哲学で取り扱う問題なのか考えてみましょう。
<次回の授業までに考えておいてもらいたいこと>
言語における「意味」とは一体何なのでしょうか?
第2回意味と指示1
意味に関する理論の一つである、意味の指示対象説について考えていきます。
「富士山」と言ったら新幹線から見えるあの山のことですが、意味の指示対象説とは「言葉の意味はその言葉が指し示す対象のことである」という考え方のことです。
この意味の指示対象説の抱える問題点についても考えてみましょう。
<次回の授業までに考えておいてもらいたいこと>
「エヴェレスト山」と「チョモランマ」は同じ山を指していますが、これらの名前の意味は同じですか?異なっていますか?
第3回意味と指示2
具体的に対象を指し示す表現のことを単称名といいますが、ドイツの哲学者・論理学者・数学者であるゴットロープ・フレーゲは、単称名の意味は指示対象では尽くされない、同じ指示対象を持ちながら異なる単称名が異なっている場合、それらの単称名は対象を指し示す様式がことなっている、として意味とならんで「意義」という概念の導入を提案しました。一回聞いただけではよく分からないこの提案についてじっくり考えてみましょう。また語の意味だけでなく、文の意味はどうなっているのかについて考えてみます。
<次回の授業までに考えておいてもらいたいこと>
「現在のフランスの国王は禿げている」という文は正しい内容を述べていますか?「現在のフランスの国王は禿げていない」という文はどうですか?
第4回バートランド・ラッセルによる記述の理論
イギリスの哲学者・論理学者・数学者であるラッセルは、「現在のフランスの国王」のように特定の対象を指し示すような表現(指示表現といいます)の意味を扱うために、記述説という意味についての理論を提案しました。この回の授業では、このラッセルの記述理論について説明し、その問題点についても言及します。
<次回の授業までに考えておいてもらいたいこと>
「シャーロック・ホームズ」「ユニコーン」などの架空の人物や動物つけられた固有名は、現実の世界には指示対象をもちませんが、このような固有名の意味はどのように考えればよいのでしょうか?
第5回固有名の問題1(固有名の意味についての記述説・記述の束説)
ラッセルの記述理論は、固有名の意味について考える際にも、非常に強力な理論となります。この回の授業では、単純な記述説の抱える問題点と、その問題を克服するために提案された「記述の束説」について見てゆきます。
<次回の授業までに考えておいてもらいたいこと>
「徳川家康が、関ケ原の合戦で負けていたら、その後の日本の歴史は大きく変わっていただろう」という「反実仮想」を含む文は、記述説・記述の束説に従うなら決定的な矛盾を抱えることになってしまいます。このような反実仮想を含む文は、記述(の束)説にとって、どのような問題をはらんでいるといえるのでしょうか?
第6回固有名の問題2(固有名に関する因果説)
「徳川家康が、関ケ原の合戦で負けていたら、その後の日本の歴史は大きく変わっていただろう」という「反実仮想」を含む文が、記述説・記述の束説では説明できない矛盾を抱えている、という問題を克服するためにアメリカの哲学者・論理学者のソール・クリプキは固有名の意味は、その名前が指示する対象以外にありえず、その名前が特定の対象を指示するという事実は、その名前が対象に与えられた命名儀式に由来すると考えることしかできない、という「描像」を提案しています。ちなみに「描像」というのは、理論にまでは至らない、考え方という意味で用いられています。今回の授業ではこの「描像」、である「指示の因果説」について紹介するとともに、その問題点について考えます。さらに、クリプキは固有名の記述(の束)説を正確に位置づけることによって、伝統的な哲学で混同されがちであったアプリオリ性と必然性を明確に区別しました。この主張について見るために、クリプキによる「仮想世界意味論」という考え方を紹介します。
<次回の授業までに考えておいてもらいたいこと>
「この部屋の気温は19度です」という文の真偽を確かめるにはどうすればいいですか?また「砂糖は水にとける」「澄んだ水の中にも目に見えない微生物がいる」という文の真偽についてはどうやって確かめられますか?


第7回意味についての検証主義
19世紀末にウィーンで始まった論理実証主義運動を背景に、「文はその真偽が検証可能であるときにかぎって有意味である」という意味の検証理論が提唱されます。この回の授業では、意味の検証理論の抱える問題について見ていきながら、言葉の意味により常に真になる分析的な文と呼ばれる、論理学・言語哲学において非常に重要視されてきた種類の文についても紹介します。
<次回の授業までに考えておいてもらいたいこと>
意味と呼べるようなものが本当にあると言えるのかどうかについて考えてください。
第8回意味懐疑論と翻訳の不確定性
意味の同義性を確認することから、意味の存在を確かめようとしたクワインの企てを紹介し、彼が結局意味の存在は非常に疑わしいという考えに至った考察の道筋について見ます。そして、意味が存在しないとしたら、正確な翻訳マニュアルを確定することも難しい、という翻訳の不確定性という主張について見ていきます。
<次回の授業までに考えておいてもらいたいこと>
言語と文化はどのような関係にあると思いますか?
第9回サピア=ウォーフの仮説
サピア=ウォーフの仮説とは、「ある言語を母語とする人の認識・思考はその言語によって影響される」という説です。この回の授業ではこの主張を言語哲学的な観点から検証していきます。その過程で、カントの認識論にも言及します。
<次回の授業までに考えておいてもらいたいこと>
「明日10時に茗荷谷駅の改札前で会いましょう。」という文を使う場合と、「マリアは10時に茗荷谷駅の改札前に来た。」という文を使う場合で、話者はそれぞれどのような事をしようと意図していますか?より踏み込んで言うならば「約束してる」のはどちらの文で、「事実を述べている」のはどちらの文ですか?
第10回プラグマティクス(言語の使用)
人は言語を使用することで、なんらかの行為を遂行しているという言語行為論という理論があります。このように言語使用に目を向けて、言語の働きを考察しようとする語用論(プラグマティックス)と呼ばれる研究分野があります。この回の授業では、従来の言語学では周辺的な現象として片付けられてきた言語使用について、じっくり見て行きます。その過程で、「語の意味とはその語の使用のことである」というヴィトゲンシュタインの主張も紹介します。
<次回の授業までに考えておいてもらいたいこと>
私達はしばしば「自分の感じている心の痛みは自分以外のだれにも分からない」という気持ちになることがあります。少なくとも私はあります。実際、この「心の痛み」は本当に本人以外の誰にも分からないものなのでしょうか
第11回私的言語論
私達はしばしば「自分の感じている心の痛みは自分以外のだれにも分からない」という気持ちになることがあります。少なくとも私はあります。実際、この「心の痛み」は本当に本人以外の誰にも分からないものなのでしょうか、という問題について検討を行うことを通して、オーストリア出身の哲学者ヴィトゲンシュタインの「私的言語論」の紹介を行います。心の問題を、言語の問題として考える、言語哲学的なアプローチは、生きるためのヒントを与えてくれる、ということもあるかもしれません。(無責任)
<次回の授業までに考えておいてもらいたいこと>
突き詰めると言語とは一体何なのでしょうか?また言語は一体どこにあるのでしょうか?意味は存在するのか、という問いかけにも似ていますが、今一度言語実在について考えてみましょう
第12回言語についての知識の本性
私達人間は誕生してから4~5歳までの数年間という、比較的短期間の間に、言語を習得し、生きるために必要なコミュニケーション取れる水準にまで達します。このことは、ひょっとしたら言語を使いこなす能力を、我々人間は先天的に獲得しているろいうことを示唆しているのかもしれません。この回の授業では、言語の知識の本性を、我々人間に遺伝的に備わっている、言語を使いこなす能力であるとする、アメリカの言語学者ノーム・チョムスキーの仮説を紹介しながら、言語についての知識の本性について考えます。
<次回の授業までに考えておいてもらいたいこと>
この回の授業の内容を踏まえて、みなさんは改めて言語とは一体どのような存在だと思いますか?
第13回言語の体系的研究の可能性
これまで授業で扱ってきた内容を踏まえて、言語についての体系的研究が可能なのかという問題について考察していきます。その際、ヴィトゲンシュタインによる「言語ゲーム」という考え方についても見ていきます。
<次回の授業までに考えておいてもらいたいこと>
この授業では、期末の課題として言語哲学に関するエッセイをまとめてもらいます。エッセイというのは、レポートのような体裁を必ずしも取る必要はなく、雑感をまとめたもので構いませんよ、という意味合いです。で、その際、みなさんでしたらどのようなテーマでエッセイを書きたいと思いますか?エッセイのテーマを考えておいてください。
第14回授業のまとめにかえて
前回授業で課した<次回の授業までに考えておいてもらいたいこと>を見ながら、(1)言語哲学の授業の内容を振り返りつつ、(2)エッセイを書くためのヒントを得ます。みんなでワイワイガヤガヤ授業のまとめをしていきましょう。また、授業アンケートに取り組んでいたs抱きながら、言語哲学そのものと、言語哲学の入門授業のあるべき姿についても考察していただきたいと思います。
授業の運営方法
  • 毎回授業の、最初の30分ぐらいは、リアクションと授業課題のフィードバックを行いながら、前回授業の振り返りと、当回授業のウォーミングアップを行います。
  • 出席は、授業開始30分後あたりに、ポータルのクリッカー機能を使って行います。
  • その後スライドと板書を使った講義形式で授業を進めます。その際、私の方から質問を行って、ランダムに当てた方にその質問に答えていただくというマイクを使った問答が発生する可能性があります。ぜひ積極的にご協力下さい。
  • 途中5~10分の休憩を入れます。授業に熱が入りすぎて、休憩を取りそこねる可能性がありますので、「おかしいな」と思ったら勇気を持って、でも気兼ねなく「休憩取らないのですか?」と指摘してください。
  • 最後の10分間をリアクション入力にあてます。リアクションはポータルの課題提出機能を使って行ってもらいます。
課題試験やレポート等に対するフィードバックの方法授業内に課される小課題について、次回授業時に簡単なフィードバックを行います。
評価の種類 割合(%) 評価方法・評価基準
定期試験 0% 実施しません。
小論文・レポート 50% 期末レポートによって評価します。
授業参加 50% リアクションと課題への取り組みによって評価します。
テキスト 授業資料を配布します。
参考文献
  • 授業時に適宜紹介していきます。
その他、履修生への注意事項 特に予備知識は必要ありませんが、上記参考文献や言語哲学・分析哲学に関する文献に目を通しておくと理解が深まると思います。
卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連 カリキュラムマップ【文学部 人文学科】
カリキュラムマップ【文学部 現代文化表現学科】
カリキュラムマップ【文学部 コミュニケーション文化学科】