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科目名家族療法論
担当者田中 究
開講期2024年度秋学期
科目区分週間授業
履修開始年次3年
単位数2単位
授業の方法講義
授業題目家族療法の理論と実際
授業の達成目標家族療法からナラティヴ・セラピーに至る研究と実践から提出された基礎的な知見や用語を理解し、その変遷を説明できること。特に、相互作用からの人間理解、因果関係の循環、家族療法における意味の扱い、ナラティヴ・セラピー実践におけるストーリー概念の含意、セラピストの自己観察と共進化、コミュニケーション・パターンからの現象理解、コラボレイティヴな関係の構築、家族療法の理論的背景の8点について理解し説明できること。
今年度の授業内容第1回イントロダクションでは本科目の概要を説明する。第2回から第6回では、家族研究を概観した後、家族療法を構成する主要な流派や概念について解説する。第7回は、家族療法を下支えしてきた理論について説明する。第8回から第11回はナラティヴ・セラピー等「近年の家族療法」を取り上げ、意味の生成を重視する実践について解説する。第12回から第13回は家族心理教育、オートポイエーシスを扱うことで家族療法についての厚みのある理解を目指す。全体を通じてできるだけ事例や逐語録など実際のコミュニケーション場面に言及しながら進めていく予定。第14回はまとめを行う。
準備学修予習・復習等の具体的な内容及びそれに必要な時間について予習については次回の授業範囲となる教科書のページ、配布資料を熟読し、論点を整理しておくこと(2 時間)。復習については、ノート、教材を振り返り、授業内容の理解を深めること(2 時間)。 合計60時間
自習に関する一般的な指示事項各回ごとに予習復習の指示をするので、それに従って学習を行うこと。また、講義内で紹介する資料・文献を用いて積極的に家族療法の理解に努めること。
第1回イントロダクション
1.方法論としての家族療法
2.考え方としての家族療法
3.システムのひろがり
4.ナラティヴ/意味システムへの展開
第2回家族療法前史から家族研究へ
1.家族研究以前の流れ
2.関係性への着目から家族研究へ
3.ジェノグラムとストーリー化

第3回ダブルバインド概念及びフレーム
1.ベイトソンらのコミュニケーション研究
2.クラスとメンバーの差異
3.コンテンツとコンテクスト
4.フレーム

第4回パターン
1.MRIの方法
2.MRIによるコミュニケーションの暫定的公理
3.コミュニケーション・パターンの「観察」
4.家族ホメオスタシス
5.観察者を含めたパターン
第5回家族構造〜ジョイニング
1.家族構造とは
2.事例に見る構造派家族療法
3.ジョイニング
4.再構造化
5.仮説検証プロセス
6.システムにセラピストは含まれるか


第6回ミラノ派の方法及び支援システム概念
1.ミラノ派のシステミック・アプローチ
2.to be → show
3.戦略的立場からの肯定的意味づけ
4.円環性、中立性、仮説設定
5.支援システム概念
第7回家族療法の理論的背景
1.家族療法と理論
2.サイバネティクス
3.家族をシステム論とサイバネティクスの視点
4.家族システムと支援システム、ネガティヴ・フィードバックとポジティヴ・フィードバック、構成主義
5.フェミニズム、家族会の影響
第8回ナラティヴ・セラピーへの展開
1.家族療法とナラティヴ・セラピー
2.マイケル・ホワイトの書き換え療法
3.ディスコースとドミナント・ストーリー
4.その他の手法
5.テクスト・アナロジー
第9回リフレクティング・チーム/プロセス
1.リフレクティング・チーム
2.リフレクティング・プロセスの効果
3.セカンドオーダー・サイバネティクスへの移行が意味するもの
4.リフレクティングの形式性について
第10回解決志向ブリーフセラピー
1.解決志向ブリーフセラピー
2.未来志向
3.面接の流れ
4.例外を探す質問
5.その他の質問
6.セラピストークライアント関係の査定
7.解決志向と解決強制
第11回コラボレイティヴ・アプローチ

1.ポスト構造主義的セラピーの特色

2.社会構成主義

3.コラボレイティヴ・アプローチ

4.ラースの事例

5.問題を組織化し、問題を解決せずに解消するシステム


第12回家族心理教育
1.家族心理教育における転換
2.実践形式
3.EE
4.ひきこもりの家族心理教育実践
5.家族「が」治療する
第13回オートポイエーシス
1.システム論の復習
2.マトゥラーナらによるオートポイエーシス・システムの基本発想
3.オートポイエーシスによる社会システムの構想
4.心理臨床実践への適用
第14回まとめ
1.コラボレイティヴな家族療法
2.家族療法の連続性
授業の運営方法講義を中心として進める。
課題試験やレポート等に対するフィードバックの方法授業内で解説を行う。
評価の種類 割合(%) 評価方法・評価基準
定期試験 100%
テキスト 田中究著『心理支援のための臨床コラボレーション入門ーシステムズアプローチ、ナラティヴ・セラピー、ブリーフセラピーの基礎』(遠見書房)
参考文献 ・赤津玲子、田中究、木場律志編『みんなのシステム論』(日本評論社)
・日本家族研究・家族療法学会編『家族療法テキストブック』(金剛出版)
・シーナ・マクナミー、ケネス・ガーゲン編『ナラティヴ・セラピーー社会構成主義の実践』(遠見書房)
・ウンベルト・マトゥラーナ、フランシスコ・ヴァレラ著『知恵の樹—生きている世界はどのようにして生まれるのか』(ちくま学芸文庫)

他は講義中に適宜紹介する。
その他、履修生への注意事項 初回時に講義概要と注意事項を伝えるので、受講希望者は必ず出席すること。出席のカウントはスマホ出席で行う。
卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連 カリキュラムマップ【心理学部 臨床心理学科】
実務経験の概要 公認心理師、臨床心理士
実務経験と授業科目との関連性 心理臨床実践の経験及び研究をつうじて講義を行う。