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科目名健康教育概論
担当者鈴木 眞理
開講期2024年度秋学期
科目区分週間授業
履修開始年次1年
単位数2単位
授業の方法講義
授業題目健康教育概論
授業の達成目標健康教育は健康の維持・増進、疾病の予防・治療、安全教育、性感染症予防教育のために、エビデンスに基づいた行動変容をいかに起こさせるかという心理学の一分野である。本授業の目標は、1)健康行動モデルを説明できる、2)健康教育の方法と手順を説明できる、3)健康教育で扱われる課題について説明することができる、である。
今年度の授業内容健康教育の歴史、健康行動モデル、健康教育の方法と手順を概説して、家庭・学校・職場・医療・福祉現場などいろいろな現場での健康教育の必要性と内容を解説する。さらに、メタボリック症候群に関連する肥満や運動不足、喫煙、飲酒、薬物乱用、性感染症、ストレスマネジメント、健康日本21など行政事業や被災地での健康教育の実際の内容を解説する。
準備学修予習・復習等の具体的な内容及びそれに必要な時間について1)使用するスライドのPDFを授業前にポータルの授業資料管理に掲載するので、予習して疑問点を整理しておくこと。
2)授業の理解度を把握するために、適時、クリッカー管理で質問を提出して、次の授業でフィードバックを行う。
3)Q&Aで質問することができる。
合計60時間
自習に関する一般的な指示事項日頃から健康教育に関する情報に関心を持って過ごす。
第1回健康教育の歴史、ヘルスプロモーション、健康心理カウンセリング:
健康教育の歴史とキーワードであるヘルスプロモーションについて概説する。
健康教育に有効な技法である健康心理カウンセリング(動機付け面接法、認知行動療法、交流分析など)を紹介する。
第2回健康行動のモデル、行動リスク要因:
健康行動の目的別種類を知る。
健康行動理論を学ぶ。KAPモデル、健康信念(ヘルスビリーフ)モデル(Health Belief Model: HBM)、計画的行動理論 (Theory of Planned behavior: TPB)、統合的行動モデル (Integrated Behavioral Model: IBM)、
トランスセオレティカルモデル (ステージ理論)  (Transtheoretical Model: TTM)、社会的学習理論を概説する。特に、健康信念モデルは乳がん検診の基礎となったモデルである。講義内では、乳がんの乳房模型に触れて、
乳がんについて知識を深める。

第3回ヘルスリテラシーと、健康教育の方法と手順:
オタワ憲章、健康格差を生み出す社会的決定要因を知る。
健康格差を生みだす一つの要因であるヘルスリテラシーについて学ぶ。聖路加国際大学ヘルスリテラシー学習支援プロジェクトによるe-ラーニングDVDを視聴する。質問紙で自分のインターネットリテラシーを評価する。
インターネットヘルスリテラシーの例として、体重に関する健康情報を整理する。標準体重とは何か、シンデレラ体重の問題点、ルッキズムなどを概説する。
討論、ロールプレイや体験型教育、ソーシャルメディアなどの方法と企画・実施・評価、ヘルスプロモーション、プリシード・プロシードモデルなどの手順を学ぶ。
第4回健康教育の実際1) メタボリックシンドロームにおける食事や運動の保健指導:
日本の肥満の実態、沖縄県の26ショックを概説する。
なぜ、内臓肥満が悪いのかを説明し、生活習慣病における食事や運動の保健指導を説明する。
低炭水化物ダイエットの有用性と弊害を解説する。
第5回健康教育の実際2)タバコの健康教育:
タバコの歴史を知る。
日本の喫煙率の推移、たばこ税、健康増進法について知る。
タバコに含まれる有害物質と健康被害を概説する。
ニコチン中毒について知識を深める。
ブリンクマン指数、禁煙のメリット、禁煙指導や治療方法を概説する。
第6回健康教育の実際3)飲酒の健康教育:
アルコール度数、節度ある飲酒、日本の飲酒ガイドラインの内容と根拠を解説する。
アルコールの作用、代謝、アルコールパッチテスト、健康被害やアルコール関連疾患について学ぶ。
アルコール依存の実態と予防や治療を知る。NHK厚生文化事業団 福祉ビデオシリーズ 依存症からの回復 第1巻 “依存症とは何か”のビデオ視聴する。
未成年や女性における飲酒の有害性について学ぶ。
第7回健康教育の実際4)薬物乱用の健康教育:
違法薬物の種類と作用を概説する。
覚せい剤と大麻取締法違反検挙者数の推移から、最近の若者の大麻問題を知る。
ヘロイン、コカインなどの健康被害を知る。
薬物乱用のきっかけと促進因子、処方薬・市販薬の過量摂取の要因と弊害、依存症における環境の重要性(ラット・パーク実験)を知る。


第8回健康教育の実際5)性感染症:
性感染症の種類と病態を概説する。
それぞれの性感染症の感染経路と予防方法を知る。
最近、患者数が急増している梅毒について、感染経路、症状、治療について学ぶ。
第9回健康教育の実際6)ストレス・マネジメントのための健康教育:
ストレス・マネジメント教育の歴史を知る。
ストレス・マネジメント教育の内容を概説する。
心理・社会的ストレッサー、ストレスの体・心理・行動への影響、代表的な心身症について知る。
偏った認知がストレスを増すことを知り、認知行動療法の概略を学ぶ。
コーピングの種類を解説する。日本語版WCCLコーピングスケールで自身のコーピングの特徴を知る。
深呼吸法、筋弛緩法、マインドフルネスなそリラクセーション法を知る。
ストレス・マネジメントの基礎となるソーシャルスキルの中で、アサーション、アンガーマネジメントを学ぶ。
レジリエンスとその構成要素を知る。

第10回学校での健康教育:
日本の子どもと家族への健康教育の必要性を概説する。
子どもの幸福度調査で「身体は健康なのに不幸な日本の子ども」の実態を知る。
学校教育での健康教育の必要性と内容を紹介する。
いじめ防止プログラムで使用されるビデオを視聴する。
インターネット依存(ゲーム依存)の実態と対策を学ぶ。
いじめ防止対策推進法、学校でのいじめの実態、ネットいじめ、いじめに関する健康教育について知識を持つ。日本学校保健研究会学校精神保健プロジェクト いじめ対策プログラムのビデオを視聴する。


第11回職場での健康教育:
産業保健に関わる法律と健康教育の位置づけを学ぶ。
産業保健スタッフの種類、産業保健活動の内容を学ぶ。
職場のストレス要因、長時間労働と36協定について知る。
「健康経営」の取り組み、プレゼンティーイズムとアブセンティーイズム、健康経営優良法人認定制度を紹介する。
健康経営では女性の健康増進への支援やサービスが注目されており、ITを活用した女性医療サービス「フェムテック」という領域を知る。


第12回医療・福祉場面における健康教育:
医療・福祉現場では健康教育が基本となることを学ぶ。
消毒薬の適応と使い方、処方薬の正しい内服方法、点眼薬、塗布剤、貼付剤など正しい使い方を解説する。
外傷や熱傷の応急処置、止血法を知る。
破傷風や北海道でのエキノコックス症への注意を喚起する。
ワクチンの種類と効果、アレルギー疾患(スギ花粉症、食物アレルギー)の病態と治療方法を知る。

第13回健康教育企画案を考える:
会社の人事課に配属され、女性社員向けの健康教育に関わるという設定で、各自、立案する。
プリシード・プロシードモデルを復習する。




第14回被災地での健康教育行政の健康作り・健康教育の施策:被災地における健康教育 :
被災地での病気の予防(エコノミークラス症候群、誤嚥性肺炎、生活不活発病など)やこころのケアのための健康教育を紹介する。
健康寿命の延伸を目的とした「健康日本21(第三次)」と健康教育を紹介する。


授業の運営方法スライドを用いて授業を行う。授業スライドのPDFは授業資料管理に掲載している。食事や私語は慎むこと、脱水予防のための飲水は許可。出席はスマホ出席システムを利用するので、スマホを持参すること。授業時間内にスマホ出席ができない場合は申し出ること。14回すべての講義に出席するだけで単位取得は可能である。

課題試験やレポート等に対するフィードバックの方法クリッカー管理の質問の正解と解説は次の授業の冒頭でフィードバックを行う。
期末試験の正解と解説はポータルでフィードバックする。
評価の種類 割合(%) 評価方法・評価基準
定期試験 40%
小論文・レポート 0%
授業参加 60% スマホ出席
その他 0%
テキスト 本講義内容を網羅できる著書はないので、指定なし。

参考文献 健康心理学基礎シリーズ ④ 健康教育概論 日本健康心理学会編 実務教育出版
ヘルスリテラシー[健康教育の新しいキーワード]  福田洋・江口泰正編著 大修館書店
関連ページ 日本健康心理学会 http://jahp.wdc-jp.com/health/health1.html
一般社団法人日本健康教育学会 http://nkkg.eiyo.ac.jp/
卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連 カリキュラムマップ【心理学部 臨床心理学科】