科目名 | 現代文化表現学特殊講義(イメージ)A | |
担当者 | 渡邉 大輔 | |
開講期 | 2024年度秋学期 | |
科目区分 | 週間授業 | |
履修開始年次 | 3年 | |
単位数 | 2単位 | |
授業の方法 | 講義 | |
授業題目 | 「スタジオジブリ」を読み直す——国民的アニメに/から見る思想・文化・歴史 | |
授業の達成目標 | 本講義では、アニメーションを中心に、実写映画などの映像文化や映像作品を読み解く基本的な論点と最新の動向を概観し、映像文化や作品分析のための多様な観点を具体的に学びます。それを通じて、学生が各種講義や日常生活において、それ以外のジャンルや作品についても、各自の関心に応じて映像文化や映像作品に関する主体的なリテラシーを身につけることができるようになることを目指しています。 | |
今年度の授業内容 | 2023年7月、宮崎駿監督の10年ぶりとなる新作アニメーション映画『君たちはどう生きるか』が公開され、国内でも88億円を超える大ヒットを記録、世界興収も1億ドルを突破しアカデミー賞にもノミネートされました。その宮崎が率い、1985年に設立されたアニメーションスタジオ「スタジオジブリ」はこの40年近くを通じて、批評的・興行的に稀に見る大きな成功を収め、現代日本を代表する「国民的コンテンツ」となっています。また、そのジブリで数多くの名作・ヒット作を手掛けた宮崎と高畑勲のキャリアには、太平洋戦争、戦後民主主義、高度経済成長、大量消費社会、冷戦崩壊、平成不況…そして東日本大震災、コロナ禍、SDGsまで、20世紀後半から21世紀までの近現代史の軌跡が刻まれています。2020年代のいま、改めてジブリアニメを見直すことで、私たちの時代の文化表現の重要な一側面が浮かび上がってくるでしょう。それと同時に、アニメーションや映像の過去・現在・未来を読み解くにあたっても「ジブリ」は最適な題材となると思います。本講義では、宮崎駿、高畑勲を中心とする「スタジオジブリ」の作品群を題材に、(1)表象文化論(2)メディア論(3)映画史/映像文化史(4)現代思想(5)文化社会学などの方法に準拠し、アニメーションという文化表現に込められた思想・文化・歴史性を具体的・実践的に学びます。 | |
準備学修予習・復習等の具体的な内容及びそれに必要な時間について | 事前にポータルに掲出する当該回の講義資料を熟読し、疑問に思うことをあらかじめ整理しておく。講義終了後は、当日の講義内容も踏まえ、感想・疑問をリアクション・ペーパーとして提出する。また、講義で扱った映像作品や文献で興味を持ったものは、なるべく全編を鑑賞して理解を深めること。 |
合計60時間 |
自習に関する一般的な指示事項 | 授業内で配布するレジュメなどを参考にし、授業で扱ったり紹介したりする関連文献や映像作品などを適宜確認・鑑賞すること。また、日常的にさまざまな映像に触れておくことが望ましいですし、わりと専門的な人文社会科学の言説(哲学・人類学・歴史学・政治思想・メディア論etc.)も紹介すると思うので、映画やアニメ以外に、思想・文化・社会に対する多様な人文的教養への関心があると、より望ましいです。 | |
第1回 | イントロダクション:「スタジオジブリ」とは何か 授業概要・形式・成績評価・スケジュールなどの説明。また、この授業の題材である「スタジオジブリ」や関連情報の概要を解説します。 |
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第2回 | 高畑勲の思想:リアリズム(としての)教育 アニメーション映画監督・高畑勲の監督デビュー作『太陽の王子 ホルスの大冒険』がアニメーション表現にもたらした衝撃をまとめ、以降の作品群に通底するリアリズム論を『赤毛のアン』『おもひでぽろぽろ』『かぐや姫の物語』などを題材に解説します。 |
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第3回 | 宮崎駿の思想:20世紀=唯物史観との対決 アニメーション映画監督・宮崎駿の思想的変遷を辿ります。「廃墟」のモティーフに見られる独特の20世紀観を、柄谷行人『力と交換様式』などを参照しながら『未来少年コナン』『風の谷のナウシカ』などを読み解きます。 |
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第4回 | メディア環境から読み解くジブリの歴史 「メディア」との関わりからジブリの歴史を見ていきます。『アニメージュ』とアニメオタクコミュニティとの関係、70年代の「角川映画」(メディアミックス)との近さ、80年代の「家庭用ビデオ」との関係、『千と千尋の神隠し』の大ヒットの背景にある映画産業の変化(シネコンの登場)、「バルス祭り」とリアルタイム・ウェブの台頭などを扱う予定です。 |
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第5回 | 映画史との関わり:スワッシュバックラー映画としての宮崎アニメ さまざまなジャンルから影響を受けている宮崎アニメのうち、古典的ハリウッド映画からの影響に注目します。「スワッシュバックラーもの」としての要素を、『ルパン三世 カリオストロの城』『天空の城ラピュタ』を中心に見ていきます。 |
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第6回 | 『風の谷のナウシカ』に見る人新世・未来倫理 コロナ禍で再び脚光を浴びた1984年の『風の谷のナウシカ』を題材に、「 SDGs」をめぐって現在話題になっているさまざまなキーワード、「人新世」「未来倫理」「ポストヒューマン」などを解説します。新海誠監督の『天気の子』『すずめの戸締まり』なども触れます。 |
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第7回 | 『千と千尋の神隠し』に見る「顔」と「固有名」 『千と千尋の神隠し』を題材に、エマニュエル・レヴィナスの「顔」の現象学、ソール・A・クリプキの固有名論などを解説します。コロナ禍のマスクや画面オフなど、「顔の見えない」コミュニケーション(カオナシ)の公共性についても考えます。 |
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第8回 | 『となりのトトロ』の思想:「照葉樹林文化論」の影響 『もののけ姫』における照葉樹林文化論の影響について解説します。 |
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第9回 | 『もののけ姫』の思想:「網野中世史学」の影響 『もののけ姫』における網野善彦の歴史学の影響について解説します。 |
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第10回 | 「模型」から見る宮崎アニメ(1) 飛行機好き=航空模型好きな宮崎駿の一面から、『紅の豚』『風立ちぬ』を題材に、現代の「オブジェクト指向の哲学」との関わりや日本独特の「ガジェットの文化史」との関わりを解説します。 |
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第11回 | 「模型」から見る宮崎アニメ(2) 飛行機好き=航空模型好きな宮崎駿の一面から、『紅の豚』『風立ちぬ』を題材に、現代の「オブジェクト指向の哲学」との関わりや日本独特の「ガジェットの文化史」との関わりを解説します。 |
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第12回 | 『コクリコ坂から』と東映動画・徳間書店の戦後 宮崎吾朗監督『ゲド戦記』『コクリコ坂から』などを題材に、ジブリと関わる東映動画・徳間書店の戦後史を見ていきます。 |
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第13回 | スタジオジブリから「満洲」へ スタジオジブリを例に、戦前から戦後に至る日本アニメーション史に隠された「満州」=中国の影を読み解きます。 |
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第14回 | まとめ | |
授業の運営方法 | 講義中心の授業。対面授業の場合は、事前にポータルから講義資料のPDFを配布。それを元に、教室で関連する映像を上映しながら解説をしていきます。毎回、リアクション・ペーパーの提出を課します。 |
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課題試験やレポート等に対するフィードバックの方法 | 毎回のリアクション・ペーパーの質問や感想に対して、有意のものはポータルか次回授業の冒頭で解説・回答・講評を行う。 |
評価の種類 | 割合(%) | 評価方法・評価基準 |
定期試験 | 0% | 実施しない |
小論文・レポート | 70% | 期末レポート |
授業参加 | 30% | 積極的・協力的な授業態度 |
その他 | 0% |
テキスト | 授業時にレジュメ資料を配布。 |
参考文献 | 野村幸一郎『新版 宮崎駿の地平:ナウシカからもののけ姫へ』(新典社、2018年、978-4787968371)1650円、鈴木敏夫『天才の思考:高畑勲と宮崎駿』(文春新書、2019年、978-4166612161)1320円、スーザン・ネイピア『ミヤザキワールド:宮崎駿の闇と光』(早川書房、2019年、978-4152098924)3300円、渡邉大輔『明るい映画、暗い映画:21世紀のスクリーン革命』(blueprint、2021年、978-4909852199)2750円、渡邉大輔『新映画論:ポストシネマ』(ゲンロン、2022年、978-4907188443)3300円、米村みゆき・須川亜紀子編『ジブリ・アニメーションの文化学:高畑勲・宮崎駿の表現を探る』(七月社、2022年、978-4909544285)2420円 その他、多岐にわたる最新の事象を扱うので、授業内で適宜関連文献を紹介していきます。 |
卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連 | カリキュラムマップ【文学部 現代文化表現学科】 |