科目名 | 現代言語表現論 |
担当者 | 林 浩平 |
開講期 | 2024年度秋学期 |
科目区分 | 週間授業 |
履修開始年次 | 3年 |
単位数 | 2単位 |
授業の方法 | 講義 |
授業題目 | 現代言語表現論 |
授業の達成目標 | まず20世紀最大の芸術の革命であるシュルレアリスムの運動について、正確な認識を獲得したうえで、自動書記(オートマティスム)や「無意識の力」の意義を説明できるようにする。さらには、シュルレアリスムの影響を受けた日本のモダニズム文学の運動のなかから、瀧口修造に代表される詩人たちに、言語を物質化しようとする傾向が現れて、戦後には吉岡実のように、言語を肉体化・身体化しようとする志向が見られるようになった言語意識の展開の歴史を把握する。そして現代の吉増剛造においては、詩の表現がただ紙のうえに文字を書くという次元を離れて、朗読パフォーマンスとして音声化されたり、映像表現とエクリチュール(書くこと)が結びついたりするのを確認し、現代の言語表現が前人未到の次元に踏み入ったことを説明できるようにする。さらには、「ゼロ年代詩人」と呼称される若い世代の詩人たちが、デジタル環境のもとで養われた新しい言語センスを認識して、21世紀の現代の社会でどんな力を発揮しているかを説明できるようにする。 |
今年度の授業内容 | 言語は文学の世界を成立させる媒体として古代から近代までその役割を担ってきた。しかし20世紀になって無意識を発見した精神分析学者フロイトの理論に影響されフランスに生まれたシュルレアリスムの芸術運動などを経て、単なる表現の道具としてではなく言語それ自身の可能性を追求する流れが、特に現代詩の領分で顕著になる。【前半】は、昭和初期のいわゆるモダニズム運動の過程で発生した「言語の物質化」の流れを瀧口修造や富永太郎の言語意識に探り、また戦後の前衛芸術運動として生まれた舞踏家・土方巽のダンスに強く感化された詩人吉岡実の言語を「身体化した記号」とした問題や、「全身詩人」とも称される吉増剛造の存在に注目し、言語と映像を同一次元化しようとする実験などに焦点を当てる。詩と舞踏との関連が重要だろう。【後半】は、近年のデジタル環境のもとで産出される言葉を現代詩や短歌・俳句を対象に検証し、若い表現者らによる時代の先端にあっての言語表現の可能性や問題点を考察する。 |
準備学修予習・復習等の具体的な内容及びそれに必要な時間について | 予習は特に必要でないが、授業で学習した内容は教材プリントを再読してポイントをまとめて理解を深めるように。 |
合計60時間 |
自習に関する一般的な指示事項 | 授業で採りあげる現代詩人や歌人・俳人たちの作品を図書館で借り出すなどして、受講生自身も積極的に果敢な言語実験の産物である詩的テクストを読んでみよう。日常の読書の範囲では出会えない、先端的な言語の冒険が果たされたテクストの魅力を知って欲しい。 |
第1回 | オリエンテーション。20世紀における最大の芸術革命であった「シュルレアリスム」について学ぶ。アンドレ・ブルトンを中心に1930年代のフランスに生まれた、美術と詩の分野を中心とするこの芸術革命が果たした大きな意味を概説する。 |
第2回 | 【前半】先端的実験的な言語表現の世界 言語の自覚の歴史(1)瀧口修造〈言語の物質化〉の問題 |
第3回 | (2)富永太郎と丸山薫 |
第4回 | 現代詩の実験(1)吉岡実と舞踏家・土方巽 〈言語と身体性〉の問題 |
第5回 | (2)吉増剛造の世界A 初期詩篇と「二重露光写真」 |
第6回 | (3)吉増剛造B gozoCine 動画映像と詩の言語 |
第7回 | (4)吉増剛造C 「怪物君」=〈書くこと〉と〈描くこと〉+舞踏家・笠井叡とのコラボレーション |
第8回 | (5)吉増剛造D 詩と舞踏言語 笠井叡と麿赤児「ハヤサスラヒメ」 |
第9回 | (6)稲川方人 映画文体と詩(映像と言語) |
第10回 | (7)谷川俊太郎とねじめ正一 『詩のボクシング』 (朗読と詩) |
第11回 | 【後半】デジタル世代の言語感覚をめぐって 「ゼロ年代」の言語表現(1)現代詩・三角みづ紀 他 |
第12回 | (2)現代詩・文月悠光 他 |
第13回 | (3)現代詩・峯澤典子 他 |
第14回 | (4)現代短歌と現代俳句 |
授業の運営方法 | 教材プリントを配布し、それに則って講読を進め解説を加えてゆく。また関連するヴィデオなども鑑賞する。ヴィデオも重要な教材なので、鑑賞後に感想文などの提出を課す。 |
課題試験やレポート等に対するフィードバックの方法 | 感想レポートについては、特徴的な見解や感想を紹介し、さらに補足的な解説を加える。 |