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科目名人文学特殊講義(国際教養)D
担当者笹島 雅彦
開講期2024年度秋学期
科目区分週間授業
履修開始年次3年
単位数2単位
授業の方法講義
授業題目

世界は変わる:ポスト冷戦構造の崩壊













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授業の達成目標

ロシアのウクライナ侵略と中国の台頭により、ポスト冷戦構造が崩壊した現状を認識し、国際秩序のあり方について理解を深める。
米中対立を背景に、日本と中国、朝鮮半島の近現代史と現在の問題点を理解し、説明できるようにする。
そのうえで、ルールに基づく国際秩序を再構築し、強化していくために、日本はどのような外交を進めるべきか、説明できる。
「自由で開かれたインド太平洋」を推進する行動計画はどうあるべきか、自分自身の意見を述べることができるようにする。

今年度の授業内容

世界は、冷戦終結(1989年)後の「ポスト冷戦構造」が2022年、崩壊し、自由主義的な国際秩序は大きく揺らいでいる。
ロシアによるウクライナ侵略開始以降、「民主主義体制」対「権威主義体制」の対立が深まっており、民主主義の後退が懸念されている。
そうした中、中国の習近平指導部は3期目に入り、権力集中が進められ、1強独裁体制が強まっている。こうした専制主義体制の強化は、米国との対立を一層深め、最先端技術をめぐるグローバル・サプライ・チェーンの分断につながっている。米国のバイデン政権は、トランプ前政権と同様、中国の挑戦を深刻に受け止めており、従来の「関与政策」を放棄した。軍事面の「対立関係」、経済・技術面の「競争関係」、気候変動、核不拡散、感染症対策などの「協力関係」という3層ゲームを準備しつつある。これに対し、習近平指導部は「平和共存」を旨とする大国関係の枠組み構築を目指すとしているが、具体策をまだ示していない。「管理された戦略的競争関係」を構築できるかどうかが米中関係の行方を左右する。
一方、日本と中国、韓国の関係はいつもぎくしゃくしており、日本国内には嫌中感情、嫌韓感情が漂っている。日本の対中戦略を明確に定め、外交の機軸を提示する必要がある。日本では、尖閣諸島問題、台湾問題などから、中国に対する脅威感は高まっているが、日中関係の目指す方向性が定まっていない。こうした問題意識の下で、日米中のトライアングル外交を考えていく。

準備学修予習・復習等の具体的な内容及びそれに必要な時間について毎回、指定する範囲内でテキストを熟読、予習すること。新聞の国際ニュースを毎日欠かさず読み、流れをつかむこと。
また、国際ニュースの担当者は、1週間の出来事の中から重要と思われる報道内容をレジュメにまとめて紹介する準備を行う。(1時間)

合計14時間
合計60時間
自習に関する一般的な指示事項

新聞を毎日熟読し、国際ニュースの流れをつかむ。

第1回授業の概要説明と担当振り分け
第2回ウクライナ情勢と台湾情勢:中露疑似同盟の関係性
第3回ポスト冷戦構造の崩壊



第4回民主主義対権威主義


第5回米国の対中関与政策
日中国交正常化以降の日中関係と対中ODA供与
第6回第1次安倍政権以降の日中「戦略的互恵関係」
第7回第2次安倍政権における日中「戦略的互恵関係」
第8回トランプ前政権における対中経済制裁

第9回トランプ政権期における米国の超党派対中認識の変容


第10回バイデン政権における国家安全保障戦略
第11回管理された戦略的競争関係
第12回第20回中国共産党大会と第3期習近平政権
第13回国際秩序形成を巡る競争
グローバル・サウスの取り込み
第14回台湾を巡る米中対立の焦点化
授業の運営方法

毎回の授業冒頭、担当学生が国際関係に関わる新聞報道を報告する。教員がそれに基づく背景説明を行い、当日の授業と関連付ける。講義内容は実証的アプローチを目指しており、学生からの積極的な質問・意見を求める。


課題試験やレポート等に対するフィードバックの方法ウエブ会議システムMicrosoft-teams上、各学生それぞれの「クラスノートブック」欄を用い、毎回の授業終了時に「リアクション・ペーパー」を投稿する。One Note機能をフル活用する。「リアクション・ペーパー」に質問は書かないこと。質問は授業時間内に直接、質問することが原則。「リアクション・ペーパー」には、授業内容のメモや、指示に基づくそれぞれの意見を書きこむこと。教員はそれに対し、赤ペンで講評、添削を行う。レポート提出の場合も同様である。
場合によっては、チームズのチャット機能や、ポータル上の「掲示板」「Q&A」「メール」機能を利用する場合もある。
評価の種類 割合(%) 評価方法・評価基準
定期試験 0%
小論文・レポート 60% 中間、期末レポート
授業参加 40% 積極的な授業参加態度(ニュース報告と質問、意見表明、毎回の授業後コメント)
その他 0%
テキスト 北岡伸一、細谷雄一編「新しい地政学」(東洋経済新報社、2020年)
山内昌之、細谷雄一編「日本近現代史講義」(中公新書、2019年)900円。ISBN978-4-12-102554
参考文献 川上高司・石澤靖治編「トランプ後の世界秩序」(東洋経済新報社、2017年)のうち、笹島雅彦著「第2章日中関係【政治】」
佐橋亮著「米中対立」(中公新書、2021年)ISBN978-4-12-102650-7
細谷雄一「安保論争」(ちくま新書、2016)880円 ISBN978-4-480-06904-7 
森本敏編著「台湾有事のシナリオ」(ミネルヴァ書房、2022年)3500円。ISBN978-4-623-09305-2
木村幹「日韓歴史認識問題とは何か」(ミネルヴァ書房、2014年)2800円。ISBN978-4-623-07175-3
大沼保昭「『歴史認識』とは何か」(中公新書、2015年)840円。ISBN978-4-12-102332-2
波多野澄雄ら「決定版 日中戦争」(新潮新書、2018年)840円。ISBN978-4-10-610788-7
福永文夫「日本占領史1945-1952」(中公新書、2015年)900円。ISBN978-4-12-10296-7
スティーブン・レビツキー、ダニエル・ジブラット「民主主義の死に方」(新潮社、2018年)2500円。ISBN978-4-10-507061-8
ラリー・ダイアモンド「侵食される民主主義」上下(勁草書房、2022年)2900円+2900円。ISBN978-4-326-35183-1

学生の問題意識に合わせ、適宜、助言する。
その他、履修生への注意事項 (成績評価)
 全14回の授業のうち、三分の二以上、つまり10回以上の出席者を成績評価対象とする。
卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連 カリキュラムマップ【文学部 人文学科】
実務経験の概要

35年間に及ぶ新聞記者生活。政治部、国際部などに所属し、北京特派員として中国の暗部を探るなど、ジャーナリズムの最前線で働いてきた。


実務経験と授業科目との関連性


政治、外交、安全保障にかかわる豊富な現場体験をもとに、理論と現実の相違点を実証的にわかりやすく分析する。単なる教科書的な理論の紹介ではなく、深く現実政治の動向を見据えながら、ダイナミックに国際事象に切り込んでいく。