科目名 | 人文学特殊講義(国際教養)A | |
担当者 | 笹島 雅彦 | |
開講期 | 2025年度春学期 | |
科目区分 | 週間授業 | |
履修開始年次 | 3年 | |
単位数 | 2単位 | |
授業の方法 | 講義 | |
授業形態 | 対面(全回対面) | |
オンライン実施回 | — | |
全回対面 | ||
授業題目 | トランプ2.0と日本外交戦略の課題 | |
授業の到達目標 | 主に国際政治を扱う。アメリカのトランプ政権発足とともに、日米同盟をさらに強化していくことができるかどうか、国際秩序の維持に向けて日本の役割はどうあるべきか、具体的な意見を論述できるようにする。明治維新以来、100年間あまりの日本外交を概括し、とくに同盟関係の成果と失敗の歴史を振り返って、簡潔に総括できるようにする。政府が歴史の教訓をどのようにくみ取ってきたか、実証的に分析できるようにする。 | |
今年度の授業内容 | 2025年は戦後80年の節目の年である。アメリカでは第二次トランプ政権が発足した。「アメリカ・ファースト」(米国第一主義)を掲げ、友好国であっても力でねじ伏せようとする。米国自身が主導してきた国際秩序や民主主義を不安定化させることになるのか。不確実性に満ちた時代が再び、幕を開けた。このため、明治維新以来の外交史を振り返り、日本が歴史の教訓として留意すべきポイントを理解しながら、国際秩序維持に向けた日本の立ち位置を考えていく。日本や欧州などの民主主義陣営が結束し、アメリカを国際協調の枠組みにつなぎとめる努力が欠かせない。いずれにおいても、ウクライナ和平問題は最大のテーマとなるだけに、日本がどのような役割を果たせるのか、探っていく。 |
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準備学修(予習・復習等)の具体的な内容及びそれに必要な時間について | 毎回、指定する範囲内でテキストを熟読、予習すること。新聞の国際ニュースを毎日欠かさず読み、流れをつかむこと。 また、国際ニュースの担当者は、1週間の出来事の中から重要と思われる報道内容をレジュメにまとめて紹介する準備を行う。 |
1回平均約190分 |
自習に関する一般的な指示事項 | 新聞を毎日熟読し、国際ニュースの流れをつかむ。 |
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授業の特徴(アクティブラーニング) | リアクションペーパー/レポート/プレゼンテーション/討議(ディスカッション・ディベート) | |
第1回 | 授業の概要説明と担当振り分け 授業の進め方を説明し、国際ニュースの発表など学生側が準備する内容について説明する。 |
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第2回 | ロシアのウクライナ侵略と世界秩序 ロシアは2022年2月、ウクライナに侵攻し、戦闘は長期化している。トランプ大統領は停戦合意に向け、動いているが、その見通しは立っていない。消耗戦が継続したしたままの形である。プーチン大統領が侵略を開始した動機はどこにあるのか、分析を試みる。 |
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第3回 | 第二次トランプ政権の始動1 トランプ政権は第1期政権の時、大国間競争の時代という世界観を示した。中国やロシアとの戦略的競争がアメリカの安全保障における最大の課題となったからである。その大国間競争はこの8年間で一層、激しくなった。ロシアのウクライナ侵略が長期化する中、中国が台湾周辺や南シナ海で、グレーゾーンの限界を試すような力による現状変更を試みている。トランプ政権の対中政策はどう変わるか。 |
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第4回 | 第二次トランプ政権の始動2 大国間競争は、経済安全保障の局面でも激しさを増している。技術と産業における競争である。AI、量子技術、自動化、人口生物学、クリーンテクノロジーなど軍民両用の先端新興技術をいかに守り、育てていくかを巡る競争となりそうだ。技術分野における米中対立の実態を分析する。 |
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第5回 | 明治維新後の日本外交:陸奥宗光の取り組み 陸奥宗光外相は、日清戦争を主導し、徳川幕府が結んだ不平等条約の改正にこぎつけた。陸奥の外交手腕を改めて評価し、日本外交の起点を理解する。 |
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第6回 | 日本の同盟関係 日本はこれまでに3つの同盟を結んできた。日英同盟、日独伊三国軍事同盟、日米同盟である。このうち、2番目は明らかな失敗だった。他の大国と同盟関係を結ぶ意義は何か。日米同盟の機能と役割について、様々な角度から分析する。 |
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第7回 | 戦後日本外交と日米同盟 現代の世界において、日米同盟は非対称な機能を持つ特異な同盟関係である。憲法と日米安保条約の関係性について解読していく。日本で見過ごされてきた核戦略の発展過程を説明し、拡大抑止機能の意味を理解できるようにする。 |
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第8回 | 日本の発展途上国支援 日本の発展途上国に対する支援は、主にアジア太平洋地域の国々を対象に、戦時賠償の一環としてスタートした。日本の復興とともに、政府開発援助(ODA)が主体となり、東南アジア、韓国、中国などへ巨額の融資が行われてきた。その功罪を探り、今後の日中関係のあり方を論ずる。 |
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第9回 | 冷戦後の日本外交の挫折 冷戦終結後、世界は「平和の配当」を求めるなど、平和で明るい未来を展望したが、湾岸危機、湾岸戦争によって、新しい国際秩序を模索する動きが強まった。そうした世界の急変に対応できず、日本外交が挫折していったのが湾岸戦争への対応だった。なぜ、挫折してしまったのか。経済支援だけでは世界から認めてもらえない現実に直面した日本。 |
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第10回 | 日本のPKO協力活動と平和構築 湾岸戦争における外交的敗北を教訓に、日本は国連PKO協力活動に本格的に乗り出した。その法的枠組みは、どのように形成されたのか。憲法との整合性と国際協力の現実の落差を浮き彫りにする。 |
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第11回 | 安倍外交の展開と国家安全保障戦略 7年余りにわたる安倍内閣は、日本外交の刷新をもたらした。東シナ海・南シナ海における声高な海洋主権を主張する中国。その中国を念頭に、日米同盟の強化を図り、内閣安全保障局の設置や国家安全保障戦略の策定、安全保障関連法制の成立など国内態勢の抜本的改革に取り組んだ。日米同盟の機能に及ぼした影響について分析する。 |
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第12回 | 3内閣の戦後歴史談話分析 戦後50年の節目に当たって村山内閣は「村山談話」を発表した。戦後60年には小泉談話、戦後70年には安倍談話がそれぞれ発出された。3内閣の談話の特徴はどこにあるのか。戦後80年を迎えた今年、内閣はどのように取り組んでいくのか。 |
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第13回 | 岸田内閣の国家安全保障戦略改定など安全保障3文書策定 2022年2月のロシアによるウクライナ侵略を見て、岸田内閣は歴史の転換点に立っているという認識を示し、「今日のウクライナは、明日の東アジア」として現状を厳しくとらえた。同年12月には、国家安全保障戦略を改訂するなど、安全保障3文書をまとめた。自衛隊の防衛態勢は、国際環境が厳しさを増す中、抜本的な強化に向けて動き始めている。 |
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第14回 | 第2次トランプ政権における国際秩序と日本の役割 トランプ大統領が予測不可能な新政策を次々と打ち出す中、同盟諸国との関係は揺らいでいる。こうした流れに対し、日本はどう立ち向かっていくのか。自由貿易体制と同盟関係を強化していくため、日本が果たすべき役割はどうあるべきか。最後のまとめとして論じていく。 |
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授業の運営方法 | 毎回の授業冒頭、担当学生が国際紛争に関わる国際ニュースを報告する。教員がそれに基づく背景説明を行い、当日の授業と関連付ける。講義内容は実証的アプローチを目指しており、学生からの積極的な質問・意見を求める。 |
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課題試験やレポート等に対するフィードバックの方法 | ウエブ会議システムMicrosoft-teams上、各学生それぞれの「クラスノートブック」欄を用い、毎回の授業終了時に「リアクション・ペーパー」を投稿する。One Note機能をフル活用する。「リアクション・ペーパー」に質問は書かないこと。質問は授業時間内に直接、質問することが原則。「リアクション・ペーパー」には、授業内容のメモや、指示に基づくそれぞれの意見を書きこむこと。教員はそれに対し、赤ペンで講評、添削を行う。レポート提出の場合も同様である。 場合によっては、チームズのチャット機能や、ポータル上の「掲示板」「Q&A」「メール」機能を利用する場合もある。 |
評価の種類 | 割合(%) | 評価方法・評価基準 |
定期試験 | 0% | 実施しない |
小論文・レポート | 60% | 中間、期末レポート |
授業参加 | 40% | 積極的な授業参加態度(ニュース報告と質問、意見表明、毎回の授業後コメント) |
テキスト | 北岡伸一著「明治維新の意味」(新潮選書、2020年) 山内昌之、細谷雄一編「日本近現代史講義」(中公新書、2019年)900円。ISBN978-4-12-102554 |
参考文献 | 池内恵ら「ウクライナ戦争と世界のゆくえ」(東京大学出版会、2022年)。 アステイオン097ー2022「ウクライナ戦争ー世界の視点から」(CCCメディアハウス、2022) 川上高司・石澤靖治編「トランプ後の世界秩序」(東洋経済新報社、2017年)のうち、笹島雅彦著「第2章日中関係【政治】」 佐橋亮著「米中対立」(中公新書、2021年) 高橋哲哉、山影進編「人間の安全保障」(東京大学出版会)2800円。ISBN978-4-13-003352-7 東大作「人間の安全保障と平和構築」(日本評論社)2600円。ISBN978-4-535-58700-7 上杉勇司、藤重博美編「国際平和協力入門」(ミネルヴァ書房)2800円。ISBN978-4-623-08165-3 篠田英朗「平和構築入門」(ちくま新書)840円。ISBN978-4-480-06741-8 篠田英朗「はじめての憲法」(ちくまプリマ―新書)820円。ISBN978-4-480-68367-0 篠田英朗「集団的自衛権で日本は守られる」1600円。ISBN978-4-569-85341-3 東大作「内戦と和平」(中公新書)880円。ISBN978-4-12-102576-0 細谷雄一「安保論争」(ちくま新書、2016)880円 ISBN978-4-480-06904-7 森本敏編著「台湾有事のシナリオ」(ミネルヴァ書房、2022年)3500円。ISBN978-4-623-09305-2 木村幹「日韓歴史認識問題とは何か」(ミネルヴァ書房、2014年)2800円。ISBN978-4-623-07175-3 大沼保昭「『歴史認識』とは何か」(中公新書、2015年)840円。ISBN978-4-12-102332-2 波多野澄雄ら「決定版 日中戦争」(新潮新書、2018年)840円。ISBN978-4-10-610788-7 福永文夫「日本占領史1945-1952」(中公新書、2015年)900円。ISBN978-4-12-10296-7 麻田雅文「日ソ戦争」(中公新書、2024年)1000円。 学生の問題意識に合わせ、適宜、助言する。 |
その他、履修生への注意事項 | (成績評価) |
卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連 | カリキュラムマップ【文学部 人文学科】 |
実務経験の概要 | 35年間に及ぶ新聞記者生活。政治部、国際部などに所属し、北京特派員として中国の暗部を探るなど、ジャーナリズムの最前線で働いてきた。 |
実務経験と授業科目との関連性 | 政治、外交、安全保障にかかわる豊富な現場体験をもとに、理論と現実の相違点を実証的にわかりやすく分析する。単なる教科書的な理論の紹介ではなく、深く現実政治の動向を見据えながら、ダイナミックに国際事象に切り込んでいく。 |