科目名 | 作家と表現 | |
担当者 | 井上 優 | |
開講期 | 2024年度春学期 | |
科目区分 | 週間授業 | |
履修開始年次 | 3年 | |
単位数 | 2単位 | |
授業の方法 | 講義 | |
授業題目 | 現代日本の作家たちのフィクションの諸相 |
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授業の達成目標 | 現代日本における作家たちは、自らの創作において、どのような表現の試みを行っているのか。どのようなフィクション世界の構築を行っているのか。サイエンス・フィクションなども視野に入れて、現代の作家が書いた長編の文学テクストを文学理論、言語学、哲学、現代思想、サイエンスなどにくぐらせることを通じて、その多様性と重要性を考える。 この授業の最終的な到達目標は以下の通りである。 (1)現代日本の作家たちのテクストの個々について、精緻な解釈を施し、その特質を明確に説明できる。 (2)現在の文化的・社会的状況、過去の歴史や近い将来のこととして予測しうる事柄と照らし合わせつつ、そうしたテクストの持っている可能性や問題を的確に論じることができる。 (3)上記(1)(2)の課題を広く深く分析するために、言語学、文学理論、哲学、現代思想、サイエンスなどの中から必要な知見の基本的事柄を説明することができる。 (4)(3)で理解できた知識を応用して、(1)(2)の課題を理論的かつ論理的に分析し、論じることができる。 (5)従来の文系内での学問領域の区別のみならず、文系理系の学問の線引きにもとらわれることなく、日本の現代の文学や文化に関して各自が新たな問いを設定し、考察することができる。 (6)それらの成果を高度な学術的文章にまとめることができる。 |
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今年度の授業内容 | この授業では、日本の現代作家の長編小説の何篇かを読み解くことを通し、言語、虚構、表現とその自由、権力と内面、格差と家庭、服従と隷属、負債、絶滅、テクノロジー、管理と生命、人と異種など、複雑で多様な現代の問題がいかに取り上げられ、作家やそのテクストがいかなる想像力でそれらとどう向き合い、どのように表現されているのか、その肥沃な試みを探っていきたい。 現代作家の文学を媒介に、文系内の様々な学問領域のみならず、理系の学問をも視野に入れつつ、文理の境界をまたぎ越して、文学や文化と人間とのかかわりを広く深い視野で、理論的に比較分析、考察する能力を養成する。 個々の文学テクストの扱い方として、登場人物の心理やテーマ、作者の特質を素朴に探るというような手法には限定されない。言語学、文学理論、哲学、現代思想、サイエンスなどの学問領域の知見との接触を常に行いながら、テクストの持つ多様性や可能性を理論的かつ論理的に考察していくこととなる。ゆえに、かなり理屈っぽく、高難度の授業内容の連続となる。 そのため、受講生には従来とはかなり異なった頭の使い方、ふるまい方、文学を偏重せず他の多くの学問領域や先端領域に真摯にかつ誠実にかかわる態度が強く求められるので、そうした趣旨、方法が了解できていることが受講にあたっての前提となる。 文学に関することは文学の中でのみ考え処理すればよいとする閉鎖的思考、安直なわかりやすさを期待する姿勢は、この授業とのミスマッチを確実に引き起こし、結果として単位取得の困難に至るので、科目選択や履修登録の際にはくれぐれも注意されたい。 履修登録にあたっては、下記「その他、履修生への注意事項」欄に記載されていることも必ずよく読んで理解してから受講の判断をすること。 |
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準備学修予習・復習等の具体的な内容及びそれに必要な時間について | 半期2単位の講義科目については、合計60時間の自修時間が必須と定められているので、各回の授業につき4時間以上の予習・復習が必要となる。 各回の授業の前は扱うテクストを指示された文庫本で丹念に読み込み、大事だと思われることや関心を抱いたことをメモしておくこと。そのメモに記したことをもとに、授業の際のディスカッションを行えるように準備しておく。 毎回授業の後は、配布されて扱った資料を読み直して復習し、その回の授業内容で最も重要だと考えるキーワードを抽出しておく。 さらに授業で扱った事柄に関連する文献を図書館等で探して必要箇所を読み、期末論文をまとめるためにその内容を記録しておく。 授業中は、これらの自習に基づいて、各自の理解できているところや見解を提示してもらう。それとともに、随時レポートなどの宿題を課し、提出を求めることがある。 また長編小説を扱うので、予習復習にはかなり多くの時間を割く必要がある。 |
合計60時間 |
自習に関する一般的な指示事項 | 各回の授業の前は扱うテクストを丹念に読み込み、大事だと思われることや関心を抱いたことをメモしておくこと。そのメモに記したことをもとに、授業の際のディスカッションを行えるように準備しておく。 毎回授業の後は、配布されて扱った資料を読み直して復習し、その回の授業内容で最も重要だと考えるキーワードを抽出しておく。 さらに授業で扱った事柄に関連する文献を図書館等で探して必要箇所を読み、期末論文をまとめるためにその内容を記録しておく。 授業中は、その自習に基づいて、各自の理解できているところや見解を提示してもらう。それとともに、随時レポートなどの宿題を課し、提出を求めることがある。 長編小説を扱うので、予習復習にはかなり多くの時間を割く必要がある。 |
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第1回 | 心を読むということ | |
第2回 | 長谷敏司『あなたのための物語』とフィクションの機能 | |
第3回 | 有川浩『図書館戦争』 (1)世界観設定について | |
第4回 | 有川浩『図書館戦争』 (2)検閲について | |
第5回 | 有川浩『図書館戦争』 (3)権力と主体 | |
第6回 | 有川浩『図書館戦争』 (4)恋愛と自由 | |
第7回 | 桐野夏生『OUT』 (1)格差と家庭 | |
第8回 | 桐野夏生『OUT』 (2)「社会的服従」と「機械状隷属」 | |
第9回 | 桐野夏生『OUT』 (3)負債について | |
第10回 | 桐野夏生『OUT』 (4)切断と断片化 | |
第11回 | 上田早夕里『華竜の宮』 (1)絶滅について | |
第12回 | 上田早夕里『華竜の宮』 (2)ハイブリッドな存在 | |
第13回 | 上田早夕里『華竜の宮』 (3)管理と生命、人と異種 | |
第14回 | 上田早夕里『華竜の宮』 (4)言葉と声 | |
授業の運営方法 | 教室での対面による講義形式で行う。 上記「授業スケジュール」に挙げておいた作家一人一人についての回数配分や順序は、受講者の学習状況を考慮しつつ、柔軟に変化する可能性がある。 受講生には指示されたテクストを緻密に読み込んできてもらい、各自の解釈や考え方を発表したうえで皆で討論する時間も設ける。 授業は前回までの内容をもとに毎回積み上げるように進んでいくので、遅刻欠席をすると以降の内容が理解できなくなるから注意すること。 |
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課題試験やレポート等に対するフィードバックの方法 | 課題提出の度ごとに、寄せられた回答例をその次の回の授業で紹介し、それについてコメントする。 |
評価の種類 | 割合(%) | 評価方法・評価基準 |
定期試験 | 0% | 実施しない。 |
小論文・レポート | 50% | 授業内容の理解とその応用による研究が達成できているかを判定する4,000字以上の期末論文による。 |
授業参加 | 50% | (1)授業中における課題の達成度。(2)討論への貢献度。(3)予習復習に関する課題の出来。 |
その他 | 0% | 特になし。 |
テキスト | 長谷敏司『あなたのための物語』(ハヤカワ文庫、800円+税、ISBN978ー4ー15-031036-3) 有川浩『図書館戦争 図書館戦争シリーズ1』(角川文庫、667円+税、ISBN978−4−04−389805−3) 桐野夏生『OUT』上(講談社文庫、667円+税、ISBN4−06−273447−8) 桐野夏生『OUT』下(講談社文庫、619円+税、ISBN4−06−273448−6) 上田早夕里『華竜の宮』上(ハヤカワ文庫、740円+税、ISBN978−4−15−031085−1) 上田早夕里『華竜の宮』下(ハヤカワ文庫、740円+税、ISBN978−4−15−031086−8) 上記の6冊を開講時すぐに大学生協で購入して用意しておくこと。 他にプリント資料を配布して使用する。 |
参考文献 | 授業の中でその都度紹介する。 |
その他、履修生への注意事項 | 履修登録の前には、以下の注意事項もよく読んで熟慮した上で、受講するかどうかの判断を行ってください。 (1)学術上の振る舞い方については厳しく鍛え上げるうえ、授業内容は文学以外の諸領域の学問にも広く話が及ぶし、高度で複雑な内容にわたるので、受講生には高い論理的思考力、様々な領域の資料を粘り強く読みこなせる読解力が要求される。 時間割の都合やたやすく単位を取ろうとするような安易な姿勢では、開講後短期間のうちに挫折することは必至である。授業は難易度の高い要素を多く含み、毎回かなりハードな作業となる。 (2)この授業の履修選択にあたっては、授業の目的や方法をよく理解し、現時点での自らの学的関心や能力を自省したうえで、授業期間を通じてそうしたことに懸命に努力し、対応可能かどうかを冷静かつ慎重に検討すること。卒業年次にあたっている学生は特に留意すること。 受講生には様々な点で大きな負荷のかかる授業であることを覚悟して臨んでほしい。 また、授業で取り扱うテクストや問題の性質上、ネガティヴで陰惨な話にも触れざるを得ないことがあるので、そうした話題が苦手な人は注意を要する。 (3)授業で扱う小説は長編が続くので、授業前の長時間の読書と自習が不可欠となるが、そうしたことが習慣化されておらず、テクストを読まずに参加することが許されるかのように勘違いしている学生は確実に不合格になるので、最低限でも日々の読書が習慣化されている学生でないと期末論文の提出まで持ちこたえられない。 (4)各回の授業では発言や討論が要求され、そうしたことに積極的に貢献することではじめて平常点評価の対象となるので、ただ着席しているだけではまったく評価に値しない。 よって、欠席や遅刻を繰り返さないように、また自学自習を着実に行って参加するように、授業期間中は自己管理をしっかりして臨むこと。 (5)出欠確認時および課題提出時の不正行為、指示されたテクストや資料を読んでこなかったり持参していない者、私語や居眠りなどをした者、学習活動として許可されたこと以外でスマートフォンを使用した者、その他周囲の受講者の学習に悪影響をおよぼすような迷惑行為を行った者については、指導によっても学習意欲や態度の改善が認められない場合、その時点で不合格となる。 (6)成績評価においては、期末論文を提出期限内に提出しなかった者については、成績再評価の対象者とならず、履修放棄者として不合格となる。 期末論文と平常点とともに厳格に対応し、細かくふるいにかけるので、甘い点数は一切付けない。この程度やっておけば単位くらいはもらえるだろうというような発想は全く通用しないということを、あらかじめ肝に銘じておいてもらいたい。 (7)開講後第1回目の授業で、今後の受講にあたっての大切な注意事項等を説明するので、その回を正当な理由なく遅刻欠席しないこと。 また、出席する意志が全くないにもかかわらず履修登録をすることはしないように。 熱心で知的好奇心にあふれ、学術に誠実に向き合う学生の受講を期待する。 |
卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連 | カリキュラムマップ【文学部 人文学科】 |