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科目名テキスト分析論
担当者宮村 真紀
開講期2025年度春学期
科目区分週間授業
履修開始年次3年
単位数2単位
授業の方法講義
授業形態対面(全回対面)
オンライン実施回
全回対面
授業題目近現代文学を購読し、作者の背景・作品の時代背景を知りつつ、文学作品の構造を分析する
授業の到達目標作品の背景・時代状況への理解を深めつつ、文学テクストの構造や作品の内容を理解し読み取るレッスンを行っていく。

本授業では以下の4点を到達目標とする。
(1)文学作品の購読を通して、文学作品の構造を分析し、作品の精密な読解を行うスキルを身につける
(2)作者の背景・作品の時代背景を学習し、作品を幅広い視野から解釈するスキルを身につける
(3)文学作品を購読する上で、文学理論や物語の制作技法について理解を深める
(4)先行研究でどのように作品が批評されてきたかということを知り、より多角的な視点から作品を理解するスキルを身につける
今年度の授業内容本授業では、堀辰雄「美しい村」太宰治「斜陽」、そしてその前の段階で5つの短編小説を取り上げ、作者の生涯・作品のモデルを学習することで、作品内容への理解、そして作品がどのように生成されていったかに関する理解を深めていく。
堀辰雄「美しい村」は、堀辰雄と軽井沢という場所の結びつきにも言及しつつ、語りの位相の問題・作品舞台の問題を主に考察していく。
太宰治「斜陽」は、戦後まもなくの華族の没落の問題、復員の問題などの作品の背景となる時代状況への理解を深め、物語の構造・展開の意味を分析していく。
また、間テクスト性・物語論・受容理論等の話を行いながら、文学テクストを分析していくとはどのようなことかについて学習し、テクスト分析・テクスト精読のレッスンを行う。
準備学修(予習・復習等)の具体的な内容及びそれに必要な時間について堀辰雄「美しい村」と太宰治「斜陽」は、授業前に通読をお願いします。
また、事前配布されたプリントは、授業前に目を通して下さい。
授業の後は、配布されたプリントや講義ノートを見直し、授業内容を自分でまとめ、より知りたいと考えた点や疑問点を整理してみて下さい。
毎回リアクションペーパーを提出していただき、コメントを記して次回の授業で返却をします。返却されたリアクションペーパーをよく読み返して、作品に関する自分の考えを深めて下さい。
1回平均約190分
自習に関する一般的な指示事項授業の進行に従い、堀辰雄「美しい村」太宰治「斜陽」を繰り返し読んでみて下さい。何度も読むことによって、前には気づかなかった作品の新たな側面が見えてきます。
また、堀辰雄や太宰治の他の作品も読み、作者や授業で取り上げるテキストに対して理解を深めて下さい。
授業で取り上げた短編も読み返し、読解を深めて下さい。
授業の特徴(アクティブラーニング)リアクションペーパー/レポート
第1回第1回 オリエンテーション(授業の流れについての説明、文学テクストを読むとはどのようなことか、テクスト論・作品論・作家論の違い、文学を読むことの意義について講義)
第2回第2回 短編購読(1)(夢野久作「瓶詰の地獄」 手紙から構成されるテクストを通して、テクスト内の情報をもとに、〝手紙が書かれた順番〟や登場人物の背景を考察する)
第3回第3回 短編購読(2)(田山花袋「少女病」 作品が書かれた時代背景への理解を深めることで、〝不適切〟な言動を行う主人公の描写と時代との関わりを考察する)
第4回第4回 短編購読(3)(太宰治「葉桜と魔笛」 亡き妹を回想する老婦人の語りから次第に明らかになっていく情報を読み取っていく)
第5回第5回 短編購読(4)(川端康成「禽獣」 現在と過去の回想が入り組んだテクストを購読することで、筋の流れを緻密に理解する)
第6回第6回 短編購読(5)(森鷗外「普請中」 二人の人物の再会の物語を通して、作中において明記されていないことを読みとり、作者森鷗外や当時の時代背景から、テクスト内の描写にどのような意味があるかを考察する)
第7回第7回 堀辰雄「美しい村」(1) (堀辰雄の生涯と作品のモデル・時代背景・先行研究について理解を深める。手紙・小説・手記が組み合わさった「美しい村」というテクストの構造について概観する)
第8回第8回 堀辰雄「美しい村」(2) (テクストの購読を行いながら、物語の舞台のモデルとなった軽井沢という場所の歴史、堀辰雄作品の中で舞台となった土地について理解を深める)
第9回第9回 堀辰雄「美しい村」(3) (テクストの購読を行いながら、手紙・小説(作品の中の作品)・手記から構成された「美しい村」というテクストの構成の意味を考える)
第10回第10回 堀辰雄「美しい村」(4)(購読を行いながら、テクスト内に描かれる〝失恋と新たな愛〟の描写の根底にはどのようなテーマがあるかを考察しつつ、「美しい村」の中でコンスタン「アドルフ」、ラディゲ「ドルジェル伯爵の舞踏会」、ラファイエット「クレーヴの奥方」等の海外文学が言及される意味を考える)
第11回第11回 太宰治「斜陽」(1)(太宰治の生涯と「斜陽」の時代背景について、作品の舞台のモデルとなった大雄山荘について、先行研究について理解を深める)
第12回第12回 太宰治「斜陽」(2)(テクストの購読を行いながら、華族の歴史、戦後の華族の環境の変化、復員者について理解を深める。戦中戦後の華族を取り扱った武田泰淳「貴族の階段」、久生十蘭「だいこん」についても言及を行う)
第13回第13回 太宰治「斜陽」(3)(テクストの購読を行いながら、家族・家の物語として「斜陽」をとらえる。家が滅んでいく時に主人公が目指し始めた「革命」とは何か、作中で言及されるチェーホフ「桜の園」(「斜陽」と同じく没落貴族の物語)との共通点と相違点について考察する)
第14回第14回 太宰治「斜陽」(4)(テクストの購読を行いながら、テクストの中で描かれる母子関係、姉弟関係、恋愛関係がそれぞれどのように関連し合い、テクストを構成しているかということについて考察する)
授業の運営方法授業では教員が文学作品を購読するポイント・理論・時代や作家の背景について講義を行いつつ、毎回作品購読の中で考察したこと・考えたことを、教員の出すテーマにそってリアクションペーパーに記入し、提出していただきます。
教員の講義をもとに、リアクションペーパー記入によって積極的に考察を深める授業運営を行っていきます。
第6回までの短編小説購読の後に、授業で取り上げた短編小説に関する小レポートを提出、堀辰雄「美しい村」と太宰治「斜陽」購読後にこの二作品に関する学期末レポートを提出していただきます。
課題試験やレポート等に対するフィードバックの方法毎回提出していただくリアクションペーパーを、次回の授業時にコメントを記入して返却をいたします。
次回の授業の冒頭で、いくつかの解答を紹介し、それに伴い、補足の講義を行います。
評価の種類 割合(%) 評価方法・評価基準
定期試験 0% 実施しない
小論文・レポート 40% 学期末レポート
授業参加 40% 毎回のリアクションペーパー提出。提出率、積極的な受動態度によって参加度を評価します。
その他 20% 中間レポート
評価内容(評価方法、評価基準4) 中間レポート
テキスト 堀辰雄「風立ちぬ・美しい村」(新潮文庫)
太宰治「斜陽」(角川文庫)
他、題材とする短編小説のテキスト・時代背景や物語の舞台等について、毎回プリントを配布します。
参考文献 十川信介「近代日本文学案内」(岩波文庫別冊19)
他、授業でご案内をします。
その他、履修生への注意事項 受講に際してはマナーを守り、積極的な態度で臨むよう心がけて下さい。
卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連 カリキュラムマップ【文学部 人文学科】