科目名 | 人文学研究入門K | |
担当者 | 笹島 雅彦 | |
開講期 | 2025年度春学期 | |
科目区分 | 週間授業 | |
履修開始年次 | 2年 | |
単位数 | 2単位 | |
授業の方法 | 講義 | |
授業形態 | 対面(全回対面) | |
オンライン実施回 | — | |
全回対面 | ||
授業題目 | 国際政治のあゆみ | |
授業の到達目標 | 世界について知っておきたい基本知識を理解し、世界を読み解く力を身につける。17世紀以降の国際関係史の流れをつかみ、主権国家の登場から近代国家の確立、勢力均衡論などについて、理解し、説明できるようになる。膨大な国際ニュースの中から、必要な情報を巧みに選り分けられるよう、分析力を養っていく。独自の研究テーマの立て方や資料の収集方法など基礎的な研究能力の獲得を目指す。 | |
今年度の授業内容 | 日ごろは馴染みにくい国際ニュースを紹介しながら、その背景を説明していく。また、講読テキストを輪読し、基本的な世界の近代史、つまり17世紀以降の国際関係史を読み解きながら、各地域の情勢について理解を深めていく。グローバル時代のさまざまな課題についても触れていく。 今日の国際政治に関わる諸問題は一朝一夕に生み出されたものではない。国際政治の理論は、歴史的な事実に基づいて築き上げられている。国と国との外交関係、グローバルな問題を扱う国際組織や地域共同体も、試行錯誤を繰り返してきた人類の歴史の中で生み出されてきたものである。今日の国際政治を見つめていくために、まずはその歴史を学んでいく必要があろう。この学びによって、先行研究の把握、独自の研究テーマの立て方、資料の収集法、資料の分析法、論文作成などに関する基礎的な研究能力の獲得を目指す。 |
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準備学修(予習・復習等)の具体的な内容及びそれに必要な時間について | 指定された文献、テキストを熟読し、発表担当者はレジュメにまとめておく。また、国際ニュースの担当者は、1週間の出来事の中から重要と思われるニュース報道をレジュメにまとめて紹介する準備を行う。 | 1回平均約190分 |
自習に関する一般的な指示事項 | 新聞記事をよく読む。特に、国際ニュースを重点的に読む。 | |
授業の特徴(アクティブラーニング) | リアクションペーパー/レポート/プレゼンテーション/討議(ディスカッション・ディベート) | |
第1回 | 授業の概要説明と担当振り分け 授業の進め方について基本的な説明を行う。国際ニュースの調べ方からリアクションペーパー、課題レポートの提出方法、発表予定者の割り振りを行う。 |
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第2回 | 混乱に満ちた世界秩序 導入部として、現代の世界情勢を概観する。世界で活躍する様々な人物を取り上げ、国際社会で役立つ人材を目指す動機づけを図っていく。 |
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第3回 | ペロポネソス戦争 国際政治には、時代を超えて変わっていない側面がある。約2500年前の古代ギリシャ時代にツキュディディスは、スパルタとアテネとの間のペロポネソス戦争を描いたが、その様子は1947年以降のアラブ=イスラエル戦争と恐ろしいほど似通っている。変化とともに継続性を理解する。 |
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第4回 | 主権国家の誕生 歴史上、世界政治には3つの形態が存在してきた。帝国システム、封建システム、無政府的国際システムである。今日の私たちにとっての「国家」とは主権国家を意味している。その主権国家が人類の歴史に初めて登場したのが、近代ヨーロッパにおいてであった。 |
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第5回 | 30年戦争とウエストファリア体制 キリスト教世界でカソリック対プロテスタントの争いが発端となった30年戦争は、最後の宗教戦争であると同時に、近代国家同士の最初の戦争であるともいわれる。その結果、ウエストファリア講和条約が結ばれ、領土的主権国家体制が確立したのである。 |
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第6回 | 長い18世紀と近代国家の確立 17世紀末から19世紀初頭にかけて、スペイン王位継承戦争、七年戦争など断続的な戦争の時代が続いた。この時代を「長い18世紀」とも呼ぶ。この時代の特徴は、勢力均衡の登場である。 |
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第7回 | フランス革命・ナポレオン戦争とウィーン体制の確立 フランス革命を巡る戦争とその後のナポレオン戦争が終結したのち、関わったすべての国がオーストリア帝国の首都、ウィーンに集まった。このウィーン会議を先導したのは、敗戦国フランスを含めた五大国であった。この会議は、国際協調体制の礎となり、半世紀以上にわたって平和を維持するきっかけとなった。 |
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第8回 | ビスマルク体制と第一次世界大戦勃発まで ウィーン体制が崩壊した後のヨーロッパ国際政治は、新生ドイツ帝国の宰相・ビスマルクの巧みな外交術によって一定の平和が保たれていく時代に入った。ところが、若きウイルヘルム2世はビスマルクを辞任させ、ビスマルクの築いた欧州列強との同盟関係を解消していく。これによって、フランスは孤立から脱し、ロシアとの同盟を結び、均衡が崩れていく。 |
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第9回 | 第一次世界大戦とベルサイユ体制 第一次世界大戦は、2000万人近くの死者を出した総力戦、消耗戦である。この戦争はヨーロッパの3つの帝国を滅ぼした。ドイツ、オーストリア=ハンガリー、ロシアである。これまで勢力均衡の中心はヨーロッパだったが、この先、アメリカと日本が主要なプレーヤーとして登場する。 |
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第10回 | 戦間期ー危機の20年 戦間期は、イギリスの外交官、E・H・カーによって「危機の20年」と呼ばれる。リベラル派のウッドロー・ウイルソン大統領は、勢力均衡論を排除し、国際連盟の創設を提唱した。しかし、米国自身は参加せず、国際問題にうまく対応できず、集団安全保障に関する世界で最初の試みは、みじめな失敗に終わったのである。 |
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第11回 | 集団安全保障体制の挫折と第二次世界大戦 国際連盟が機能不全のまま、世界に全体主義の影響が広まり、1939年9月、ヒトラーのナチス・ドイツがポーランドに侵攻した。戦車と航空機を駆使して短期間で相手の本拠地を叩く「電撃戦」を生み出した。独ソ不可侵条約の取り決めに基づき、それがポーランドの東半分に乗り込んできた。英仏はドイツに宣戦布告し、第二次世界大戦が勃発した。この戦争の原因は何だったのか。国際システムの面から解剖していく。 |
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第12回 | 冷戦 これは単純に言えば熱戦の反対語だが、平和は不可能であるのに、戦争も起こりえない状態、と言えるだろう。冷戦期にも朝鮮戦争やベトナム戦争など地域戦争や代理戦争が戦われてきた。にもかかわらず、第3次世界大戦につながるような米ソの直接的衝突や核戦争は回避されてきた。このため、冷戦を「長い平和」として評価する向きもある。 |
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第13回 | 冷戦後の紛争と協調 冷戦の終焉は、国際政治の平和と安定、公正をもたらすものではないことがほどなく明らかになる。2001年9月の同時多発テロ事件をきっかけに米国は「対テロ戦争」に乗り出していく。経済のグローバル化に伴い、地球環境、核不拡散、公衆衛生の面で国際協調の動きが進む一方、内戦やテロ活動、海賊行為が頻発する地域もあり、紛争は広がっている。 |
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第14回 | まとめ:ポスト・ポスト冷戦時代の到来 第二次世界大戦後に成立した「リベラルな国際秩序」は現在、大きく揺らいでいる。権威主義体制を取る中国やロシアは、国際法のルールを無視するなど現状変更を目指しているように見える。アメリカの相対的パワーが低下し、従来のリーダーシップを発揮しにくくなっている。自民族中心主義的で、排他的なナショナリズムも秩序の足を引っ張っている。競争と協調を組み合わせた新たな外交関係を確立できるだろうか。 |
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授業の運営方法 | 授業の冒頭、担当者が1週間の国際ニュースの中から最重要事項を報告する。参加者はそれぞれの質問や意見を述べて、討論に参加する。講読では、輪読対象のテキストのレジュメの発表者が口火を切り、議論を進める。そのうえで、各学生が関心のあるテーマについて、調査を行い、独自の視点から発表する。調査方法は事前の授業時間内に助言する。その後、全員で討論・質疑応答を行う。 | |
課題試験やレポート等に対するフィードバックの方法 | ウエブ会議システムMicrosoft-teams上、各学生それぞれの「クラスノートブック」欄を用い、毎回の授業終了時に「リアクション・ペーパー」を投稿する。One Note機能をフル活用する。「リアクション・ペーパー」に質問は書かないこと。質問は授業時間内に直接、質問することが原則。「リアクション・ペーパー」には、授業内容のメモや、指示に基づくそれぞれの意見を書きこむこと。教員はそれに対し、赤ペンで講評、添削を行う。レポート提出の場合も同様である。 場合によっては、チームズのチャット機能や、ポータル上の「掲示板」「Q&A」「メール」機能を利用する場合もある。 |
評価の種類 | 割合(%) | 評価方法・評価基準 |
定期試験 | 0% | 実施しない |
小論文・レポート | 60% | 中間、期末レポート |
授業参加 | 40% | 積極的な授業参加態度(ニュース報告と質問、意見表明、毎回の授業後コメント) |
テキスト | リチャード・ハース著「The World 世界のしくみ」(日本経済新聞出版、2021年)2420円、ISBN978-4-532-1771-6 |
参考文献 | ジョセフ・ナイ著「国際紛争ー理論と歴史(原書第10版)」(有斐閣)2500円。ISBN978-4-641-14917-5 佐橋亮著「米中対立」(中公新書、2021年)940円、ISBN978-4-12-102650-7 細谷雄一著「国際秩序」(中公新書、2012年)880円、ISBN97-4-12-102190-8 トゥキュディデス著「戦史」(中公クラシックス、2020年)1800円、ISBN978-4-12-160144-5 |
その他、履修生への注意事項 | (成績評価) 全14回の授業のうち、三分の二以上、つまり10回以上の出席者を成績評価対象とする。 |
卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連 | カリキュラムマップ【文学部 人文学科】 |
実務経験の概要 | 35年間に及ぶ新聞記者生活。政治部、国際部などに所属し、北京特派員として中国の暗部を探るなど、ジャーナリズムの最前線で働いてきた。 |
実務経験と授業科目との関連性 | 政治、外交、安全保障にかかわる豊富な現場体験をもとに、理論と現実の相違点を実証的にわかりやすく分析する。単なる教科書的な理論の紹介ではなく、深く現実政治の動向を見据えながら、ダイナミックに国際事象に切り込んでいく。 |