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科目名言語哲学
担当者高谷 遼平
開講期2023年度秋学期
科目区分週間授業
履修開始年次3年
単位数2単位
授業の方法講義
授業題目言語哲学入門――日々のことばについて考える――
授業の達成目標言語は私たちにとって最も身近なものの一つであり、古くから哲学の最重要テーマの一つです。言語の意味とはなんなのか、なぜ私たちは言語を使ってさまざまなことがらを伝達しうるのか、そもそも言語とはどのようなものなのかなどの問いは、それらが非常に基礎的であるがゆえに哲学者の関心事でした。
 今年度は、「日常的な場面でのことば」をテーマに講義します。これまでの言語哲学では、言語やコミュニケーションをある種理想的な対象・行為として扱ってきました。言い換えれば、私たちは日々「ちゃんとした」ことばを使用しているという前提のもとで言語の研究を行ってきました。しかし、私たちが実際に使用していることばは、学校で教えられるような、もしくはかしこまった場で求められるような小綺麗で教科書的なものばかりではありません。私たちは、ときには嘘をついて聞き手をだましたり、ときにはデタラメなことを言ったり、また、ときにはひどいことを言って誰かを傷つけることもあるのです。このようなことは褒められることではないかもしれませんが、非常にありふれた言語使用でしょう(たとえ自覚的でなかっとしても)。しかし、たとえば嘘をつくこととは実際にはどのようなことなのか、私たちの実感に反してあまり判然としません。嘘をつくこととは、単に正しいことを言わないことなのでしょうか?間違っていることを言っていても、嘘をついてはいないこともあるのでしょうか?この授業では、嘘をつくことや悪い言語表現を使用すること、言葉によって人を傷つけることなど、あるいみで非常に身近なことばにまつわる問題を、言語哲学の手法を使って理解し、説明できるようになることを目指します。


今年度の授業内容言語哲学の観点から、日常のことばにまつわる問題を日本語や英語の具体例をもとに講義します。前半では、導入的な観点から言語(特に言語の意味)に関する言語哲学の伝統的な見解を確認します。また、会話やコミュニケーションとはどのようなものだと捉えられてきたのかについても概説を行います。それらを踏まえたうえで後半では、適宜理論的な補足を行いながらさまざまな言語現象ーー嘘や悪口、言語的抑圧などーーについて考えていきます。言語哲学のみならず言語学を始めとした近接分野の研究も参考にしながら講義する予定です。
 哲学者が言語という厄介な相手とどのように格闘してきたのか、そしてこれまでどのようなアプローチが提案されてきたのかについて標準的な議論を正確に理解することはもちろん大事です。ただしそれ以上に、普段何気なく使用している、しかし何気なく使用できてしまっているがゆえに日々私たちを悩ませている「ことば」について、おそらく皆さんにとってあまり馴染みの無い言語哲学という学問をヒントにしながら真剣に考えてもらいたいと思います。
準備学修 予習・復習等の具体的な内容及びそれに必要な時間について事前に配布される資料(ポータル等で配布予定)やノートを使って講義内容を毎回復習してください。具体的には、講義で登場した概念や理論を正確に理解し、説明できるようにしてください。 合計60時間
自習に関する一般的な指示事項講義時に参考文献を紹介するので、興味を持ったものを手にとって読んでみてください。
 第1回ガイダンス:言語哲学とは?
 第2回理想的な会話と意味1:字義通りの意味
 第3回理想的な会話と意味2:真理条件的内容と共通基盤
 第4回理想的な会話と意味3:前提をもつことば
 第5回理想的な会話と言語の意味4:言外の意味
 第6回嘘をつくこと1:本当のことを言ってないだけ?
 第7回嘘をつくこと2:嘘とミスリード
 第8回でたらめを言うこと:真偽は関係ない?
 第9回悪口を言うこと:なぜ悪口は悪いのか
 第10回悪い言語表現:蔑称・差別語
 第11回総称文:「政治家は嘘つきだ」ってどんな意味?
 第12回言語行為:ことばによってなしうること
 第13回まとめ
授業の運営方法スライドを使った講義形式で行います。

遠隔授業になった場合は、非リアルタイムオンラインで講義を行う予定です。詳しくは下記「その他、受講生への注意事項」を御覧ください。
課題 試験やレポート等に対するフィードバックの方法授業内に課される小課題について、次回授業時に簡単なフィードバックを行います。
評価の種類 割合(%) 評価方法・評価基準
定期試験 0% 実施しません。
小論文・レポート 70% 期末レポートによって評価します。
授業参加 30% 授業内小課題(コメントシートのようなもの)によって評価します。
テキスト 授業資料を配布します。
参考文献
  • 和泉悠『悪い言語哲学入門』(筑摩書房、2022年)
  • H. カペレン・J. ディーバー(葛谷潤・杉本英太・仲宗根勝仁・中根杏樹・藤川直也訳)『バッド・ランゲージ』:悪い言葉の哲学入門』(勁草書房、2022年)
  • W. G. ライカン(荒磯敏文・川口由紀子・鈴木生郎・峯島宏次訳)『言語哲学――入門から中級まで』(勁草書房、2005年)
  • 八木沢敬『はじめての言語哲学』(岩波書店、2020年)
  • 青山拓央『分析哲学講義』(筑摩書房、2012年)

その他の参考文献は授業時に適宜紹介します。
その他、履修生への注意事項 特に予備知識は必要ありませんが、上記参考文献や言語哲学・分析哲学に関する文献に目を通しておくと理解が深まると思います。

★資料配布等について
遠隔/対面に関わらず講義スライドの配布や課題の提示・回収はMicrosoft Teams(及びForms)上で行う予定です。秋学期開始頃に履修登録者にはポータル上でTeamsのクラスコードをお知らせするので、初回授業日までに登録しておくようにしてください。

★遠隔授業について
遠隔授業になった場合、以下のように授業を行う予定です。遠隔と対面のハイブリッドになった場合も以下に準じますが、形式の詳細については改めてポータル上で履修登録者にお伝えします。

【基本的な形式】
  • 講義資料、講義動画、課題を授業日に配信
  • 課題の提出をもって出席とみなします
  • 課題は、ある程度理解度を問うものや感想など(それほど時間のかかるものではありません)
【使用ツール】
Microsoft Teamsを基本として、その他の連携アプリ(StreamやForms)を使用する予定。ただし、場合によってはポータルなど使うかもしれません。
卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連 カリキュラムマップ【文学部 人文学科】
カリキュラムマップ【文学部 現代文化表現学科】
カリキュラムマップ【文学部 コミュニケーション文化学科】