科目名 | 政治学 | |
担当者 | 高橋 善隆 | |
開講期 | 2024年度秋学期 | |
科目区分 | 週間授業 | |
履修開始年次 | 1年 | |
単位数 | 2単位 | |
授業の方法 | 講義 | |
授業題目 | 現代政治理論とアメリカ政治の社会的内実 オバマ大統領が誕生し カマラ・ハリスが現職の副大統領を務め ハーバード大学の学長が2023年7月からアフリカ系の女性となるなど 米国社会は変容をとげている。 しかしその一方で ポピュリズムの台頭、ホワイトバックラッシュ 黒人差別に対するブラック・ライブズ・マター運動など 社会を揺り動かす潮流も分岐している。 米国社会の内実を政治学の側面から多様に分析する。 |
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授業の達成目標 | 米国や欧州で「権威主義的ポピュリズム」が台頭し、中国・ロシアなど専制主義と呼ばれる大国が存在感を増している。 ポーランドやハンガリー、フィリピンなどかつて民主主義が制度化された国々でその内実が揺らぎ始め、 民主主義国が減少に転じているという傾向が指摘されている。 こうした「リベラル・デモクラシーの危機」と呼ばれる状況のもとで 民主主義とは何か、ポピュリズムとは何か、その社会的内実を理解する。 また統治レジーム・政党システム・選挙制度の比較を通じて 二大政党制のもとでの多数決型民主主義と 欧州におけるコンセンサス型民主主義の違いを学習する。 |
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今年度の授業内容 | 2020年の米国大統領選挙や2021年日本における衆議院選挙などを題材にしながら 大統領制と議院内閣制の違い、選挙の具体的プロセスと選挙結果の背景について検討する。 戦後アメリカ政治の史的展開を紹介しながら、 ニューディール政策と米国労働運動の展開、 公民権運動とベトナム反戦の若者たち、 ヒスパニック系移民とアメリカ社会の変容、 中西部の「取り残された労働者たち」と権威主義的ポピュリズム などの社会的内実を講義する。 |
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準備学修予習・復習等の具体的な内容及びそれに必要な時間について | あらかじめ送信されたレジュメについて 基本書や参考文献で論点整理しておくこと。 |
合計60時間 |
自習に関する一般的な指示事項 | 時事問題に関心を持ち、政治をテーマとするニュースについて 情報収集すること。 |
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第1回 | ガイダンス ・デビッド・イーストンによる定義「価値の権威的配分」とは何か. ・方法論的個人主義とは何か、またどのような限界があるのか. ・政治学の対象 ・規範 ①功利主義、②リバタリアン、③リベラリズム、④コミュニタリアン. ・闘争 権力とは何か. ・統治 紛争の調停と秩序形成、公共善の実現. ・決定 選挙・予算・政策決定の具体的プロセス |
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第2回 | 統治レジームとしての大統領制と議院内閣制 ・米国の政治制度 ・大統領選の具体的プロセス ・大統領制と議院内閣制の違い ・議院内閣制でありながら英国と日本はどこが違うのか. ・日本の55年体制で政権交代がなかったのはなぜか. |
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第3回 | デモクラシーとは何か ・デモクラシーの定義とは何か. ・トゥクビル『アメリカのデモクラシー』にはどのような意義があるのか. ・「人民の人民による人民のための政治」の社会的内実. ・競争的エリート・モデルとは何か. ・行動論科学の世論調査分析は何を明らかにしたのか. ・参加民主主義による競争的エリートモデルの批判. ・ロバート・ダールのポリアーキーとは何か. |
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第4回 | グローバリゼーションと現代デモクラシー ・多数決型民主主義とコンセンサス型民主主義の違いとは何か. ・グローバリゼーションとは何か. ・グローバリゼーションにはどのような問題点があるのか. ・グローバル・ガバナンスの可能性. |
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第5回 | アメリカ政治学のパラダイム ・科学的認識をめぐる論争 ・「価値自由」「理念型」とは何か. ・政策決定をめぐるアリソン・モデル ・多元主義をめぐる古典的な論争 ・行動論科学と新制度論の違いとは何か. |
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第6回 | 公民権運動とアメリカ社会の内実 ・1954年 アル・ウォレン最高裁長官が裁定した「ブラウン判決」とは何か. ・キング牧師の生涯. ・1964年 公民権法の内容について. ・ブラック・ライブズ・マターとは何か. |
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第7回 | アメリカ労働運動とヒスパニック系移民 ・労働政治をめぐるアメリカの現状についての比較 中西部:「取り残された白人労働者たち」 南部:「労働権法とは何か」 西海岸:「ソーシャル・ムーブメント・ユニオニズムとは何か」 ・アメリカ史にみる労働問題 メーデーの起源となったヘイ・マーケット事件とは何か. ニューディール期のワグナー法は米国政治にどのような影響を与えたか. AFL-CIOの合同とその問題点 |
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第8回 | 政党と官僚制 ・政党とは何か. ・現代における政党の機能とは何か. ・サルトーリの政党システム論とは何か. ・二大政党制と穏健な多党制はどちらがデモクラシーにとって望ましいか. ・政党政治と官僚制 日本における「官僚制優位論」と「条件付き政党優位(日本型多元主義)」の論争 |
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第9回 | 共有地の悲劇の悲劇としての地球環境問題 ・エレノア・オストロムの「共有資源管理のためのデザイン・プリンシプル」とは何か. ・ギャレッド・ハーディンの「共有地の悲劇」とは何か. ・京都議定書とパリ協定の相違点 |
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第10回 | 福祉レジーム研究の類型 ・社会経済視角(ウィレンスキー、カットライト) ・パワーリソース理論(ウォルター・コルピ) ・福祉レジームの3類型(エスピン・アンデルセン) |
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第11回 | 歴史的制度論の福祉レジーム研究 ・ポール・ピアソンの「福祉をめぐる新たな政治」とは何か. ・アメリカに公的医療保険としての皆保険制度が存在しないのはなぜか. ・クリントンが皆保険改革で挫折し、 福祉削減と財政再建で選挙に勝利したのはなぜか. |
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第12回 | 「ひとつのアメリカ」とオバマ政権の内実 ・バラク・オバマの経歴 ・「ひとつのアメリカ」演説 ・クリントンが医療保険改革に失敗し オバマが成功したのはなぜか. ・アフォーダブル・アクトの社会的内実 |
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第13回 | 権威主義的ポピュリズムとデモクラシー ・ポピュリズムとは何か. 指導者が直接、大衆に訴えかける政治、 それとも人民が既成政治やエリートを批判する運動. ・ポピュリズムとデモクラシー デモクラシーの発展を促すのか、それとも脅威か. ・権威主義的ポピュリズムを分析する研究. ジャスティン・ゲスト『新たなマイノリティの誕生』(2019) ピッパ・ノリス&ロナルド・イングルハート『カルチュラル・バックラッシュ』(2019) |
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第14回 | 補論:現代日本政治を分析する視点 ・日本における55年体制の特徴と問題点 ・細川非自民連立政権の意義 ・村山自社連立政権と社会党の凋落 ・民主党政権の功罪 ・長期化した安倍政権の問題点 ・日本における労働政治の停滞と野党の問題点 |
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授業の運営方法 | ビデオを補助教材としながら講義を行う. | |
課題試験やレポート等に対するフィードバックの方法 | 毎回、授業内容についてのコメントと「キーワード」をQ&Aに送信してもらう。 送信が6割に満たない場合は不可とする。 |
評価の種類 | 割合(%) | 評価方法・評価基準 |
定期試験 | 80% | 筆記試験 |
授業参加 | 20% | 授業へのコメントを送信してもらう. |
テキスト | 『政治学の第一歩』(新版)砂原庸介・稗田健志ほか.有斐閣(2020). |
参考文献 | 『政治学』久米郁男、古城佳子ほか.有斐閣(改訂版2011). 『アメリカ政治講義』西山隆行.ちくま新書.(2018) 『ブラック・ライブズ・マター』アンジェラ・デイビスほか. 『アメリカ政治史』久保文明 有斐閣 2018. |
関連ページ | 日本政治学会ホームページ http:/www.jpsa-web.org |
その他、履修生への注意事項 | 対面授業を行う。 |
卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連 | カリキュラムマップ【全学共通科目】 |