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科目名国際関係論
担当者高橋 善隆
開講期2024年度春学期
科目区分週間授業
履修開始年次1年
単位数2単位
授業の方法講義
授業題目グローバル・プロブレマティークと国際政治理論
授業の達成目標国際政治をめぐる3つの理論モデルについて基本的考え方を説明できるようにする。
1945年から2016年に至る国際政治史の全体像を解説できるようにする。
パリ協定の具体的内容、難民人権レジームの変容などの事例を時事問題に即して学習する。

今年度はウクライナ危機の背景を理解するため
冷戦期の国際関係についても詳細に検討する。
今年度の授業内容リアリズム・リベラリズム・構成主義の基本的考え方を学習したうえで
各々の分析枠組が対象とする
安全保障、政治経済、グローバル・プロブレマティークについて
個別の課題を検討してゆく.
準備学修予習・復習等の具体的な内容及びそれに必要な時間について事前に配布したレジュメの論点について
基本書であらかじめ予習しておくこと.
合計60時間
自習に関する一般的な指示事項国際関係に関連したメディア情報(特に新聞記事)を収集すること.
第1回ガイダンス

私たちを取り巻く国際社会は、安全保障や政治経済秩序・グローバルエコノミーなどの争点のみならず
地球環境問題や難民人権レジーム、パンデミック対策の国際連携など多岐にわたっている。
こうしたグローバル・プロブレマティークの論点について問題の所在とその解決策を検討する。
第2回リアリズム

ウェストファリア体制を源流とする主権国家の取り結ぶ国際関係はリアリズムと呼ばれ
安全保障や戦争と平和を論ずる際の基本的枠組みとなっている。
国際社会の本質はアナーキーであり、
国家は国益や自己の生存をかけて
規範や正義ではなく力関係の合理的計算により行動してゆく。
勢力均衡政策を通じた秩序形成がそのモデルとなる。
ハンス・モーゲンソー、ケネス・ウォルツ、ロバート・ギルピンなどの論者を紹介し
その基本的考え方を習得する。

第3回冷戦終結後の安全保障

冷戦の起源としては、チャーチル「鉄のカーテン」演説、トルーマンドクトリン、マーシャル・プラン、ジョージケナン「X論文」などを指摘できる。
朝鮮戦争・キューバ危機・ベトナム戦争などの展開を経て、
ゴルバチョフの新思考外交や、オーバーストレッチ論、
欧州におけるヘルシンキプロセスや東方外交の信頼醸成により
冷戦は終結を迎えることになる。
冷戦終結後のロシアの混乱や米ロ関係の変容について論じてゆく。



第4回アメリカのユニ・ラテラリズム

冷戦終結後の世界は「歴史の終焉」「文明の衝突」などの概念で表現されてきたが
アメリカは世界人口の4・2%に過ぎないにもかかわらず
世界のGDPの22%を占め、軍事費の35%を占めるなど優位に立ち
国際社会のルールを形骸化させ「ユニ・ラテラリズム」に陥ってしまった。
京都議定書からの離脱やイラク戦争に象徴される米国外交の問題点を指摘する。

第5回多極化する世界と紛争

BRICSの台頭などで、世界経済に占める先進国G7のシェアは2000年の65%から2016年には47%に低下している。
また2020年には中国がGDP14兆ドルで世界二位の経済大国となり、インドも2兆8000憶ドルで世界五位の大国となるなど
世界のパワーバランスは多極化し変容を遂げている。
Gゼロと呼ばれる新たな国際社会について検討を試みる。


第6回リベラリズム

リベラリズムの基本的考え方は国際社会のプレイヤーが協調行動をとることで
実力行使によらない紛争解決の可能性が高まることになる。
国際機関や制度の役割、地域統合による秩序形成、
経済の相互依存などが重要な論点となる。
第7回グローバリゼーションの光と影

グローバリゼーションは
「財・サービス・資本・技術・人・情報」の国境を越えた自由な移動に加えて、
「グローバル・スタンダードへの一元化」と定義することができる。
各国はより豊かになれる、より機会を得られるという可能性から
グローバリゼーションを推進するが
負の側面としては格差社会の進行が問題となる。
「ミラノビッチの象」などを紹介しその問題点を検討する。
第8回欧州統合の拡大と深化

戦争のないヨーロッパを目指し
独仏伊ベネルクスのインナー6が
28か国まで拡大した歴史的経緯、
その関係性の深まりを概観するとともに
イギリスはなぜEUから離脱したのか、
その社会的内実を検討する。

第9回国際機構論

国際機構による紛争処理や問題解決の可能性が高まれば
主権国家間の緊張や様々なリスクを緩和することが可能になる。
安全保障理事会を中心とする国際連合の基本的枠組みや
IMFの成立過程と様々な問題点、
GATTからWTOへと変容した国際貿易レジームについて概観する。

第10回構成主義

リアリズムやリベラリズムが
いずれも「客観的世界」を重視し、
パワーの分布や利得構造を問題としてきたのに対し、
構成主義(コンストラクティビズム)は行為主体の認知的要素やアイディアを重視する。
主体と構造の相互作用や、国際関係の変化を読み解く理論となっている。
第11回共有地の悲劇としての地球環境問題

グレタ・トゥンベリさんの活躍など
若者世代を中心に地球環境問題への関心は高まりつつある。
エレノア・オストロムの「共有資源管理問題」
などを紹介しながら
短期の個別的利益追求が
中長期的には全体のカタストロフをもたらすという
「集合行為のジレンマ」について検討する。
また京都議定書・パリ協定などの
国際環境レジームについても講義する。


第12回難民・人権レジームの変容

パレスチナ難民の発生、
イスラエルとアラブの4度にわたる中東戦争などの
歴史的経緯を概観し、
近年ではシリア内戦後のISをめぐる難民の大量発生などを検討したうえで、
難民・人権レジームの二度にわたる変容と
緒方貞子さんの登場以後
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が
どのような役割を果たしてきたか
講義する。

第13回資源・エネルギーをめぐる新たな潮流

カーボン・ニュートラルと脱原発をどう両立させるか、
自然エネルギーの電力構成を高めるまでの
過渡期の天然ガス輸入がロシアと欧州の安全保障に影響を与えるなど
資源・エネルギー問題は
倫理的問題というだけでなく
安全保障の舞台でも重要な争点となりつつある。
グローバル・プロブレマティークとしてのエネルギー問題を
国際紛争の具体的事例とともに紹介する。



第14回核兵器禁止条約とその背景

2017年7月に採択され2020年10月24日に批准国・地域が50に到達したことで、
核兵器禁止条約は2021年1月22日に国際条約として発効した。
しかしアメリカ・ロシア・イギリス・フランス・中国などの核保有国や
米国の「核の傘」に依存する日本や韓国は署名すらしていない。
従来の枠組みの問題点や
核抑止の理論を批判的に検討しつつ
グローバル・プロブレマティークとしての
「核のない世界」について講義する。
授業の運営方法ビデオを補助教材としながら講義を行う.
課題試験やレポート等に対するフィードバックの方法毎回、講義内容についてのコメントと「キーワード」を授業後に送信してもらう。
評価の種類 割合(%) 評価方法・評価基準
定期試験 80% 筆記試験
小論文・レポート 0%
授業参加 10%
講義時間内に発言を求めることがあるので
積極的に参加すること.
その他 10% コメントとキーワードを出席として計算する。
テキスト 『国際紛争ー理論と歴史」原書第10版
 ジョセフ・ナイ・ジュニア、デビッド・ウエルチ(2017)有斐閣.

『グローバル社会の国際関係』
 山田高敬、大矢根聡.(2006)有斐閣コンパクト.
参考文献 『冷戦史』
 ロバート・マクマン(青野利彦訳)勁草書房(2018).

『戦後国際関係史:二極化世界から混迷の時代へ』
 モーリス・ヴァイス(細谷雄一訳)慶應義塾大学出版会(2018)

『グローバル化の政治学』藤原帰一編
 早稲田大学出版部2001年.

 文献リストについては授業内で配布する。
関連ページ 外務省ホームページ http:/www.mofa.go.jp/mofaj/
その他、履修生への注意事項 対面授業で行う。


卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連 カリキュラムマップ【全学共通科目】