[戻る]
科目名ヨーロッパ現代史
担当者香坂 直樹
開講期2024年度秋学期
科目区分週間授業
履修開始年次1年
単位数2単位
授業の方法講義
授業題目20世紀初頭から21世紀前半の現在にかけて、ヨーロッパ地域が経験した政治や社会、経済の変化、およびそれらの変化が現在のヨーロッパや世界に及ぼしている影響を理解する。
授業の達成目標19世紀初めから20世紀前半にかけての西ヨーロッパ諸国は、強大な軍事力や経済力、生産力を誇示しつつ、ヨーロッパ以外の世界各地の政治や社会、経済、文化などに対して政府両面で大きな影響力を及ぼした。また、20世紀後半のヨーロッパは米ソ対立の影響を受け東西両陣営への分断も経験した。それらの経験は、「冷戦後」(1990年代~2020年頃)や、さらにその後("冷戦後後"?)の現在のヨーロッパや世界各地の状況や出来事も反映されている。例えば、2022年2月に始まり、現在も続いているロシアによるウクライナ侵攻の背後にもこの地域が経験した歴史が積み重なっている。そのため、現在の世界と私たちが直面している課題を理解するためにも、近現代のヨーロッパの歴史に関する知識が求められるだろう。

以上の問題関心に基づきつつ、「ヨーロッパ現代史」の授業では、20世紀のヨーロッパで発生した様々な政治的・経済的・社会的な出来事や変化とその原因、そして、それらの出来事が現在の世界と私たちに及ぼす影響について、他社に説明できるだけの知識を得ることを達成目標とする。
今年度の授業内容20世紀のヨーロッパは二度の世界大戦に代表されるような破壊や殺戮と、20世紀初めや1960年代、冷戦後のような繁栄と安定の時期との両方を体験した。そして、これらの体験を通じて、ヨーロッパや世界の政治的・経済的・社会的な状況は大きく変化した。以上の点を踏まえつつ、この授業では、20世紀初頭から21世紀前半までのヨーロッパを大きく5つの時期に区分し、それぞれの時期に発生した出来事や変化について説明する。また、それらの出来事や変化が、ヨーロッパ内外の各地域や世界に及ぼした影響について説明する。

また、「20世紀」という時代がヨーロッパや世界全体に対してどのような影響を及ぼし、どのような痕跡を現在に残しているかについても考えたい。
準備学修予習・復習等の具体的な内容及びそれに必要な時間について・授業前日までに授業資料を学修ポータルサイトに掲出するので、受講者は各自で授業資料をダウンロードしたうえで資料に目を通し、授業内容に関する疑問点などをあらかじめ整理しておくこと。また、授業資料で扱われている事例・事件について調べ、一般的な知識を身につけておくこと。(予習60分)
・授業後に授業資料および講義ノートを再読して出来事の流れなどを整理すること。また、授業内で登場したが意味が判らない用語や概念などを調べ理解すること。(復習60分)
合計60時間
自習に関する一般的な指示事項・20世紀のヨーロッパに関する予備知識を得るために、下記の参考文献リストを参考にしつつ、初回授業までに20世紀のヨーロッパないし世界の歴史に関する書籍を少なくとも1冊は読むこと。参考文献リストに挙げた以外の書籍を選んでも構わないが、高校の世界史教科書や受験用参考書、あるいは時事問題の解説本ではなく、教養新書以上の書籍を選び、最初から最後まで読み通すこと。
・授業時間内で登場した用語(様々な制度や理念・概念、事件の名称など)で意味が分からない用語があれば、そのまま放置せず各自で調べること。授業前後での教員への質問や、ポータルサイトの「授業Q&A」機能を通じての質問も歓迎する。
・毎回の授業資料の中で授業内容に関連した基本的な文献を紹介するので、授業の復習あるいは課題(期末レポート)作成に向けた準備として各自で目を通すこと。
第1回イントロダクション『近現代のヨーロッパ史を学ぶ意味』
近年のヨーロッパや世界で起きた出来事を取り上げつつ、21世紀前半の世界に生きる私たちが20世紀のヨーロッパ(と世界)の経験からどのような点を学び取れるのかを確認し、授業の目標を共有する。
第2回第一次世界大戦1『植民地分割と世界戦争の背景』
帝国主義的な列強が行った対外進出の過程、およびヨーロッパ諸国同士の同盟関係の構築過程を整理することで第一次世界大戦が発生した背景を理解する。それと同時に19世紀末から20世紀初めのヨーロッパと世界各地に存在していた支配/被支配の関係、ないし植民地支配の構造が持つ意味を理解する。
第3回第一次世界大戦2『長期戦化・総力戦化が及ぼした影響』
第一次世界大戦の長期化と戦域の拡大、ならびに「総力戦」体制への移行が、交戦国の社会と世界各地に及ぼした根本的な変化と影響を把握する。また、1917年のアメリカ合衆国の参戦やロシア革命、1918年秋の休戦協定の成立前後にヨーロッパ各地で発生した政治的変動・事件が持つ意味を理解する。
第4回両大戦間期1『「パリ講和会議」と「ヴェルサイユ体制」の成立』
第一次世界大戦の休戦成立後にもヨーロッパが様々な課題に直面したことを理解する。それを踏まえ、1919年の「パリ講和会議」を経て、第一次世界大戦後のヨーロッパ諸国で社会と政治の再建に向けた取り組みが始まるとともに、新たな国際的な秩序が登場したことを理解する。
第5回両大戦間期2『1920年代の相対的安定から1930年代の複合的危機へ』
1920年代後半までにヨーロッパと世界に一定の安定が築かれたことを理解する。しかしながら、1920年代末以降の世界恐慌の到来によりその安定も揺らぎ、各国が政治役・経済的・社会的危機に直面したことを把握するとともに、危機の中で議会制民主主義が動揺し、ファシズム・ナチズムが台頭した経緯を把握する。
第6回両大戦間期3/第二次世界大戦1『WWII勃発への経緯と戦況の推移』
1939年秋にはヨーロッパ地域でも第二次世界大戦(WWII)が勃発する。第6回授業では、1930年代に悪化した国際情勢が大戦の再発を導いた経緯を確認する。また、ヨーロッパ地域を中心にWWIIの戦況の推移を確認する。
第7回第二次世界大戦2『人種主義の戦争?』
第二次世界大戦(WWII)は大戦争であったために、居住地域や民族への帰属心、信じる宗教の違いなどを要因として、人々の間での戦争の体験のされ方も大きく異なる複合的・多面的な性格を持つ戦争だった。第7回授業では、WWIIの多面性を見るために、「ホロコースト」を事例にしつつ、社会が抱える人種主義の偏見がどのよう戦争に示され、エスカレートしたかを確認する。
第8回第二次世界大戦3/冷戦期1『戦後秩序の構築と冷戦の始まり』
第二次世界大戦では、各地の前線での戦闘とは別に、各地にどのような社会を築き、どのような国際秩序を構築するかをめぐり、各勢力の間で駆け引きも続いていた。ヨーロッパ各地での抵抗運動の展開や連合国の交渉を通じてその駆け引きを確認し、それらの動きが「冷戦」と呼ばれる第二次世界大戦後の国際秩序の成立を導く経過を把握する。
第9回冷戦期2『冷戦の世界化と高度経済成長』
核兵器の開発競争など、第二次世界大戦後に米ソ間で争われた「冷戦」がWWII後の世界に及ぼした影響を確認する。また、1960年代に西欧の資本主義諸国が経験した「高度経済成長」と、一方での東欧の社会主義諸国における「上からの改革」の試みと挫折、ならびに西欧・東欧それぞれの社会が体験した社会変容とそれらの変化が現在に及ぼす影響を理解する。
第10回冷戦期3『1970年代の世界経済と新自由主義』
1960年代を通じて西欧諸国で継続した「高度経済成長」の時期は1970年代初めに終わりを迎え、低成長の時期が始まる。このことがヨーロッパに与えた影響、そしてそれを受けて1970~80年代に登場した「新自由主義」という政治や経済に関する理念が、当時の世界や21世紀初め現在の社会に及ぼす影響を理解する。
第11回冷戦期4/冷戦後1『1989年の冷戦の終結、「冷戦後」の世界』
1970年代以降にソ連や東欧の社会主義諸国の経済状況は次第に悪化した。このことを一因として、1980年代末に東欧の社会主義政権は崩解し、冷戦期の東西対立も終わる。この背景と過程を紹介する。授業の後半ではヨーロッパ地域での「冷戦」が終了したことの意味と、その後の「冷戦後」と呼ばれる時期の大まかな特質を理解する。
第12回冷戦後2『欧州連合(EU)の成立過程とEUの東方拡大』
第二次世界大戦(WWII)の終結直後に西欧で始まった欧州統合の動きが、21世紀前半現在の「欧州連合」(EU)の成立までに至った背景と経緯、EUの機能が強化される過程、そして1990年代以降の旧社会主義国のEU加盟(東方拡大)が中東欧諸国の民主化に及ぼした意味、およびEUや北大西洋条約機構(NATO)の東方への拡大がその後のヨーロッパ情勢に与えた影響を理解する。
第13回冷戦後3『冷戦後のナショナリズムの再燃?』
「冷戦後」、つまり1990年代以降の世界においては、グローバリゼーションが進展した一方で、世界各地とヨーロッパ諸国でナショナリズムも高揚し、民族紛争も多発するようになったと言われる。具体例として、1990年代に戦われたユーゴスラヴィア紛争を取り上げつつ、この地域で「民族紛争」の発生を導いた複数の要因を考えるとともに紛争終結後の平和再建の取り組みを紹介する。
第14回冷戦後4『現在のEUが直面する課題』
2010年代以降に「欧州連合」(EU)とヨーロッパ諸国が直面した「ユーロ危機」や、いわゆる「移民」・「難民」の流入への対処、英国のEUからの離脱問題(Brexit)、2022年2月以降のロシアによるウクライナ侵攻といった課題を紹介し、現在のヨーロッパ諸国ないし先進国が抱える課題を理解する。
授業の運営方法・授業は講義形式で行う。パワーポイントや参考図版などを教室スクリーンに映写しつつ、口頭でも説明を進める。板書も適宜行うので、受講生各自でノートを作成すること。授業受講後に受講生は学修ポータルサイトを通じてリアクションペーパーを提出すること。
・授業資料は学修ポータルサイトを通じて事前に(授業前日までに)配布する。授業資料には授業内容スライド、参考図版・参考資料、参考文献などをまとめている。受講生は授業資料を予習したうえで、受講時は手元で参照できるように備えること。
課題試験やレポート等に対するフィードバックの方法・各授業回で提出を求めるリアクションペーパーの内容について、次回の授業の冒頭で一部を紹介する(※紹介時に提出者の名前は公開しない)。また、リアクションペーパーを通じて授業内容に対する疑問点が示された場合にも、次回の授業冒頭で当該部分の再説明や補足説明を行う。
評価の種類 割合(%) 評価方法・評価基準
小論文・レポート 50% 学期末に期末レポートの提出を求める。
授業参加 50% リアクションペーパーの提出程度と記述内容から判定する(※出席点ではないので注意)。
参考文献 ・木畑洋一著『二〇世紀の歴史』岩波書店(岩波新書)、2014年。
・エリック・ホブズボーム著、大井由紀訳『20世紀の歴史 両極端の時代(上・下)』筑摩書房(ちくま学芸文庫)、2018年。
・松尾秀哉著『ヨーロッパ現代史』筑摩書房(ちくま新書)、2019年。
・山本健著『ヨーロッパ冷戦史』筑摩書房(ちくま新書)、2021年。
(その他、授業資料を通じて適宜紹介する。)
その他、履修生への注意事項 ・参考文献は各回の授業レジュメを通じて紹介する。義務ではないが、できれば各自で目を通すこと。
・他の受講生の迷惑となるので、教室内での私語は厳に慎むこと。場合によっては、教室からの退去を求める。
卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連 カリキュラムマップ【全学共通科目】