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科目名ヨーロッパ現代史
担当者香坂 直樹
開講期2023年度春学期
科目区分週間授業
履修開始年次1年
単位数2単位
授業の方法講義
授業題目20世紀初頭から21世紀前半の現在にかけてヨーロッパ地域が経験した政治や社会、経済の変化を学ぶ
授業の達成目標
19世紀から20世紀前半にかけての西ヨーロッパ諸国は、強大な軍事力や経済力を誇示しつつ、ヨーロッパ以外の世界の各地域の政治や社会、経済、そして文化に対して正負両面の影響を及ぼした。また、20世紀後半のヨーロッパは米ソ対立の影響を受け、東西両陣営への分断も経験した。それらの出来事は、近年のBrexit(英国のEUからの離脱)や2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻、あるいは21世紀前半の国際政治や世界経済全般にも強い影響を及ぼしている。そのため、今の世界と私たちが直面している課題を理解するためにも近現代のヨーロッパの歴史に関する知識を得ることが求められる。

以上の問題関心に基づきつつ、「ヨーロッパ現代史」の授業では、20世紀のヨーロッパで発生した様々な政治的事件や社会・経済の変化とその原因、そして、それらの出来事が現在の世界と私たちの生活に及ぼす影響に関して、他者に説明できるだけの知識を得ることを達成目標とする。
今年度の授業内容・20世紀のヨーロッパは破壊や殺戮の時期(20世紀前半の2回の世界大戦など)と、繁栄や安定の時期(20世紀初めや1960年代など)の両方を体験した。そして、これらの経験の結果、20世紀を通じてヨーロッパと世界の政治や社会、経済は大きく変化した。
・以上の点を踏まえ、この授業では、20世紀初頭から21世紀初めにかけてのヨーロッパを大きく5つの時期に区分し、それぞれの時期に発生した出来事や変化について説明する。また、それらの出来事や変化が、ヨーロッパ以外の各地域に及ぼした影響、あるいは現在の世界に残した影響についても説明する。
・講義では、単にヨーロッパの歴史に関する知識を得るだけではなく、「20世紀」という時代が世界全体に対してどのような影響を及ぼしたかに関しても考えたい。
準備学修 予習・復習等の具体的な内容及びそれに必要な時間について・授業前日までに授業資料を学修ポータルサイトに掲出するので、受講者は各自で授業資料をダウンロードしたうえで資料に目を通し、授業内容に関する疑問点などをあらかじめ整理しておくこと。(予習40分)
・授業後に授業資料および講義ノートを再読して出来事の流れなどを整理すること。また、授業内で登場したが意味が判らない用語などを調べ理解すること。(復習40分)
合計60時間
自習に関する一般的な指示事項・20世紀のヨーロッパに関する予備知識を得るために、下記の参考文献を参考にしつつ、初回の授業までに20世紀のヨーロッパ史ないし世界史に関する書籍を少なくとも1冊は読むこと。参考文献に挙げた以外の書籍を選んでも構わないが、高校の世界史教科書や受験用参考書ではなく、新書以上の書籍を選び、最後まで読み通すこと。
・授業時間内で登場した用語(様々な制度や理念・概念、事件の名称など)で意味が分からない用語があれば、そのままにせず各自で調べること。あるいは、授業前後での教員への質問や、ポータルサイトの「授業Q&A」機能を通じての質問も歓迎する。
・毎回の授業資料の中で授業内容に関連した基本的な文献を紹介するので、授業の復習あるいは課題(期末レポート)作成に向けた準備として各自で目を通すこと。
 第1回イントロダクション『近現代のヨーロッパを学ぶ意味』:最近のヨーロッパや世界で起きた事件を取り上げつつ、21世紀前半の世界に生きる私たちが、20世紀のヨーロッパ(と世界)の経験からどのような点を学べるのかを確認する。
 第2回第一次世界大戦1 『植民地分割と世界戦争の背景』:当時は史上最大規模の「世界戦争」として記憶されることになった第一次世界大戦(WWI)が発生した背景を理解する。また、それと同時に、19世紀末から20世紀初めのヨーロッパと世界各地に存在していた支配/被支配の関係、ないし植民地支配の構造が持つ意味を理解する。
 第3回第一次世界大戦2 『総力戦化が世界に及ぼした影響』:第一次世界大戦(WWI)の長期化と戦域の拡大、そして「総力戦」体制への移行が交戦国の社会と世界各地に及ぼした根本的な変化と影響を把握する。また、1918年秋のWWIの休戦協定成立前後にヨーロッパ内外で起きた政治的変動と社会の状況を理解する。
 第4回両大戦間期1 『「パリ講和会議」と「ヴェルサイユ体制」』:第一次世界大戦(WWI)の休戦「後」にもヨーロッパが様々な課題に直面していたことを理解する。それを踏まえ、パリ講和会議を経て戦後のヨーロッパ諸国の間で社会と政治の再建に向けた取り組みが進み、新たな国際関係が成立したことを理解する。
 第5回両大戦間期2 『1920年代後半の相対的安定へ』:第4回授業で提示した第一次世界大戦(WWI)後のヨーロッパと世界の戦後秩序の再建に向けた動きが1920年代半ばに一定の成果を得て、ヨーロッパに安定が訪れたことを理解する。また、初の社会主義国家として登場したソ連が20世紀の世界に与えたインパクトも紹介する。
 第6回両大戦間期3 『1930年代の複合的危機と社会の急進化』:1920年代後半に一応の安定を見たヨーロッパ情勢が、なぜ1930年代に政治・社会・経済の複合的な危機に陥ったのかを把握する。そして、世界恐慌から脱出するために各国でどのような経済政策が試みられ、それらの試みがなぜ破綻したのかを理解する。
 第7回第二次世界大戦1 『人種主義の戦争?』:1939年秋にはヨーロッパ地域でも第二次世界大戦(WWII)が勃発する。第7回授業では、ヨーロッパが再度の世界大戦へと至る経緯とともに、WWIIが様々な側面を備えていた戦争であることを紹介する。そのうえで、人種主義的・人種差別的な暴力の行使というWWIIの最悪の側面を「ホロコースト」の事例を通じて考える。
 第8回第二次世界大戦2 『戦後秩序をめぐる闘い』:第二次世界大戦(WWII)の前線の背後では、大戦後の国際秩序ないし地域秩序の構築をめぐる駆け引きと争いが展開されていたことを把握する。その駆け引きの実例、ならびに各国・各地域に与えた影響を、抵抗運動(レジスタンス)と連合国の諸会談の例を通じて考える。
 第9回冷戦期1 『東西分断と「冷戦」の始まり』:第二次世界大戦(WWII)後にアメリカ合衆国とソ連とpの間での「東西冷戦」が始まった原因、ならびにヨーロッパが二つの陣営へと分断されるに至る状況、そしてソ連の影響下で共産党政権が樹立された東欧諸国においてソ連をモデルとした社会主義社会が建設される過程を理解する。
 第10回冷戦期2 『冷戦の世界化と高度経済成長』:核兵器の開発競争など米ソ間での東西冷戦がWWII後の世界に及ぼした影響を考える。また、1960年代の西欧の資本主義諸国が経験した「高度経済成長」と、一方での東欧の社会主義諸国における「上からの改革」の試みと挫折、そして西欧と東欧のそれぞれの社会が体験した社会や政治の急激な変化と現在に及ぼした影響を理解する。
 第11回冷戦期3 『1970年代の世界経済と新自由主義』:1960年代を通じて継続した高度経済成長期が1970年代初めに終焉したことがヨーロッパに与えた影響、そしてそれを受けて1970~80年代に登場した「新自由主義」という政治的・経済的理念が、当時の世界や21世紀初め現在の社会に及ぼす影響を理解する。
 第12回冷戦期4/冷戦後1 『1989年と冷戦の終わり』:授業の前半で1980年代末に東欧の社会主義政権が崩壊し、冷戦期の東西対立も終わる理由とその過程を紹介する。後半ではヨーロッパ地域での「冷戦」が終了した意味と、その後の「冷戦後」と呼ばれる時期の大まかな特質を理解する。
 第13回冷戦後2 『欧州連合(EU)の成立と東方拡大』:第二次世界大戦(WWII)の終結直後に西欧で始まった欧州統合の動きが、21世紀前半現在の「欧州連合」(EU)の成立までに至った背景と経緯、EUの機能が強化される過程、そして1990年代以降の旧社会主義国のEU加盟(東方拡大)が中東欧諸国の民主化に及ぼした意味、およびEUやNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大がその後のヨーロッパ情勢に与えた影響を理解する。
 第14回冷戦後3 『冷戦後のナショナリズムの再燃?』:「冷戦後」の世界、つまり1990年代以降の世界でグローバリゼーションが進展した一方で、世界各地とヨーロッパ諸国でナショナリズムも高揚し、紛争が多発するようになった背景を考える。具体例として、1990年代のユーゴスラヴィア戦争を取り上げ、同地で「民族紛争」の発生を導いた複数の要因と、紛争後の平和再建の取り組みを紹介する。
 第15回冷戦後4 『現在の欧州連合(EU)が直面する課題』:2010年代以降に「欧州連合」(EU)とヨーロッパ諸国が直面した「ユーロ危機」や、いわゆる「移民」・「難民」の流入への対処、英国のEUからの離脱(Brexit)、ロシアによるウクライナ侵攻といった課題を紹介し、現在のヨーロッパ諸国ないし先進国が抱える課題を理解する。
授業の運営方法・授業は教室内で講義形式で行う。パワーポイントや参考図版などを教室スクリーンに映写しつつ、口頭でも説明を進める。板書も適宜行うので、受講生各自でノートを作成すること。授業受講後に受講生は学修ポータルサイトを通じてリアクションペーパーを提出すること。

・【遠隔授業について】遠隔授業の場合はMicrosoft Teamsを利用したリアルタイム方式で講義を行う。授業参加に必要なチームコードは事前に配布する。詳細は「その他、履修生への注意事項」を参照すること。また、受講後に、受講生は学修ポータルサイトを通じてリアクションペーパーを必ず提出すること。

・対面授業・遠隔授業のいずれでも、授業資料は学修ポータルサイトを通じて事前に配布する。授業資料には授業内容スライド、参考図版・参考資料、参考文献などをまとめている。受講生は授業資料を予習したうえで、受講時は手元で参照できるように備えること。
課題 試験やレポート等に対するフィードバックの方法・各授業回で提出を求めるリアクションペーパーの内容について、次回の授業の冒頭で一部を紹介する(※紹介時に提出者の名前は公開しない)。また、リアクションペーパーにおいて授業内容に対する疑問点が示された場合も、次回の授業冒頭で再説明・補足説明を行う。
評価の種類 割合(%) 評価方法・評価基準
小論文・レポート 50% 学期末に期末レポートの提出を求める。
授業参加 50% リアクションペーパーの提出程度と記述内容から判定する。
参考文献 ・木畑洋一著『二〇世紀の歴史』岩波書店(岩波新書)、2014年。
・エリック・ホブズボーム著、大井由紀訳『20世紀の歴史 両極端の時代(上・下)』筑摩書房(ちくま学芸文庫)、2018年。
・松尾秀哉著『ヨーロッパ現代史』筑摩書房(ちくま新書)、2019年。
・山本健著『ヨーロッパ冷戦史』筑摩書房(ちくま新書)、2021年。
(その他、授業資料を通じて適宜紹介する。)
その他、履修生への注意事項 ・参考文献は各回の授業レジュメを通じて紹介する。各自で目を通すこと。
・他の受講生の迷惑となるので教室内での私語は厳に慎むこと。

《遠隔授業の実施方法》
・遠隔授業はMicrosoft Teamsを利用したリアルタイム方式で実施する。遠隔授業を実施する場合、事前にMS Teamsのチームコードを連絡するので、事前に「ヨーロッパ現代史」のチームに参加すること。遠隔授業の当日は各自でMS Teamsにアクセスし、授業に参加すること。
・分散登校時の遠隔授業は、教場内での授業をリアルタイムで配信する形式となる。
(※なお授業後の復習用に授業動画をアップロードする。)

《遠隔授業での出欠確認方法》
・遠隔授業時は学修ポータルサイトを通じたリアクションペーパーの提出をもって授業出席とみなす。
(※一定の猶予を持って提出期間を設定する)
卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連 カリキュラムマップ【全学共通科目】