科目名 | 文芸理論 | |
担当者 | 神田 浩一 | |
開講期 | 2024年度春学期 | |
科目区分 | 週間授業 | |
履修開始年次 | 1年 | |
単位数 | 2単位 | |
授業の方法 | 講義 | |
授業題目 | 「目からウロコ!」の読み方講座 | |
授業の達成目標 | 小中高で出された「読書感想文」が好きだった人は少ないと思います。 そもそも課題として出される本はつまらないし、文章を書くのが面倒くさいし、なんか感動したって書かないといけないし。でも本を読むのはとてもわくわくする経験であるはずなのです。そうでなければ、映画やTVやゲームなどの娯楽に押されてとっくの昔に本を読む人がいなくなってもおかしくないはずです。でも今でも本を読む人は意外と大勢います。 この講義では、みなさんがいろいろな読み方を知り理解することで、本(特に物語)を読むことに楽しさを感じることができるようになって欲しいと思っています。 例えば、白雪姫は仮死状態からどうやって復活したのか知っていますか? 王子様のキス? いやいや、それはディズニーが改変したものです。白雪姫は結婚してどうなると思いますか? 幸せに暮らす、いやいや、フェミニズム的な読み方をすると到底そうとは考えられません。 これらの疑問の解答が知りたければぜひ講義を受けて下さい。 講義を受けて、そうか本(特に物語)にはいろいろな読み方があるんだと驚いてもらい、さらには本を読む楽しみを感じてもらればこんなにうれしいことはありません。世界全体が読み解くことのできる本のようなものです。 したがってこの講義の目標は次のようになります。 ①物語の色々な読み方を学び理解しそれを説明できるようになること. ②世界全体を様々なアプローチから読み解きそれを説明できるようになること. ③物語を読む楽しみを身につけること. |
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今年度の授業内容 | 講義では短くすぐ読めて準備がしやすく、かつ説明がしやすいという理由で、最初は『グリム童話』を取り上げます。 今まで小中高で(無意識に)学んだ読み方(登場人物に感情移入する読み方と登場人物を道徳的に評価する読み方)とは全然違った読み方があることを〈実感〉してもらいます。大いに目からウロコを落として下さい。あるいは顔を真っ赤にしてそんな読み方は間違っていると反論して下さい。それこそが読書の喜びですから。 『グリム童話』で物語の読み方をパワーアップしたらさらにいくつかの日本の短編小説を題材にして学んだ読み方を適用しながら解釈していきましょう。 *物語を解釈するときのアプローチの中には精神分析のように「性的な解釈」をするものもあります。またみなさんが想像する以上に童話には暴力的な話や性的な話、あるいは総解釈できる話がたくさんあります。できるだけ不快にならないように配慮しますが「性的な話」が苦手な人は注意してください。 |
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準備学修予習・復習等の具体的な内容及びそれに必要な時間について | 講義で取り上げる作品はあらかじめ指示しておきます。すぐに読める短い作品なので必ず配信動画を視聴する前に作品を読んで自分なりの解釈を考えてきてください。 配信動画を視聴する前に、ポータルの「配信動画視聴前アンケート」に答えてください。(それから配信動画を視聴してください。配信動画を視聴したら「配信動画視聴後アンケート」に答えてください。) 講義で取り扱う問題の性質上、具体的な予習復習の時間は指定しませんが(大事なのは中身であって時間ではありません)、自分が納得できるまで物語の解釈を考えてください。 |
合計60時間 |
自習に関する一般的な指示事項 | 冒頭でも書いているように、世界全体が一冊の本のようなものです。その「世界=本」を講義で学んだ解釈の方法で読み解くとどうなるか考えてみてください。あるいは今まで読んできた物語に対して講義で学んだ解釈の方法で読み解くとどうなるのか、考えてください。世界のあらゆるものを解釈していくことがこの講義で学んだことの応用となり、自習となります。 また講義でさまざまな参考文献について言及します。それらの参考文献をできる限り読んでください。 |
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第1回 | 第01回 「白雪姫」は結婚後どうなるか? (ジェンダー論) 白雪姫は結婚したあと、どうなると思いますか? ディズニー映画の結末から、二人は幸せに暮らすと答える人が多いでしょう。でも少し待ってください。物語の始まりと終わり、そして王子様と白雪姫の出会いの状況を考えると話はそう簡単ではないはずです。 最初の授業ではフェミニズムの立場からグリム童話の「白雪姫」を読むとどのように解釈できるのを学んでいきましょう。 |
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第2回 | 第02回 でもシンデレラは強く生きていく (社会学・歴史学) 第1回目の講義でジェンダー的な立場から「白雪姫」は女性に呪いをかけるおぞましい物語として解釈されました。「シンデレラ」も家父長的な社会(男性中心の社会)の中で女性としての価値を高め、じっと耐えていると王子様によって救済される物語としてジェンダー論者によって批判されるかもしれません。しかし実際の物語を丁寧に読み解くと話はそれほど簡単ではないことがわかるはずです。 実際に『グリム童話』版の「シンデレラ」のを読んでみまししょう。 |
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第3回 | 第03回 「シンデレラ」の話のもとは? (生成論) ドイツの『グリム童話』の「シンデレラ」はフランス人シャルルペローの『童話集」の「サンドリオン」がもとになっています。その「サンドリオン」はイタリア人ジャンバッティスタ・バジーレの『ペンタメローネ』の「チェネレントラ」に由来します。設定だけを考えると日本の『落窪物語」も似ていますよね。これはどこまで遡るでしょうか? 文芸理論(文学理論)の中には物語がどのように生まれるのかという生成論というアプローチがあります。今回はそれを紹介します。 |
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第4回 | 第04回 赤ずきんのずきんはなぜ赤いのか? (精神分析) 赤ずきんのずきんはなぜ黒や白やピンクではなくて赤なのでしょうか? フロムという精神分析家は生理の血を象徴していると述べています。ベッテルハイムという精神分析家は思春期の娘の荒々しい性を象徴していると述べています。みなさんは彼らの解釈に納得できるでしょうか? 「精神分析」という19世紀にフロイトが始めた思想があります。まずは、その思想の紹介をして、精神分析的なアプローチによる文学解釈を紹介します。 |
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第5回 | 第05回 誰が誰と結婚できるのか? 鶴の恩返しと蛙の王子様 (比較文学) あなたは蛙と結婚できますか? ユング派の精神分析学者の河合隼雄は西洋と日本の童話を比較して次のようなことを言っています。西洋の童話では、動物と人間は絶対に結婚できないのに対して(実際に結婚するのは人間に戻ってから)、日本の民話では動物との結婚はいともたやすくなされる。こうして異なる文化同士の比較をするとどのようなことが見えてくるか考えていきます。 |
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第6回 | 第06回 次はこうなるよね? 物語のパターンに注目! (物語の形態学) 物語を読んでみて話にはいくつかのパターンがあると思った人はいませんでしたか? 物語の内容ではなく形式に注目して物語のパターンを分析したロシアの民話学者プロップという人がいます。彼の昔話研究を紹介して、物語のパターンについて考えましょう。 |
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第7回 | 第07回 何が出るかは秘密です 今回は息抜きの回です、何をするかは当日まで秘密です。 |
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第8回 | 第08回 ドイツはひとつ! グリム兄弟の悲願 (人と作品) 『グリム童話』を出版したグリム兄弟はどんな人物であり、いったどのような目的で『グリム童話』を作ろうと思ったのでしょうか。? 物語を解釈するときによく作者の意図は何かを考えますね。そのアプローチを個々の作品ではなくグリムの童話集にあてはめてみていきます。また彼らの生きた時代の状況も見ていきます。 |
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第9回 | 第09回 「おすすさん?」「切り捨てられる白雪姫の母」 グリム童話の受容 (受容論) 文芸理論の中に作品の研究ではなく、その作品がどのように読まれていったのかを調べるアプローチがあります。 『グリム童話』は同時代ドイツではどのように読まれていたのでしょうか? 「ベストセラーだった? 売れていなかった? 日本にはいつごろ紹介され、どのように読まれていたのか?」などみていきます。 |
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第10回 | 第10回 パセリからサラダ菜へ 「ラプンツェル」を解釈する(総合) 今まで学んださまざまな物語の解釈の仕方をおさらいしたあとで、それらを組み合わせることでグリム童話の「ラプンツェル」を解釈していきましょう。 |
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第11回 | 第11回 愛しても愛しても結局好きなのは自分だけなの?—川端康成「心中」「火を見る彼女」を読む— ここからは『グリム童話』の解釈で培った知識を応用して日本文学の短編を解釈していきます。まずは川端の作品を虚心に読んでみて文学作品の持つ破壊力に触れてみましょう。次に川端の生涯を調べて彼が何故にあのような小説を書くようになったかを考えてみます(「人と作品」のアプローチ)。最後にラカン(フランスの偉い精神分析家です)的な精神分析の観点から川端の表現したかったのは求めていたのは女性の〈享楽〉だったのではという話をします。 |
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第12回 | 第12回 いくつにもしかけられた〈わな〉—宮沢賢治「茨海小学校」を読む— 物語を〈読む〉という行為はいったいどのような行為なのでしょうか? どこに連れて行かれるのか分からないまま、〈わな〉にはめられてあちこちにひきづりまわされて、迷惑としか言えないのですが、それが楽しい。不思議です。でもそれこそが〈読書という行為〉だとしたら? 今回は宮沢賢治の「茨海小学校」という謎めいた童話を読んでわたしたちが〈読書という行為〉とは何かということについて考えていきましょう。 |
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第13回 | 第13回 —100年待ちました。死んだ女に会う方法 —夏目漱石『夢十夜』「第一夜」を読む— 最後は夢を物語にした夏目漱石の『夢十夜』を取り上げます。今回はとにかく丁寧に一文ずつ読んでいき、小説に出てくるそれぞれのものが何を象徴しているのかを考えていきましょう(小説に出てくるものにはすべて意味があります!)。 その後で代表的な解釈を紹介していきます。 最後に自分なりの解釈を考えてみてください。 |
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第14回 | 第14回 結局、人は物語をどのように読んだら良いのか? またみんなはどのように読んだのか? 今まで学んださまざまな物語の解釈の仕方をおさらいしたあとで、結局、物語をどのように読んだら良いのか、ということについて考えていきます。 結論としては、好きに読めば良いのです。さらにこの講義で学んだ物語の読み方を用いて世界を読み解く方法についても考えていきます。 またみなさんの書いたレポートや作品を紹介して、みなさんが物語をどのように読んで作品を作っていったのかを紹介していきます。 |
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授業の運営方法 | 授業は〈オンデマンド動画配信〉になります。 大学の授業方針により、大人数の講義の中には密を避けるためにオンライン授業になるものもあります。 この〈文芸理論〉の授業はオンデマンド動画配信になります。 具体的にはPear DeckというGoogleスライドのアドオンを用います。Googleスライドにリンクがはっている動画を参照しながら、Pear Deckの質問に答えていくという形を取ります。 ただ単に漫然と配信動画を視聴するのではなく、Googleスライドの質問に対して考え答えていき、その直後に自分の回答と配信動画による解説を比較参照するという形を取ることで、受け身になりがちな配信動画の視聴による授業をできるだけ、双方向性にあるものにしたいと思っています。 具体的には次のようになります。 1.毎週金曜日の午前10時30分にPear Deckに入るURLとコードをポータルにアップします。 2.次の週の火曜日の23時59分までにPear Deckにリンクのはっている動画を視聴してPear Deckの質問に答えてください。 基本は以上です。Pear Deckの質問に答えたことで授業に参加したと判定します(Pear Deckの最後の質問には学籍番号と名前を書いてくださいね)。 注意! Pear Deckに入るために「Gmailのアカウント」を作成してください(すでにGmailのアカウントを持っている人はそれを用いてください)。 |
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課題試験やレポート等に対するフィードバックの方法 | 最後の授業でみなさんのレポート=作品の中から優れた作品をいくつかを紹介しつつ講評をします。 Pear Deckの最後の質問になる〈授業全体へのコメント〉に関しては、時間の許す限り講師がコメントを加えます(時間が取れないときにはご容赦を!)。そしてそれをPDFのファイルにして授業資料のコーナーに投稿します。講師の意見だけでなく他の学生がどのように考えたのかは皆さんにとって大いに参考になると思います。 学生のコメントの代表的なものや興味深いものは次回の配信動画の冒頭で講師がコメントを加えつつ紹介します。 |
評価の種類 | 割合(%) | 評価方法・評価基準 |
定期試験 | 0% | 講義の性質上、テストは行いません。 |
小論文・レポート | 80% | レポート=作品を課します。具体的なテーマ・形式・字数については講義中に指示します。 |
授業参加 | 20% | 毎回の授業後に提出する「配信動画視聴後のアンケート」に記入するコメントも評価の対象にします。 |
その他 | 0% |
テキスト | 教科書は特にありません。毎回、講義のレジュメと資料をポータルの資料管理のところにアップします。 |
参考文献 | 『初版グリム童話集(1)-(5) 』(白水uブックス) 鈴木晶『グリム童話』(講談社現代新書) その他、非常に多くの参考文献があります。講義の際に紹介します。 |
その他、履修生への注意事項 | シラバスはあくまでも予定であって、講師の研究の進度、学生の理解や興味などにしたがって適宜変更されることがあります。ご了承ください。 配信動画は、できれば友人と一緒に聞いて講師の言うことに〈突っ込み〉を入れたり友だちと議論したりしながら視聴すると楽しめると思います(勉強は楽しくするべきです)。 配信動画を視聴して、皆さんは疑問に思ったり、異論を抱いたり、共感を表明したくなると思います。その場合にはポータルのQ&Aに遠慮なく質問したりコメントを残してください。すぐにというわけにいきませんが、24時間以内に返事をします。 〈オンデマンド動画配信について〉 Googleスライドの拡張機能であるPear Deckで授業を一元化します。 学生のみなさんに前もって準備して欲しいことがあります。 Pear Deckに入るために「Gmailのアカウント」を作成することです。(すでにGmailのアカウントを持っている人はそれを用いてください) 毎回の授業でPear Deckにログインする際はこの作成したGmailのアカウントを用いてください。Gmailのアカウントにログインすることで質問途中で退出しても履歴が残り、続きから進められます。 Pear Deckは記入すると即座に反映されます。送信ボタンのようなものはないので気をつけてください。 また詳しい手順についてはポータルに説明の動画をアップするので授業開始までにそれを視聴してください。 連絡はポータルの掲示登録を用います。たくさんの掲示の中から見落とさないように気をつけてくださいね。 半年間という短い間ですがよろしくお願いします。 |
卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連 | カリキュラムマップ【全学共通科目】 |