科目名 | 文芸理論 | |
担当者 | 神田 浩一 | |
開講期 | 2023年度春学期 | |
科目区分 | 週間授業 | |
履修開始年次 | 1年 | |
単位数 | 2単位 | |
授業の方法 | 講義 | |
授業題目 | 「目からウロコ!」の読み方講座 | |
授業の達成目標 | 小中高で出された「読書感想文」が好きだった人は少ないと思います。 そもそも課題として出される本はつまらないし、文章を書くのが面倒くさいし、なんか感動したって書かないといけないし。 でも本を読むのはとてもわくわくする経験であるはずなのです。そうでなければ、映画やTVやゲームなどの娯楽に押されてとっくの昔に本を読む人がいなくなってもおかしくないはずです。でも今でも本を読む人は意外と大勢います。 この講義では、みなさんがいろいろな読み方を知り理解することで、本(特に物語)を読む楽しみを感じることができるようになって欲しいと思っています。 例えば、白雪姫は仮死状態からどうやって復活したのか知っていますか? 王子様のキス? いやいや、それはディズニーが改変したものです。白雪姫は結婚してどうなると思いますか? 幸せに暮らす、いやいや、フェミニズム的な読み方をすると到底そうとは考えられません。 これらの疑問の解答が知りたければぜひ講義を受けて下さい。 講義を受けて、そうか本(特に物語)にはいろいろな読み方があるんだと驚いてもらい、さらには本を読む楽しみを感じてもらればこんなにうれしいことはありません。世界全体が読み解くことのできる本のようなものです。 したがってこの講義の目標は次のようになります。 ①物語の色々な読み方を学び理解すること ②世界全体を様々なアプローチから読み解くことができるようになること ③物語を読む楽しみを身につける |
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今年度の授業内容 | 講義では短いのですぐ読めて準備がしやすく説明がしやすいという理由で、最初は『グリム童話』を取り上げます。 今まで小中高で(無意識に)学んだ読み方(登場人物に感情移入する読み方と登場人物を道徳的に裁量する読み方)とは全然違った読み方があることを〈実感〉してもらいます。大いに目からウロコを落として下さい。あるいは顔を真っ赤にしてそんな読み方は間違っていると反論して下さい。それこそが読書の喜びですから。 『グリム童話』で読み方をパワーアップしたらさらにいくつかの日本の短編小説に学んだ読み方を適用しながら読んでみましょう。 |
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準備学修 予習・復習等の具体的な内容及びそれに必要な時間について | 講義で取り上げる作品はあらかじめ指示しておきます。必ず作品を読んできて自分なりの解釈を考えてきてください。 配信動画はPear Deckと連動されています。ただ動画を視聴するのではなく、Pear Deckにある質問についてじっくりと考えて自分の考えをまとめてください。 講義で取り扱う問題の性質上、具体的な予習復習の時間は指定しませんが(大事なのは中身であって時間ではありません)、自分が納得できるまでひたすらずっとPearDeckの質問とともに物語の解釈を考えてください。 |
合計60時間 |
自習に関する一般的な指示事項 | 冒頭でも書いているように、世界全体が一冊の本のようなものです。その「世界=本」を講義で学んだ解釈の方法で読み解くとどうなるか考えてみてください。あるいは今まで読んできた物語に対して講義で学んだ解釈の方法で読み解くとどうなるのか、考えてください。世界のあらゆるものを解釈していくことがこの講義で学んだことの応用となり、自習となります。また講義でさまざまな参考文献について言及します。それらの文献をできる限り読んでください。 | |
第1回 | 第1回 「白雪姫」は結婚後どうなるか? (ジェンダー論) 白雪姫は結婚したあと、どうなると思いますか? ディズニー映画の結末から、二人は幸せに暮らすと答える人が多いでしょう。でも少し待ってください。物語の始まりと終わり、そして王子様と白雪姫の出会いの状況を考えると話はそう簡単ではないはずです。 最初の授業ではフェミニズムの立場からグリム童話の「白雪姫」を読むとどのように解釈できるのを学んでいきます。 |
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第2回 | 第2回 でもシンデレラは強く生きていく (社会学・歴史学) 第1回目の講義でジェンダー的な立場から「白雪姫」は女性に呪いをかけるおぞましい物語として解釈されました。「シンデレラ」も家父長的な社会の中で女性としての価値を高め、じっと耐えていると王子様によって救済される物語としてジェンダー論者によって批判されるかもしれません。しかし実際の物語を丁寧に読み解くと話はそれほど簡単ではないことがわかるはずです。 実際に『グリム童話』版の「シンデレラ」のを読んでみましょう。知っている話と違いますね。シンデレラは知恵もあり驚異的な身体能力をもっていて、とてもたくましいのです。いつの時代もどんな境遇でも強くしたたかに生きていく女性はいるのです。ここでは物語をその時代の社会状況・習慣・風俗と照らし合わせて丁寧に読み解く方法について学びましょう。 |
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第3回 | 第3回 「シンデレラ」の話のもとは? (生成論) ドイツの『グリム童話』の「シンデレラ」はフランス人シャルルペローの『童話集」の「サンドリオン」がもとになっています。その「サンドリオン」はイタリア人ジャンバッティスタ・バジーレの『ペンタメローネ』の「チェネレントラ」に由来します。設定だけを考えると日本の『落窪物語」も似ていますよね。これはどこまで遡るでしょうか? 文芸理論(文学理論)の中には物語がどのように生まれるのかという生成論というアプローチがあります(これには一つの物語がどのように生まれて話が変わっていったのかというアプローチと物語の元ネタをずっと遡るアプローチがあります)。 今回はこのアプローチを「シンデレラ」を題材にして実践してみましょう。 |
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第4回 | 第4回 赤ずきんのずきんはなぜ赤いのか? (精神分析) 赤ずきんのずきんはなぜ黒や白やピンクではなくて赤なのでしょうか? フロムという精神分析家は生理の血を象徴していると述べています。ベッテルハイムという精神分析家は思春期の娘の荒々しい性を象徴していると述べています。みなさんは彼らの解釈に納得できるでしょうか? 「精神分析」という19世紀にフロイトが始めた思想があります。まずは、その思想の紹介をして、精神分析的なアプローチによる文学解釈を紹介します。 |
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第5回 | 第5回 誰が誰と結婚できるのか? 鶴の恩返しと蛙の王子様 (比較文学) あなたは蛙と結婚できますか? ユング派の精神分析学者の河合隼雄は西洋と日本の童話を比較して次のようなことを言っています。西洋の童話では、動物と人間は絶対に結婚できないのに対して(実際に結婚するのは人間に戻ってから)、日本の民話では動物との結婚はいともたやすくなされる。こうして異なる文化同士の比較をするとどのようなことが見えてくるか考えていきます。 |
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第6回 | 第 6回 次はこうなるよね? 物語のパターンに注目! (物語の形態学) 物語を読んでみて話にいくつかのパターンがあると思った人はいませんでしたか? 物語の内容ではなく形式に注目して物語のパターンを分析したロシアの民話学者プロップという人がいます。彼の昔話研究を紹介して、物語のパターンについて考えましょう。 |
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第7回 | 第7回 何が出るかは秘密です 今回は息抜きの回です、何をするかは当日まで秘密です。 |
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第8回 | 第 8回 先輩たちからの贈り物 今までの先輩たちの提出したレポート=作品を紹介して、レポート=作品の書き方について学んでいきます。 |
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第9回 | 第9回 ドイツはひとつ! グリム兄弟の悲願 (人と作品) 『グリム童話』を出版したグリム兄弟はどんな人物であり、いったどのような目的で『グリム童話』を作ろうと思ったのでしょうか。? 物語を解釈するときによく作者の意図は何かを考えますね。そのアプローチを個々の作品ではなく作品集にあてはめてみていきます。また彼らの生きた時代の状況も見ていきます。 |
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第10回 | 第 10回 「おすすさん?」「切り捨てられる白雪姫の母」 グリム童話の受容 (受容論) 文芸理論の中に作品の研究ではなく、その作品がどのように読まれていったのかを調べるアプローチがあります。 『グリム童話』は同時代ドイツではどのように読まれていたのでしょうか? ベストセラーだった?売れていなかった? 日本にはいつごろ紹介され、どのように読まれていたのか? などみていきます。 |
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第11回 | 第11回 パセリからサラダ菜へ 「ラプンツェル」を解釈する(総合) 今まで学んださまざまな物語の解釈の仕方をおさらいしたあとで、それらを組み合わせることで「ラプンツェル」を解釈していきましょう。 |
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第12回 | 第12回 語っているのは誰か?—芥川龍之介「藪の中」を読む— ここからは『グリム童話』の解釈で培った知識を応用して日本文学の短編を解釈していきます。まずは芥川龍之介の「藪の中」を読んで、物語を語っているのは誰かという語り手の問題について考えていきます。 |
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第13回 | 第13回 わたしたちは自分が何を欲しているのか知らない—宮沢賢治「貝の火」を読む— いまあなたの欲しいものはなんですか? そしてそれはなぜですか? 今回は宮沢賢治の「貝の火」という謎めいた童話を読んでわたしたちが本当に欲しているものは何かということについて考えていきましょう。そして幸せになるにはどうすれば良いか考えてきましょう。 |
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第14回 | 第14回 愛しても愛しても結局好きなのは自分だけなの?—川端康成「心中」「火を見る彼女」を読む— まずは川端の作品を虚心に読んでみて文学作品の持つ破壊力に触れてみましょう。次に川端の生涯を調べて彼が何故にあのような小説を書くようになったかを考えてみます(「人と作品」のアプローチ)。最後にラカン(フランスの偉い精神分析家です)的な精神分析の観点から川端の求めていたのは女性の〈享楽〉だったのではという話をします。 |
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第15回 | 第15回 結局、物語をどのように読んだら良いのか? またみんなはどのように読んだのか? 今まで学んださまざまな物語の解釈の仕方をおさらいしたあとで、結局、物語をどのように読んだら良いのか、ということについて考えていきます。結論としては、好きに読めば良いのです。さらにこの講義で学んだ物語の読み方を用いて世界を読み解く方法についても考えていきます。 またみなさんの書いたレポートや作品を紹介して、みなさんが物語をどのように読んだのかを紹介していきます。 |
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授業の運営方法 | 授業は〈オンデマンド動画配信〉になります。 大学の授業方針の変更により、密を避けるために大人数の講義は原則としてオンライン授業になりました。 この〈文芸理論〉の授業もオンデマンド動画配信になります。 具体的にはPear DeckというGoogleスライドのアドオンを用います。Googleスライドにリンクがはっている動画を参照しながら、Pear Deckの質問に答えていくという形を取ります。 ただ単に配信動画を視聴するのではなく、Googleスライドの質問に対して考えてそれに答えていき、その際に配信動画を参照するという形を取ることで、受け身になりがちな配信動画の視聴による授業をできるだけ、双方向性にあるものにしたいと思っています。 具体的には次のようになります。 1.毎週金曜日の午前10時半にPear Deckに入るURLとコードをポータルにアップします。 2.次の週の水曜日の23時59分までにPear Deckにリンクのはっている動画を視聴してPear Deckの質問に答えてください。 基本は以上です。Pear Deckの質問に答えたことで授業に参加したと判定します。 注意! PearDeckに入るために「Gmailのアカウント」を作成してください(すでにGmailのアカウントを持っている人はそれを用いてください)。 |
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課題 試験やレポート等に対するフィードバックの方法 | 最後の授業でみなさんのレポート=作品の中からいくつかを紹介しつつ講評をします。 |
評価の種類 | 割合(%) | 評価方法・評価基準 |
定期試験 | 0% | 講義の性質上、テストは行いません。 |
小論文・レポート | 80% | レポート=作品を課します。具体的なテーマ・形式・字数については講義中に指示します。 |
授業参加 | 20% | 毎回の授業後に提出するコメントシートも評価の対象にします。 |
その他 | 0% |
テキスト | 教科書は特にありません。毎回、講義のレジュメと資料をポータルにアップします。 |
参考文献 | 『初版グリム童話集(1)-(5) 』(白水uブックス) 鈴木晶『グリム童話』(講談社現代新書) その他、非常に多くの文献があります。講義の際に紹介します。 |
その他、履修生への注意事項 | シラバスはあくまでも予定であって、講師の研究の進度、学生の理解や興味などにしたがって適宜変更されることがあります。ご了承ください。 〈オンデマンド動画配信について〉 Googleスライドの拡張機能であるPear Deckで授業を一元化します。 学生のみなさんに前もって準備して欲しいことがあります。 一番大事なことはPear Deckに入るために「Gmailのアカウント」を作成することです。 毎回の授業でPear Deckに入る際はこの作成したGmailのアカウントを用いてください。 また詳しい手順についてはポータルに説明の動画をアップするのでそれを授業開始までに視聴しておいてください。 (ポータルにPear Deckに入るためにURLが掲示されます。そこからPCやタブレットでPearDeckに入ればあとは誘導に従うだけで簡単です。) |
卒業認定・学位授与の方針と当該授業科目の関連 | カリキュラムマップ【全学共通科目】 |