| 辨 |
和名のヨモギは、広義にはヨモギ属 Artemisia(蒿屬)の総称、狭義には本種を指す。 |
| 漢名の蒿(コウ,hao)は、広義にはヨモギ属 Artemisia(蒿屬)の総称、就中種名を蒿というものはカワラニンジン A. apiacea。 |
ヨモギ属 Artemisia(蒿屬)の植物には、次のようなものがある(学名順)。
ニガヨモギ A. absinthus (苦艾・洋艾)
A. adamsii (阿氏蒿)
A. anethoides (蒔蘿蒿)
クソニンジン A. annua (黄花蒿・靑蒿・臭蒿・香蒿・苦蒿)『中国雑草原色図鑑』230
リトウザンヨモギ A. anomala (奇蒿・南劉奇奴)
『中国本草図録』Ⅱ/0866・『中薬志Ⅲ』図60。劉奇奴を参照。
カワラニンジン A. apiacea (蒿・靑蒿・香蒿) 『中国本草図録』Ⅴ/2349
サマニヨモギ A. arctica
シロサマニヨモギ var. villosa
エゾハハコヨモギ ssp sachalinensis
チョウセンヨモギ A. argyi (艾・艾蒿・家艾)
『中国本草図録』Ⅰ/0368・『中国雑草原色図鑑』231
A. aystriaca (銀蒿)
A. blepharalepis(白莎蒿)
A. brachyloba(山蒿・岩蒿)
カワラヨモギ A. capillaris (茵蔯蒿・白蒿) 『中国本草図録』Ⅹ/4885
シナヨモギ A. cina(蛔蒿・山道年蒿・山道年草)
『中国本草図録』Ⅱ/0867、『中草薬現代研究』Ⅱp.111
A. commutata (變蒿)
オニオトコヨモギ A. congesta
A. desertorum (莎蒿)
A. deversa (側蒿)
エストラゴン(タラゴン) A. dracunculus (狹葉靑蒿)
中央アジア・シベリアに分布。エスカルゴ料理に用いる
ケショウヨモギ A. dubia(A.lavandulaefolia;A.umbrosa;A.codonocephala;野艾蒿)
var. longeracemulosa (黑蒿・艾蒿)
A. eriopoda (南牡蒿)『中国雑草原色図鑑』231
ヒメヨモギ A. feddei (矮蒿)『中薬志Ⅲ』p.283
A. finita (東北蛔蒿) 『中国本草図録』Ⅹ/4886
A. frigida (冷蒿・小白蒿・白蒿・剛蒿・茵蔯蒿)『中国雑草原色図鑑』231
フクドヨモギ(ハマヨモギ) A. fukudo
ワタヨモギ A. gilvescens
ハハコヨモギ A. glomerata
エゾハハコヨモギ var. pedunculosa(A. trifurcata var. pedunculosa)
イワヨモギ A. gmelinii (白蓮蒿・蚊煙草)
『中国本草図録』Ⅳ/1881・『中国雑草原色図鑑』230
A. halodendron(鹽蒿・差把嘎蒿・沙漠嘎) 『中国本草図録』Ⅵ/2872
A. hedinii (臭蒿) 『中国本草図録』Ⅷ/3855
ホクチヨモギ A. igniaria (歧莖蒿)
ニシヨモギ(ヨモギ) A. indica(A. asiatica)
エトロフヨモギ A. insularis
A. integrifolia (柳葉蒿) 『中国本草図録』Ⅸ/4356
イワヨモギ A. iwayomogi
オトコヨモギ A. japonica (牡蒿)
イヌヨモギ A. keiskeana (菴■{草冠に閭}) 『中国本草図録』Ⅶ/3364
キタダケヨモギ A. kitadakensis
ヒロハウラジロヨモギ(オオワタヨモギ) A. koizumii
クラムヨモギ A. kurramensis
シコタンヨモギ(キクヨモギ) A. laciniata
ヨモギナ A. lactiflora (白苞蒿・甜藥子・鴨脚艾) 『中国本草図録』Ⅱ/0868
A. lagocephala (白山蒿) 『中国本草図録』Ⅸ/4357
ケショウヨモギ A. lavandulaefolia (野艾蒿・細葉艾・蘄艾)
『中薬志Ⅲ』p.283、『中国本草図録』Ⅴ/2350・『中国雑草原色図鑑』232
A. macrocephala (大花蒿)
A. mairei (滇茵蔯)
ミブヨモギ A. maritima
A. mattfeldii (粘毛蒿)
ユキヨモギ A. momiyamae
モウコヨモギ(モウコホソバヨモギ) A. mongolica (蒙古蒿)『中国雑草原色図鑑』232
コバナヨモギ var. vervenacea
ヒトツバヨモギ(ヤナギヨモギ) A. monophylla
オオヨモギ(ヤマヨモギ・エゾヨモギ) A. montana
A. moocroftiana (小球花蒿)
A. ordosica (黑莎蒿・油蒿)『中国雑草原色図鑑』233
A. palustris (黑蒿)『中国雑草原色図鑑』235
ミヤマオトコヨモギ A. pedunculosa
ヨモギ(カズザキヨモギ) A. princeps (魁蒿・黄花艾)
A. roxburghiana (灰苞蒿)
ヤブヨモギ A. rubripes (紅足蒿)
A. rupestris (新疆一支蒿)
A. sacrorum (鐵杆蒿・萬年蒿・茵蔯蒿・白蓮蒿) 『中国本草図録』Ⅵ/2873
var. incana(灰蓮蒿) 『中国本草図録』Ⅸ/4355
アサギリソウ A. schmidtiana (錢葉艾)
ハマヨモギ A. scoparia (A.capillaris var.scoparia;猪毛蒿・濱蒿・臭蒿・
東北茵蔯・黄花蒿・絨蒿) 『中国本草図録』Ⅵ/2874・『中国雑草原色図鑑』233
セイタカヨモギ(タカヨモギ) A. selengensis (蔞蒿・紅陳艾) 『中国本草図録』Ⅵ/2875
ハイイロヨモギ A. sieversiana (白蒿・大白蒿・大籽蒿・臭蒿子)
『中国本草図録』Ⅵ/2876・『中国雑草原色図鑑』234
タカネヨモギ A. sinanensis
A. shaerocephala (白沙蒿・籽蒿)『中国雑草原色図鑑』235
シロヨモギ A. stelleriana (銀葉艾)
ヒロハヤマヨモギ(ヒロハノヒトツバヨモギ) A. stolonifera (寛葉山蒿)
A. stracheyi (凍原白蒿)
A. stricta (短葉蒿)
A. subdigitata (牛尾蒿・茶絨) 『中国本草図録』Ⅶ/3366
A. sylvatica (陰地蒿)
A. tanacetifolia (細裂葉蒿)
A. tangutica (甘靑蒿)
var. tomentosa(唐古特靑蒿) 『中国本草図録』Ⅷ/3856
A. tournefortiana (濕地蒿)
エゾハハコヨモギ A. trifurcata var. pedunculosa
(A. glomerata var. pedunculosa)
チシマヨモギ A. unalaskensis(A. nipponica;A.opulenta)
A. vestita (毛蓮蒿・萬年蒿・結血蒿)
A. viridissima (綠蒿)
オウシュウヨモギ A. vulgaris (艾蒿)
var. indica(野艾)『中薬志Ⅲ』p.283 |
| キク科 Compositae(菊科)の植物については、キク科を見よ。 |
| 訓 |
日本では、ヨモギの漢字に蓬を用いるが、誤り。漢名の蓬(ホウ,peng)は、ムカシヨモギ属 Erigeron(飛蓬屬)の植物の総称、就中エゾムカシヨモギ(飛蓬,feipeng)を指す。
同じく艾(ガイ,ai)は、よもぎの仲間でもぐさにするもの、チョウセンヨモギ。
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源順『倭名類聚抄』(ca.934)蓬に、「和名与毛木」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』11(1806)に、「艾 サシモグサ ツクロイグサ ヨモギ モチグサ加州 フツ薩州 ブツ肥前」と。 |
| 説 |
日本(本州・四国・九州)・小笠原・朝鮮に分布。
花期は、9-10月。 |
| 誌 |
漢方で、ヨモギ・チョウセンヨモギ・オオヨモギなどの葉を艾葉(ガイヨウ,aiye)といい、葉の裏の毛でもぐさを作る。 |
中国では、旧暦正月にチョウセンヨモギの若菜を食い、また、五月五日の端午の節句にこれを採って門に懸け、毒気を祓った。その風習は日本にも伝えられている(ただし日本では、チョウセンヨモギの替りにヨモギを用いる)。
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日本では、春先に若菜を摘んで草餅・草団子を作る。
草餅には、平安時代にはハハコグサを用いていたが、室町時代までにヨモギに代った。三条西実隆の日記に、天文2年(1533)3月3日に蓬餅をもらったとある。 |
旧暦五月五日の端午の節句にヨモギを飾る習慣は、奈良・平安時代から行われていた。
『万葉集』に、
・・・ほととぎす きなく五月の あやめぐさ よもぎかづらき・・・
(18/4116,大伴家持)
清少納言『枕草子』第39段には、「節は五月にしく月はなし。菖蒲・蓬などのかをりあひたる、いみじうをかし。云々」とある。 |
『八代集』に、
かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな もゆる思ひを
(藤原実方、『後拾遺集』『百人一首』)
あらをだの 去年(こぞ)の古跡の 古よもぎ いまは春べと ひこばえにけり
(曾根好忠、『新古今集』)
庭のおもに しげるよもぎに ことよせて 心のままに おける露かな
(藤原基俊、『新古今集』)
けふも又 かくや伊吹の さしもぐさ さらば我のみ もえや渡らん
(和泉式部、『新古今集』)
猶たのめ しめぢがはらの させもぐさ わがよの中に あらんかぎりは
(清水観音御歌、『新古今集』)
契りおきし させもが露を 命にて あはれことしの 秋もいぬめり
(藤原基俊(1060-1142)「僧都光覚(基俊の子)、維摩会の講師の請を申しけるを、たびたび漏れにければ、法性寺入道前太政大臣(藤原忠通,1097-1164)に恨み申しけるを、しめぢが原と侍りけれど、又その年も漏れにければ遣はしける」、『千載集』『百人一首』)
西行(1118-1190)『山家集』に、
古郷の よもぎはやどの なになれば あれ行く庭に まづしげるらん
よもぎわけて あれたる庭の 月みれば むかしすみけん 人ぞ恋しき
おと(音)はせで いは(岩)にたばしる あられ(霰)こそ
よもぎのまど(窓)の 友となりけれ
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裏門の寺に逢着す蓬かな (蕪村,1716-1783)
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こんにち、草餅の作り方には 二種類ある。
一は、蒸した糯(もちごめ)とヨモギとを搗き混ぜて、切餅・餡餅にするもの。雛祭の菱餅はこれ。
一は、上糝粉(新粉とも書く。白米粉)を捏ねて蒸籠で蒸し、茹でたヨモギを混ぜて臼で搗くもの。あんころ餅はこれ。 |