| 辨 |
ナツメ属 Zizyphus(棗屬)には、主に熱帯に約90種がある。
ナツメ Z. jujuba(Z.jujuba var.inermis;棗・大棗・紅棗・棗子)
栽培品。果実は大きく、果肉が厚い。
サネブトナツメ var.spinosa(Z.jujuba;酸棗・山酸棗・山棗)
野性品。果実は小さく、核(さね)がおおきい。
インドナツメ Z. mauritiana(滇刺棗・緬棗) 『雲南の植物Ⅲ』180・『中国本草図録』Ⅲ/1265 |
| クロウメモドキ科 RHAMNACEAE(鼠李科)には、クロウメモドキ科を見よ。 |
| 訓 |
和名ナツメは、夏芽の意。夏に入ってから芽を出すことから。
サネブトナツメは、実の種子が大きく、果肉が薄いことから。 |
深江輔仁『本草和名』(ca.918)に、大棗は「和名於保奈都女」、酸棗は「和名須岐奈都女、一名佐祢布止」、生棗は「和名奈末奈都女」、白棘は「和名奈都女乃波利」と。
源順『倭名類聚抄』(ca.934)に、棗は「和名奈豆女」、酸棗は「和名佐禰布止」と。
小野蘭山『本草綱目啓蒙』25(1806)に棗は「ナツメ」と、31に酸棗は「サネブト和名鈔 サネブトナツメ トウザクロ和州 カラナツメ藝州」と。 |
漢名の棗(ソウ,zao)は、朿(シ,ci,とげ・とげで刺す・とげのある木)を重ねたもの。似た字に棘(キョク,ji)がある。
棗と棘は、ともにとげのある木を意味するが、棗はたけの高い木を、棘はたけの低い木を指す。すなわち棗はナツメ、棘はサネブトナツメあるいはいばら(ノイバラなど)を指す。 |
| 学名の属名は、ペルシア語のナツメ zizfun,zizafun(ギリシア語では zizyphon)から。 |
| 説 |
中国原産。
サネブトナツメは、樹高1-3m、長江以北に分布。核果は球形または広卵形、長10-11mm、果肉は薄く、酸味がある。
ナツメは、樹高10m、全国各地で栽培。核果は卵形または長円形、長15-50mm、果肉は甘い。
日本には、古く渡来。 |
| 果実は生食するほか、乾燥・加工して食用にする。 |
| 誌 |
中国では、モモ(桃)・スモモ(李)などとともに最古の果樹。 |
サネブトナツメ(酸棗)の種子を酸棗仁(サンソウジン,suanzaoren)と呼び、ナツメ(棗)の果実を大棗(タイソウ,dazao)と呼び、いずれも薬用にする。『中薬志Ⅱ』pp.28-30,pp.448-449
また、ナツメの根・樹皮も薬用にする。 |
| 『詩経』国風・邶風(はいふう)・凱風(がいふう)に、「凱風 南よりし、彼の棗心(きょくしん,ナツメの芽)を吹く。棗心 夭夭(えうえう)として、母氏劬労(くろう)す」と。 |
『大戴礼』「夏小正」八月に、「棗を剥ぐ。〔剥ぐなる者は、取るなり。〕」と。
『詩経』国風・豳風「七月」に、「八月は棗を剥(う)つ」と。 |
| 『礼記』「内則」に、周代の君主の日常の食物の一として棗を記す。 |
| 賈思勰『斉民要術』(530-550)に、「種棗」が載る。 |
日本では、『万葉集』に、
玉掃(たまばはき) 苅り来(こ)鎌麿 室の樹と 棗が本と かき掃かむため
(16/3830,長忌寸意吉麿「玉掃・鎌・天木香(むろ)・棗を詠む歌」) なし(梨)棗 きみ(黍)に粟(あは)嗣ぎ 延(は)ふ田葛(くず)の
後もあはむと 葵(あふひ)花咲く (16/2834,読人知らず)
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『古今集』に、
あぢきなし なげきなつめそ うき事に あひくる身をば すてぬものから
(藤原兵衛、物名「なし なつめ くるみ」)
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